乳滴/2016年11月1日号
許すな"いいとこ取り"
生乳や均質化処理をされない(ノンホモ)牛乳を一定時間置いておくと、上部にクリーム層が浮いてくる。このクリームだけをすくって食べるように、「いいとこ取り」することをクリームスキミングという。公共性のある事業において、これを許すならば地方など、条件不利な地域における同一に近いユニバーサルサービスは困難になる。そこに行政による役割、配慮が必要になる。
牛乳乳製品は米国等において、国民の生活に必要不可欠であるとして、公共性の高い位置づけがなされていることは、東大の鈴木宣弘教授らによって繰り返し指摘されてきた。我が国でも牛乳乳製品は年間1200万㌧近い需要があり、コメと並ぶ国民の基礎食料の一つである。
今回、規制改革会議(現推進会議)の提言に端を発した論議は、例えば「どうして酪農家の所得の向上につながるのか。何度読んでも全く理解できない」というのが酪農乳業関係者の共通理解である。例えば、「アウトサイダーとして飲用向けで販売し、余った生乳は指定団体経由で販売できるようにしてくれ」とか、まさに「いいとこ取り」の典型であろう。
鈴木教授は技術的支援から始まり、多国籍乳業による将来的な直接契約を視野に入れた動きではないかとも警鐘を鳴らしている。