乳滴/2017年1月1日号
チャレンジの“価値”
類(たぐい)まれな才能に加えて想像を絶する努力の末、栄冠にたどり着くアスリート(スポーツ選手)。その分野で極一握りの人が到達する高みだ。数えきれないほどの敗者が生まれる厳しい世界である。
その過酷な練習は、あるオリンピック出場経験者の女子マラソンランナーが本会の酪農講演会で「大会前には標高2千㍍の高地で1日70㌔走って体を追い込みました」と語ったほどだ。それでも勝利の女神は彼女に微笑まなかった。
ある酪農後継者が「自分はスポーツの世界でトップを目指してきたので、酪農でも同じように極めたい」と抱負を語った。戦後、急速に発展した我が国の酪農は、3世代前後となっている。経営を継ぐと決めた後継者にとって道は多様だ。
設備投資や規模拡大に向かう、経営方針を転換する、とりあえず現状維持、6次化や多角化の新たな方向を目指す等々。中には結果として意に反した者もいるだろう。成功することだけが人生の目的ではないが、時間を忘れるほど夢中になれた経験。
振り返れば、あの時「……していれば」「……してたなら」と苦い思いを抱えている人生の先輩も多いだろう。「人生においてチャレンジした」と信じれる期間があったことは、実にかけがえのないものだと感じる。