乳滴/2017年4月1日号
セーフティネットとは
農水省は3月10日までに今通常国会(第193回・1月20日開会・6月18日閉会)に農政改革8法案を提出した。国会審議を経て今国会での成立を目指している。この中には、酪農乳業界に大きな論議を呼んだ「畜産経営の安定に関する法律」(畜安法)の一部改正のほか、農業災害補償法(農災法)を一部改正する「農業経営収入保険事業」の創設も含まれている。
これまで収入保険制度と呼ばれ、政府が導入準備を進めてきたものである。保険料をはじめ詳細は、今後さらに詰められることになるが、農産物価格下落を含めて農業経営者ごとの収入の減少、具体的には過去5年間の平均収入(基準収入)の9割を下回った際に補てんする考え方だ。
政府は農業経営全体のセーフティネットと呼んでいるが、畜産では、酪農だけが対象だ。なぜなら肉用牛の新マルキン制度のように他の畜種には収入保険制度より内容が優れている制度がすでにあるからだ。
収入保険制度は、例えば乳価や副産物の下落などのように、収入の下落を対象にしており、生産費の上昇には対応できない。つまり最も肝心な所得を補償する保険ではない。この点で同じセーフティネットの言葉でも本会が提言してきたものとは大きく異なっている。