乳滴/2017年6月1日号
畜安法成立後の姿は
今国会で成立見込みの畜安法(畜産経営の安定に関する法律)の国会論戦が5月18日から始まり、26日には衆院で可決した。しかし、学識者を含む多くの酪農乳業関係者は依然として、改革の目的とその影響に対して危惧している。
例えば、畜安法と酪農・乳業の将来を考えるをテーマにした5月20日開催の畜産経済研究会(会長=小林信一日本大学教授)のシンポジウムでも、講師の清水池義治北海道大学専任講師は、示された改革の目的(のようなもの)として、「当初はバター不足への対応だったが、それが生産者の所得向上になった。しかし、改革の中身を実行すれば、どのような理屈で生産者の所得の拡大がなされるか明快な説明がない」と述べた。
同様に鈴木宣弘東大教授は法案に書いてある「生乳需給に国が責任を持つ」「用途別販売計画に基づき監視する」「いいとこ取りの部分委託は認めない」点について、省令や局長通知で定めるとしているが、「実効性が担保できるとは思えない」と懸念している。
清水池氏は「これまで国は指定団体共販の役割を重視し、政策的に別格の扱いをし結集させてきた。そこに競争を入れた結果、想定される産業構造のビジョンをそもそも持っているのか?」との根本の疑問を投げかけている。