乳滴/2019年6月20日号
儲けを失う経験不足
長年の経験や技能から゛職人゛と言われる域の尊敬すべき人達が多くの業種にいる。その卓越した技(わざ)を誰もが共有できるように、いわゆる「見える化」して成功を収めている企業がある。
IT技術の進歩があり、様々な職人技を細分化、数値化し、一定のマニュアル化するものだ。日本酒で言えば杜氏の技術だったりする。パン職人の発酵管理では、長年の経験や勘により製造現場の変化に対応してきた製造技術を数値化。1カ月程度の短期間研修を受けた異業種からの人だけで職人同様の高級食パンができる様子が先日、テレビ放映されていた。
こう述べると全てが数値に置き換えられ、マニュアルに従えば誰もが従事可能になると思いがちである。酪農でも実際にそれでうまくいっている法人経営等がある。
しかし、落とし穴もある。息子夫婦に経営主体を譲ったあるご婦人が「飼料でも何でも最高の品質を求めようとする息子のやり方を見ていると、あれでは儲からないなと、お父さんと話しています」と語った。最新の知識ではかなわないが、経験が足りないから応用に欠けると苦笑いした。
よく言われる様に酪農ほど多様な技術を要求される農業部門はない。積み重ねてきた経験から学ぶことは多い。