乳滴/2019年7月20日号
タイ米報道の記憶
関東地方は6月最終週から7月半ばすぎまでほぼひと月、日差しがなく雨の日が多かった。気温は日中でもせいぜい25度前後までで、朝晩半袖では寒いほど。熱帯夜がないのは助かるが、低温多雨が農作物の生育に影響するのは困る。農水省によればすでにキュウリ、ナスが生育の遅延、出荷量減少で価格が上昇しているという。
26年前、平成5年は冷夏で米が不作となり、タイ産米で不足を補う試みがあった。兼業農家(稲作)の私としては外国産米が珍しく楽しんで食べた、という記憶はある。しかしこのタイ米は当時あまり好意的に受け入れられず、せっかく融通してくれたタイの人たち、タイの農家の皆さんにはとても聞かせられないような厳しい感想を報道で見て、たいへん申し訳ないと思ったのも覚えている。
農業は自然を相手にする仕事だから、気象が順調に推移すれば手間をかけた分収量につながるが、逆の場合いくら手間をかけても作柄にバラつきが生じるし、需給によって市場価格も変動する。ここが歯がゆいところで、冷夏で不作となり流通の都合で小売価格が上がっても、決して農家が儲かるわけではない。今後仮に天候不順が続き不作となった場合でも、消費者には冷静に受け入れてもらいたい。