乳滴/2020年1月20日号
恐い負のスパイラル

Jミルクは今年度の生乳生産を4年ぶりの増産と予測したが、都府県の生産減少は続く。農水省は飲用向け乳価の値上げや副産物価格の高止まり等もあり、統計上、酪農経営は改善していると説明する。しかし、一方で構造的な課題の先送りが手つかずのままだ。
生乳生産減少に歯止めがかからない都府県酪農対策をどうするかは大きな課題。Jミルクは、今年度の北海道の生産割合を約56%と予測。都府県と北海道との格差は年々拡大し続けている。
都府県酪農が縮小し、北海道への依存度が高まることは、生乳の用途別販売に影響を与える。さらに国際交渉合意によるチーズ等の輸入乳製品増加の影響も加わる。結果として北海道内における乳製品工場の経営、在り方が全国の生乳需給調整機能に影響を与えることになる。北海道から都府県への生乳移出の輸送力等の物理的・費用面における課題も大きくなる。
では現状の政策で都府県の酪農の衰退に歯止めをかけることができているのか。都府県の生乳生産や酪農家戸数の減少が続けば集送乳費用の増加に加え、酪農家を支える酪農協・農協組織、酪農ヘルパー等の外部支援組織の維持にも影響を及ぼす。それが酪農経営に影響を与える「負のスパイラル」に陥ってしまってからでは遅い。