乳滴/2021年3月10日号
精液輸送に伝書バト
新型コロナのワクチン接種がやっと始まる。先発のワクチンは超低温冷蔵が流通の前提だったが、一般的な冷蔵庫でも保管できるものが後発で登場との海外報道も。扱い易さはやがて普及の追い風になるか。
長距離流通といえば昔、乳牛精液輸送に伝書バトが検討されたことがある。米国シカゴから飛行機で47時間かけ空輸された精液を、短時間でどう分配するか。その努力がうかがえる記事が本紙昭和25年5月15日付にみえる。羽田から西ヶ原家畜衛生試験場に運ばれ、東京、北海道、千葉、埼玉、長野などへの分配作業が行われた。このうち長野県へは大宮市から伝書バトで運ばれた。「精液を背負った伝書バトは翌朝霞にとざされた碓氷峠を越えてリンゴの花咲く信州へ帰って来た…中略…米国と長野縣を結ぶ画期的精液輸送はかくて成功した」とある。
時代がかった表現が多いが文字通り背負ったわけではなく足に容器をつけたはず。輸送量は2ccとある。戦前から戦後にかけ原稿や写真の長距離高速輸送手段として報道分野での伝書バト活用が確立していた。
ちなみに記事ではこの時輸入された精液は「マスターピース、ダンデイージヨージ、ジヨワージヤツクの3頭」とのこと。単車の活用や冷蔵技術の進歩があり伝書バトの活躍は限定的だった。