全酪新報/2015年12月1日号
「加工原料乳補給金一本化は2017年度以降に」自民・畜酪小委員会―2016年度対策の議論を開始
自民党畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)は11月26日、来年度(2016年度)畜産物価格・関連対策の議論をスタートした。今後、関係団体からの聞き取りと現地視察を行い、年内の決定を目指す。政府・与党はTPP対策として、加工原料乳生産者補給金について生クリーム等向けの追加と単価一本化を決めたが、農水省は「来年度からの実施は困難」と説明した。
お断り=本記事は12月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「政府、TPP対策を決定」―自民・農林の提言とりまめ反映
政府は11月25日、TPP総合対策本部第2回会合を官邸で開き「総合的なTPP関連政策大綱」を決定した。自民党農林水産戦略調査会・農林部会がまとめたTPP対策等を踏まえたもの。
自民党案では、生クリーム等液状乳製品を加工原料乳補給金制度の対象とすることを決定していたが、その時期について、政府大綱では「準備が整い次第、協定発効に先立って実施」とした。
政府大綱では農業対策のほか、中小企業対策、知的財産対策など広範な内容になっている。
「政府のTPP対策、攻めの農業への転換図る」―農水省が団体等に説明
政府は11月25日に「総合的なTPP関連対策大綱」を決定。農水省は27日、農水省講堂に関係団体や都道府県担当者など約300名を集め、農林水産分野の対策の概要について説明会を開いた。畜産・酪農関係の対策では、協定発効に備えた経営安定対策の充実と、畜産クラスター事業の拡充など競争力強化による攻めの農業への転換を図る方針を説明した。
説明会であいさつした森山裕農相は「現場の声にしっかり応える対策大綱をまとめた。補正予算決定後は、私が先頭に立って対策の詳細を丁寧に説明していく。現場の懸念と不安を払しょくし、将来への意欲を後押しするため協力をお願いする」と都道府県や関係団体の協力を呼びかけた。
本川一善事務次官は、TPP対策大綱で掲げた攻めの農林水産業への転換のための体質強化対策(酪農関係では畜産クラスター事業の拡充、草地の大区画化、生乳供給力の向上など)を2015年度補正予算で具体化する見通しを説明。「補正予算が決まれば年内に再度(全国段階の)説明会を開く。年明けには現地説明会も行う」と述べた。
説明会の席上、農水省は、内閣官房が年内に取りまとめる政府統一のTPP経済効果について「物品市場アクセスの合意内容以外にも、サービスや投資分野などの要素を考慮した総合的な分析を進めている」と試算の考え方を説明した。
また、配合飼料価格安定制度の安定運営のための施策、肉用牛・酪農の生産基盤の強化策の更なる検討、収入保険制度の導入に向けた検討など、対策大綱でまとめた検討の継続項目については、来年秋までに具体策を決める方針を示した。
「農水省、入札取引の試行に理解を求める」―来年度から2年間
11月26日の自民党畜産・酪農対策小委員会の会合では野村哲郎参議が、来年度からの生乳取引ルールについて指定団体、乳業メーカー等による検討会の報告書に言及した。来年度から2年間、試行的に行うと結論付けた生乳の入札制度について「乳製品向け生乳で試行的に入札を実施、その結果を踏まえて乳価交渉に今後活かしていくという話のようだが、我々が議論したのは(入札により)需要期のプール乳価をアップできるのではないかということ。乳製品の話をしていたわけではない。党でまとめたものが全く活かされていない」と指摘、政府の説明を求めた。
農水省の大野高志畜産部長は「入札制度は乳製品向けのほか、飲用向けではプレミアム取引で取り入れる。党の提言を受けて議論したが、入札により必ずしも(乳価が)上がる訳ではなく、買い叩かれる状況も考えられると生産者団体側から意見があり、まずは試行的に取り組むことになった」と経過を説明した。
「農林水産大臣賞に長野県(有)エイチ・アイ・エフ・大きなチーズ」―第10回ALLJAPANナチュラルチーズコンテスト
日本のナチュラルチーズの製造技術を競う「第10回オールジャパンナチュラルチーズコンテスト」の表彰式が11月24日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで開かれた。中央酪農会議が隔年で実施している。今年は66者から148点のエントリーがあり、このうち㈲エイチ・アイ・エフ開田高原アイスクリーム工房(長野県木曽町)が出品した「大きなチーズ」が最優秀賞・農林水産大臣賞を受賞した。「大きなチーズ」は白カビの文字どおり大きなブリーチーズだ。
農水省の原田英男顧問から工房を代表して大臣賞を受け取った斉藤信博取締役工場長は表彰式終了後「工房では代表が経営する万谷ファームの生乳を100%使っています。万谷ファームの乳質は県でも高い評価を受けています」と話してくれた。
外観、色調、組織、風味についてそれぞれ採点し、上位20点を優秀賞、さらに上位10点を金賞として選定。最終審査では上位10点の中から農林水産大臣賞、農畜産業振興機構理事長賞、中央酪農会議会長賞、審査員特別賞を決定した。
審査委員長を務めた村山重信氏(チーズオフィス・ムー代表)は「世界のレベルに来ているチーズもある。是非日本ならではの新しい、世界にないチーズに挑戦してほしい」と呼びかけた。
家畜改良事業団牛群検定が40周年で「乳牛パフォーマンスセミナー開く」
家畜改良事業団(信國卓史理事長)は11月19日、東京大学農学部の弥生講堂で、乳用牛群検定40周年乳用牛ベストパフォーマンス実現セミナーを開催した。各地の検定組合担当者、農協の改良担当者、農業改良普及センター、飼料会社の指導担当者など約250名が出席した。
乳用牛ベストパフォーマンス実現会議が今年8月にまとめた「実現マニュアル」の概要紹介のほか牛群検定参加酪農家、組合担当者による優良事例発表、昭和50(1975)年にスタートした現在の牛群検定事業の40周年を記念して優良事例の表彰が行われた。会場ではまた、乳牛改良関連書籍、搾乳機器メーカー、飼料メーカーなどがブースを出展した。
セミナー開催に当たり信國理事長は「経営改善を図ろうとするとき、問題点を把握することが出発点になる。その情報を提供する宝の山が牛群検定であり、乳牛のベストパフォーマンスを実現するためには牛群検定加入とその活用が必須だ。牛群検定は発足以来、検定項目の拡充、酪農家への返し方とスピード等進歩を遂げ、今日の姿になっている。牛群検定の普及・利活用が、乳用牛ベストパフォーマンスの実現そのものといえる。残念ながら加入率が非常に低い地域もあるが、地域の酪農を再構築するためにも、牛群検定の普及と活用に力を入れてほしい」と呼びかけた。
同セミナーは今回の東京会場に続いて12月2日に福岡市、来年2月29日に札幌市で開かれる。