全酪新報/2015年12月10日号

「規模拡大によるコスト削減努力は限界」酪農家委員が「抜本的対策を」と意見―農水省・畜産部会の補給金等の議論

2015-12-10

農水省は12月1日、東京・九段南の三番町共用会議所で食料・農業・農村政策審議会2015年度第1回畜産部会を開き、来年度の畜産物価格等の審議を始めた。加工原料乳補給金単価や関連対策のあり方をめぐり酪農家の委員が、東京五輪関連の影響で建設費等施設整備コストが急激に上昇している実態を報告。「規模拡大によるコスト削減は限界にきている」と述べた。

お断り=本記事は12月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

加工原料乳補給金「意欲もてる単価に」―酪政連が自民畜酪小委で要請

2015-12-10

来年度(2016年度)畜産物価格・関連対策をめぐり自民党畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)は12月4日、自民党本部で会合を開き、酪政連など関係団体から聞き取り(ヒアリング)を行った。席上、酪政連の佐藤哲副委員長は、加工原料乳生産者補給金単価について「生産意欲がもてる交付単価」を要請した。さらに畜産クラスター関連事業、性判別技術を活用した後継牛確保対策、酪農ヘルパー制度への支援対策などの拡充を求めた。


佐藤副委員長は「酪農情勢は10年前から困窮していて、離農が増えている。昨年来、早めに作っていただいた畜産クラスター事業に対する生産現場の期待は高まっているが、明日すぐ取り組めるものではなく(事業参加まで)2~3年かかる。事業が5年、10年つづく仕組みであれば生産者は計画的に取り組める」と畜産クラスター関連事業の拡充と継続的な実施を要望した。


その上で「自給飼料をつくり、日本の国土を守るのが酪農の役目だと自負している。ただし、この10年でホルスタイン頭数は相当減っている。性判別技術を活用する対策を拡充してほしい。また、新規就農者や若い担い手にとって無くてはならない酪農ヘルパー制度の恒久的な仕組みをお願いする」と要請した。


JA全中畜産・酪農対策委員会の森永利幸畜産委員長は、来年度畜産物価格について「生産者の意欲を削ぐことの無いようお願いする」と要請。また、畜産クラスター関連事業の要件緩和と事業拡充を要請し、家族経営を含め多様な担い手が計画的に投資できる措置を求めた。


全国肉牛事業協同組合の山氏徹理事長は、新マルキン事業の法制化や補てん率引き上げなどTPP対策の着実な実施を要請。その上で、畜産専門農協の機能強化への支援、乳用牛を含めた繁殖・肥育素牛預託事業への支援の充実などを求めた。


団体要請を受けて中川郁子衆議は、後継牛確保対策をめぐり「酪政連が提案するホルスタイン種を生んだ親牛への支援はひとつのアイディア。ただし(助成には)厳格な確認作業が必要であり、かえって酪農家の大きな負担になるのではないか。また、性判別精液への支援がある中で、見方によっては二重(交付)に見られる可能性も」と慎重な姿勢を示し、「後継牛確保に苦労する理由には、子牛の死亡や事故の問題もあり、この点の対策強化も考えられる」と述べ、酪政連の見解を求めた。


これに対して佐藤副委員長は、ホルスタイン種を生んだ親牛への支援という酪政連案について「乳牛頭数が毎年1~2万頭ずつ減っている中では、いくら個体能力を高めても生乳生産の確保は難しい。さらに、個体価格が高く、収益の高いF1や和牛ETなどにシフトしているのが今の酪農経営の実態だ」との問題意識を説明。「後継牛確保には何が一番良い方策か酪政連として考えたが、実は、ある議員からも『(酪政連案に対して)ホルスタインがホルスタインを生むのは当たり前だろう。そのような支援はいかがなものか』と言われている。ただし日本のホルスタインをこれ以上減らさないためにどんな方法があるか検討中だ。例えば産次数延長への奨励や、乳牛改良へのインセンティブなどの方法がある。日本にホルスタインが残る仕組みを構築してほしい」と要望した。

自民畜酪小委「現場の声受け止める」―12月17日までに加工原料乳の補給金などを決定

2015-12-10

加工原料乳生産者補給金など、来年度の畜産物価格・関連対策をめぐり自民党畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)は12月6~7日に北海道と九州の酪農家・畜産農家を訪ね、現地視察を実施した。これを受けて12月8日に自民党本部で開いた会合で、生産現場の要望を報告した。坂本委員長は「現場の声を受け止め価格等を決定したい」と述べた。


坂本委員長を団長とする同委員会の視察団は、北海道(十勝管内、根釧管内、オホーツク管内)の酪農家、九州(鹿児島県、宮崎県、熊本県)の肉用牛肥育・繁殖農家、酪農家のほかTMRセンターを視察。併せて各地で生産者・関係団体と意見交換を行った。生産現場からは、畜産クラスター関連事業の使いやすい要件の設定、経営安定対策の充実などが要望として挙がった。


九州の現地視察に参加した小泉進次郎党農林部会長は、畜産クラスター関連事業について「事業の主旨は、地域全体が良くなるようにするものだったはず。現地の生産者にどのように事業を活用しているか聞くと、機械が更新できるからと話していた。政策のねらいが(十分に)伝わっていない」と指摘し、「大事な事業だからこそ国民から理解を得られる見直しを」と農水省の対応を求めた。


吉川貴盛衆議は「北海道では10月の強風と台風23号でデントコーンの収量が落ち込み、オホーツク管内では前年比12%減少している。(倒伏後に)収穫しても土や泥が混ざりサイレージ発酵が上手くいかず、数字以上に被害が大きくなる可能性がある。そのような状況を十分に勘案して価格決定等を決定してほしい」と指摘した。


今後の議論の日程について、西川公也自民党農林水産戦略調査会長は「2015年度補正予算案の閣議決定が12月18日の予定で、その前日(17日)までには畜産物価格を決定したい」と見通しを述べた。また、2016年度当初予算案は12月24日の閣議決定を見込んでいると説明した。


12月8日の会合では、2014年度畜産物生産費統計の調査結果に基づく酪農経営と和牛肥育経営それぞれの配合飼料費等について、農水省が各県ごとのデータを資料として示し、出席議員との意見交換が行われた。

酪政連が来年度政策・予算へ要請活動―「自給飼料、後継牛対策など柱に」

2015-12-10

酪政連は12月3日、自民党本部で常任・中央合同委員会を開き、自給飼料生産への支援拡充や後継牛確保対策を大きな柱とする2016年度畜産物価格・関連対策に関する要請事項を決めた。委員らは会議終了後、地元選出の国会議員への要請運動を展開した。


重点要請事項は、加工原料乳生産者補給金関連と緊急酪農対策に関する要請の2本立て。補給金関連では、①生産意欲が持てる交付単価とすること②加工原料乳交付対象数量(限度数量)は、乳製品需給を踏まえて適切に決定③準備が整い次第、生クリーム向けなど液状乳製品向け生乳を補給金制度に追加し、制度を拡充することとした。


一方、緊急酪農対策に関しては、飼料自給率の向上に向け、自給飼料の作付に対する支援策が大きな柱。三国貢幹事長は「農水省は(飼料生産型酪農支援事業について)概算要求で前年度比4億円の増額を求めた。その予算の更なる拡充と何とかして都府県の酪農家にも行き渡るように要件の緩和を要請してきた」と説明した。


また、後継牛確保対策をもう一本の大きな柱に位置付け。ホルスタイン種を産んだ親牛に対する支援や全国団体・都道府県団体が計画的に行う優良な後継牛確保に対する支援、畜産クラスター事業における乳牛導入支援の対象を新規就農者だけでなく、後継者にも拡大、性判別精液に対する助成の継続と予算の拡充・強化も求める。


そのほか、①飼料用米・WCSの利用促進に対する支援②コントラクターやTMRセンター事業に対する支援③畜産クラスター関連事業の予算確保と、家族経営酪農を含めた多様な担い手が取り組みやすいよう、事業要件のさらなる見直し④酪農ヘルパー要因の安定的な確保に向けた支援――と多岐にわたる内容について要請運動を展開した。

九州酪政連・鹿児島県酪政連が森山裕農相に政策要請

2015-12-10

九州酪政連協議会(山下俊忠会長)と鹿児島県酪政連(西洋行委員長)は12月8日、農水省に森山裕大臣を訪ね、来年度酪農政策・予算に関して要請した。面談終了後、山下会長は「大臣からは酪農の事情は理解している。酪農で経営ができるよう頑張ると言っていただいた」と話した。

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