全酪新報/2015年12月20日号

「意欲損なわない単価を」自民党畜酪小委員会で議論―農水省・加工原料乳補給金・関連対策

2015-12-20

加工原料乳生産者補給金など、2016年度の畜産物価格・関連対策をめぐり自民党畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)は12月17日、自民党本部で会合を開き、取りまとめを幹部に一任した。出席議員からは酪農家の生産意欲を損なわない補給金単価等を求める意見が相次いだ。農水省は「厳しい折衝が続いている」と述べた。政府・与党は12月18日に畜産物価格等を正式決定する。(決定等の詳細は次号に掲載)

お断り=本記事は12月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「来年度も増産目指す」中酪・2016年度の計画生産の方針を決定―中期計画生産の2年目「需給ひっ迫見込む」

2015-12-20

中央酪農会議は12月9日、東京都内で理事会を開き、来年度の計画生産対策について、引き続き増産型を目指す方針を決めた。


今年度から実施している中期計画生産対策では、3カ年は生乳の増産・維持を目指す方針で実施している。昨年11月から生乳生産量は、回復基調で推移しており、今年度は11月までの累計で前年度を上回っているが、依然として生乳生産基盤の回復には至っていない。加えて、中期計画生産の2年目となる来年度も生乳需給のひっ迫が見込まれるため、大きな枠組みは変更せず、増産を目指す方針とした。


来年度の計画生産対策の詳細については、Jミルクが来年1月末に公表する予定の生乳・牛乳乳製品の需給見通しを踏まえ、3月17日の理事会で決定する。

「兵庫県内の酪農組織が一本化」全国初の直接加入方式―兵庫県酪農協の創立総会を開く

2015-12-20

兵庫県内単一の酪農組織・兵庫県酪農農業協同組合の設立が決まった。設立発起人会は12月9日、神戸市の西神文化センターで創立総会を開き、提出した議案を全て承認した。新しい酪農協は、複数の組合が合併する方式ではなく、個々の酪農家が出資して直接加入する方式で、全国でこれまでに例のない方法となる。来年4月から事業を開始する。


総会の冒頭、発起人会の丸尾建城会長(兵庫県酪連副会長、西播酪農協組合長)は「将来にわたって安定的な経営が継続でき、次世代を担う後継者が育つ組合を目指し、酪農家が一つにまとまって自分たちの手で作り上げる」と抱負を述べた。


9日の創立総会には、兵庫県酪連の会員農協に所属している約80名の酪農家らが出席した。定款や事業計画書、役員の選任、外部出資など原案通り承認した。


現在、県酪連の会員は酪農専門農協5団体(東播酪農協、西播酪農協、兵庫丹但酪農協、北但酪農協、淡路島酪農協)と総合農協4団体(兵庫六甲農協、みのり農協、たじま農協、淡路日の出農協)の合計9団体。それらに加入している酪農家は、個々に来年2月を目途に新酪農協にも加入する。このような方式は、これまでに例がない初の取り組みとなる。


今後、来年3月上旬に設立登記し、新酪農協が誕生し、3月中旬に兵庫県酪連に加入する。4月1日からは事業を開始。6月に開く総会で事業計画を承認する。


県酪連会員のうち、酪農専門農協については、総会で解散を決議し、清算作業に入る。一方、総合農協については、県酪連からの脱退を承認する。その後、19会員は17年3月に県酪連から脱退する。新酪農協は8月までに県酪連の権利義務承継を登記し、県酪連は消滅する。


新酪農協の事業区域は県下一円で、本所を神戸市内、事業所を淡路島に置く。本所は総務部と生産指導部の2部体制。総務部は総務課の1課、生産指導部は販売課、指導課、購買課の3課で、淡路事業所には指導課と購買課を置く。


兵庫県内の酪農家戸数の推移を見ると、2001年は851戸だったが、10年前の05年は713戸、5年前の10年は493戸、現在は327戸まで減少した。飼養頭数は、2001年は約2万7300頭だったが、現在は約1万4800頭と半数近く減少。それに伴い、生乳生産量は2001年の約14万6千㌧から約8万7千㌧まで減少するなど、生産基盤の弱体化が続いている。


発起人会の丸尾建城会長は「戸数・頭数とも減少に歯止めがかからない状況にある」とした上で「TPP大筋合意が加わり、今までにも増して先行き厳しく、不透明な状況での船出となる。先々、幾多の苦難が待ち受けていると思うが、組合員と力を合わせ、行政の指導を受け、関係機関の協力を得ながら目標とする組合作りを進め、活力あふれる力強い兵庫県の酪農を築かなければならない」と強調した。


県単一酪農協の設立は1998年に掲げられた。その後、数回にわたって酪農協の合併が進んだが、近年は難航。しかし、昨年6月に開いた兵庫県酪連の総会で新酪農協を設立する方針が承認された。それにより、一本化に向けた動きが大きく前進した。県酪連の会員団体から選任された15名で構成する発起人会を設立し、会員農協との間で調整した結果、この度、悲願が達成された。

「バター、この冬は潤沢」―乳業者が規制改革会議で説明

2015-12-20

政府の規制改革会議は12月2日、農業ワーキンググループ(WG。座長=金丸恭分フューチャーアーキテクト㈱代表取締役会長CEO)の会合を開き、バター需給の現状について明治、雪印メグミルクから聞き取りした。乳業メーカー側は、直近のバター在庫量は十分にあり、今年末の需要期は潤沢に供給できるとの見通しを説明した。


一方、WG委員との質疑の中で、一部店頭でバター品薄感が続いているとの見方に対して「まんべんなく供給しているのに、末端の店頭にないのは不思議だ」(同)との認識があった。規制改革推進室は「バターの在庫はあるのに、消費者目線で足りていない原因はなぜなのか、その究明の努力は必要だと思うが、(今後の対応は)何も決まっていない」と述べている。規制改革会議では来年6月までに新たな規制改革項目を答申する方針。

「TPP合意、不安は越年」―酪農業界この1年を振り返る

2015-12-20

バター不足が大きな話題になるなかで、迎えた2015年。国は追加輸入で対応した。農水省は生産基盤の回復の一環として、乳用牛ベストパフォーマンス実現会議が飼養管理改善のポイントを提示し、生産現場に対し、供用期間の延長・飼養管理の改善を呼びかけた。自民党のワーキングチームは1県1団体や集送乳合理化、生乳取引への入札制度導入を促す提言を発表し、実現に向けた取り組みが進む。懸案のTPP交渉は大筋合意となったが、一部乳製品の関税撤廃も含まれ、将来の影響に不安がある。


1月


14日政府・自民党は2015年度加工原料乳生産者補給金単価を10銭引き上げ1㌔当たり12円90銭、交付対象数量を2万㌧削減し178万㌧と設定した。チーズ向け等を含め「実質13円25銭相当」で、前年度と同水準を確保した。


23日バター不足が社会問題化したことを受けて、農水省は乳製品輸入の運用改善を発表。追加輸入の判断の時期を5月、9月の年2回に分けて行うと決定し、時期を明確化した。輸入品の形状について、ユーザーが限られるバラバター(20~25㌔㌘)だけではなく、洋菓子店等が直接利用できる小物バター(1~5㌔㌘)も対象にした。


2月


5日雪印メグミルクが4月から牛乳、ヨーグルトなどの市乳類を値上げすると発表した。指定団体と乳業メーカーは前年末の12月に15年4月から飲用・はっ酵乳向けの取引乳価を値上げする事で合意していた。明治、森永も4月からの値上げを1月に発表していた。


6日中央畜産会が酪農後継者による仲間づくりと情報交換のための交流会を開催した。20~40代の各地の酪農後継者32名が参加した。


10日生乳需給ひっ迫に対応するため、中央酪農会議は2015~17年度の3年間、増産・維持を原則とする「中長期計画生産対策」を決定した。


23日西川公也農相が辞任、林芳正氏が農相に就任した。


3月


5日酪政連は通常総会を開き、TPP交渉における国会決議順守、中長期的な経営安定対策などを柱とする運動方針を決定。


5日Jミルクは臨時総会を開き、牛乳・乳製品の価値訴求のためのマーケティング活動強化などを重点とする第2期3カ年計画を決定。


17日農水省は10年後の食料自給率(カロリーベース)を45%とする食料・農業・農村基本計画を決定。10年後の生乳生産量を750万㌧に設定した。


25日今後の酪農・畜産政策の指針となる酪農及び肉用牛の近代化を図るための基本方針(酪肉近)が決定。農水省は2025年度の需要を飲用向け10%減、乳製品向け12%増、国内生乳需要5万㌧増との見通しをたてた。


4月


9日JA全中の萬歳章会長は8月の臨時総会で退任する意向を公表。前年8月に就任したばかり。3日に農協改革関連法案が閣議決定、「ひとつの区切りと考えた」と感慨を述べた。


10日酪肉近で掲げた酪農生産基盤強化、飼料用米生産拡大などの目標を実現するため、農水省は「畜産再興プラン実現推進本部」を立ち上げた。酪農生産基盤強化部会・繁殖雌牛増頭部会・飼料増産部会の3つの部会を設置し、当初3年間を重点推進期間とした。


21日宮崎県の口蹄疫禍から5年。農水省が開いた全国家畜衛生主任者会議で、口蹄疫等の家畜伝染病の水際防疫対策・防疫意識強化に向けて全国に協力を呼びかけた。


5月


11日酪政連は、酪農がおかれている窮状を広く訴え、危機打開のための政策を求める全国酪農民大会を7月に行うことを決めた。


15日中央酪農会議がまとめた受託販売実績によると4月の指定団体の飲用牛乳向け販売実績が前年同期比0.5%増だったことが分かった。4月からの生産者乳価値上げを受けて牛乳価格が4月から小売価格が値上げとなり、消費への影響が懸念されていた。


22日北海道酪農協会の定期総会で、会長に佐藤哲氏(西胆振支部)が就任した。


25日Jミルクは2015年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しを公表した。乳製品需給のうち、特にバターについては需要を満たせない見込みとなった。


27日年末の乳製品需要に備え、農水省はカレントアクセスの枠外でバター1万㌧、脱脂粉乳5千㌧の追加輸入することを決定。Jミルクの需給見通しなどを踏まえたもので、追加輸入は2年連続。


28日こどもの国(横浜市)が開園50周年記念式典を開催。式典には、天皇皇后両陛下がご臨席。園内にあるこどもの国牧場も視察された。こどもの国は両陛下のご成婚記念事業として開園した。


6月


10日一般社団法人全国農協乳業協会は16年3月31日をもって解散し、4月以降、業務を任意団体に移行することを決めた。原材料値上げやエネルギーコスト上昇等、会員の事業環境が厳しくなるなかで、組織維持コストを縮減することがねらい。


25日中央酪農会議はJミルクの需要予測をもとに、前年度の指定団体の実績に対して今年度計画生産目標を1.8%増と決定した。


30日農水省が発表した畜産統計によると、2月1日現在の全国の酪農家戸数は1万7700戸(対前年比900戸、4.1%減)、乳牛飼養頭数は137万1千頭(同2万4千頭、1.7%減)。


30日新潟県三条市は9月から学校給食の献立を外すことを決定。ただし児童の栄養補給の観点から、給食以外の時間に「ドリンクタイム」を設けて牛乳を提供することにした。


7月


2日自民畜産酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)が、今後の生乳流通・取引体制のあり方等について提言案をまとめた。①5年後までに指定団体の再編等を実現できる計画を年度内に策定②1県1酪の推進③集送乳合理化などを求めるもの。


12日地域交流牧場全国連絡会は、若手酪農家が中心になって活動するクラブ・ユース事業の新たな取り組みとして「若手の集い」を開催。全国の若手酪農家のほか、酪農に関心のある大学生、高校生など約70名が会場の農水省講堂に集まった。


16日全国酪農青年女性会議と全酪連が開いた第44回全国酪農青年女性酪農発表大会を開催。山下雅博さん(経営発表の部、北海道天塩町)、富安麻紀子さん(意見・体験発表の部、熊本県阿蘇市)が農林水産大臣賞を受賞した。


21日近畿生乳販連は総会でJミルクから退会することを決めた。「近畿地域において酪農家は1銭も外部組織団体へ拠出金を出すだけの余力がない」というのが理由。


21日農水省は、生乳取引への入札制度導入など新たな乳価交渉ルールなどを協議する、生乳取引のあり方検討会を立ち上げた。指定団体や乳業メーカー、全国連の実務者で構成している。自民党の提言を受けたもの。


31日酪政連は、TPP交渉での国会決議順守と来年度予算確保などを求め「日本酪農危機突破総決起大会」を都内で開催。1千名がデモ行進した。


8月


4日乳用牛ベストパフォーマンス実現会議が飼養管理の改善ポイントを示すパンフレットを作成、公開した。供用年数延長と能力向上により、今いる乳牛の生産性を高めようとする取り組み。


7日全酪連札幌支所が開いた家畜主任者会議で、北海道・都府県ともET交配が高い水準にあり、後継牛確保が急務とする指摘があった。


25日台風15号が強い勢力のまま九州を縦断。牛舎等施設の損壊、乳牛斃死、廃棄乳の発生、トウモロコシ倒伏など酪農関係にも甚大な被害が出た。


9月


9~11日台風18号の豪雨災害により栃木県、茨城県、宮城県で牛舎が浸水する被害があったほか、路面冠水・土砂崩れなどによる集乳遅延、一部で生乳廃棄が発生。


25日福島県酪農協が昨年7月から建設を進めていた復興牧場の落成見学会・祝賀会が開かれた。牧場は県酪が整備し、盗電原発事故で避難を余儀なくされている酪農家5名で組織する農業生産法人フェリスラテが経営する方式。


25日農水省は、バター供給量が需要を上回る見込みであることから、年度内の追加輸入を行わないことを決定。Jミルク、日本乳業協会とともに開いた記者会見で発表した。


25日JA全農が開いた酪農経営体験発表会で小川学さん(北海道猿払村)が農林水産大臣賞を受賞した。


10月


5日TPP交渉は参加12カ国で大筋合意に達した。農水省の発表によると酪農関係では乳製品のうち脱脂粉乳・バターは低関税率のTPP輸入枠(生乳換算6~7万㌧)を設定、ホエイは21年目までに関税撤廃すること――などが含まれている。


7日第3次安倍改造内閣で森山裕氏(鹿児島)が農相に就任した。


7日酪政連の会議で、佐藤哲副委員長は「酪農にとっては非常に厳しい結果で、その影響が読み切れないところが本当に危険だ」と述べた。佐藤副会長は日本の畜産ネットワーク代表として10回のTPP閣僚会合に同行してきた。


9日TPP大筋合意を受けて農水省は中央・地方で説明会、意見交換会を順次開催、交渉の経過と大筋合意の概要を説明した。東京・虎ノ門で開かれた説明会では本川一善事務次官が「確実に再生産が可能となるような万全の策を講じたい」と関係者の理解を求めた。


16日自民党の提言を受けて、生乳取引への入札制度の導入などを検討していた生乳取引のあり方検討会は報告書を公表。来年度から①乳価交渉は毎年12月待つまでに決着②入札制度は乳製品向けと飲用向けで用途を分けて、来年度から2年間試行的に行う――などとした。


16日農水省は中央酪農会議・指定団体・都道府県に対し、5年後を目標する指定団体再編実現、農協・酪農協の1県1団体化などについて、今年度中に計画の策定を求める通知を出した。


26日北海道で開かれた全日本ホルスタイン共進会で、天野洋一さん(北海道更別村)出品のレデイスマナーMBセレブリテイ号が最高位賞を受賞した。


11月


4日農水省は品目別のTPP影響分析をまとめた。乳製品、牛肉とも当面の輸入急増を見込まない一方、長期的には脱粉やチーズ、乳用種牛肉など競合する国産品の価格下落を招く可能性を指摘している。農水省が自民党の会議に報告した。


17日TPP大筋合意を受けて、自民党は農業分野のTPP対策を決定。酪農では生クリーム等向け生乳を加工原料乳生産者補給金制度の対象に追加することを決めた。


18日日本酪農青年研究連盟が福岡市で開催した日本酪農研究会で、本田憲一さん(北海道別海町)が黒澤賞を受賞した。


12月


1日2016年度の加工原料乳補給金単価等を審議する食料・農業・農村政策審議会畜産部会の1回目会合が開かれ、酪農家の臼井貴之委員は「規模拡大によるコスト削減は限界にきている」などと述べ、抜本的な対策を求めた。


6~7日補給金・畜産物価格・関連対策の議論に向けて自民党畜産・酪農対策小委員会は、北海道と九州の酪農家・畜産農家に聞き取りを行う現地視察を実施した。


15日福島県酪が建設した復興牧場(福島市)が生乳出荷開始。原発事故で避難している酪農家が組織する株式会社フェリスラテが運営している。

連絡先・MAP

一般社団法人 全国酪農協会
所在地 〒151-0053
東京都渋谷区代々木1-37-2
酪農会館5階
電話番号 代表(総務部):03-3370-5341
(業務部・共済制度)
     :03-3370-5488
(指導部・全酪新報編集部)
     :03-3370-7213
FAX番号 03-3370-3892
アクセス JR・都営大江戸線ともに
「代々木駅」から徒歩1分
全酪アカデミー 酪農ヘルパー全国協会 日本ホルスタイン登録協会 GEAオリオンファームテクノロジーズ株式会社 株式会社ピュアライン 株式会社セイワ あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 東京海上日動火災保険株式会社 海外農業研修生募集 相互印刷株式会社 西桜印刷株式会社 警察庁防犯教室

購読お申込み


このサイトに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。
Copyright © The Dairy Farmers Association Of Japan. All right reserved.