全酪新報/2016年1月10日号

「乳製品生産は最大で291億円減少」政府のTPP影響試算―脱粉・バター向け乳価の低下「下げ幅4~7円程度か」

2016-01-10

政府は昨年12月24日、TPP協定が発効した場合の経済効果分析結果を公表した。日本経済全体への効果としてGDPが2014年度と比較して約14兆円底上げされると分析した。その一方で、農水省は、酪農への影響として乳製品の国内生産額が198~291億円減少するとの試算を示した。脱粉・バター、生クリーム等液状乳施品向け乳価は4~7円低下するほか、チーズ向け乳価も一部で輸入品価格まで下落すると試算している。

お断り=本記事は1月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「TPP対策の実施で生産と所得維持」―農水省牛乳乳製品課が分析

2016-01-10

農水省牛乳乳製品課によると、生産額への影響は「関税撤廃・削減された部分の国内価格を引き下げれば、国内生産量を維持できる」という考え方である。そのため「体質強化対策や経営安定対策の適切な実施で、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量は維持される」と分析している。


なお、カマンベール・モツァレラなど、日本人の嗜好に合うチーズの関税は現状維持であり、影響はない見通し。「飲用牛乳の市場アクセスで譲歩はしていない」(牛乳乳製品課)ため、飲用向け乳価への影響も試算には盛り込んでいない。


政府のTPP関連政策大綱では、加工原料乳生産者補給金制度の対象に生クリーム等の液状乳製品を追加し、補給金単価を一本化するなど酪農経営安定対策を拡充する方針をすでに決定している。試算公表にあたり森重樹課長は「対策をしっかり講じることで、酪農家が安心して生産できる環境に努める。TPPを安心して乗り越えていけるというメッセージを酪農家に伝えていきたい」と述べた。


日本のTPP交渉参加にあたり2013年3月に公表した政府統一影響試算では、①関税は全て即時撤廃②国内対策を考慮しない――場合、鮮度が重視される生クリーム等を除いて全てが輸入品に置き換わり、飲用乳の大部分が北海道産となり都府県の生乳生産が消滅、牛乳・乳製品生産額は約2900億円減少し、生産量は45%落ち込むとの試算を示していた。

「輸入飼料削減、飼料作付拡大に追加助成」2016年度予算案―酪農経営安定対策に総額377億円「液状乳製品もナラシ対象に」

2016-01-10

政府は昨年12月24日までに2016年度の農林水産関係予算案を概算決定(既報)した。酪農経営安定対策は、所要額376億7300万円(4億8600万円減)を計上した。加工原料乳生産者経営安定対策事業(ナラシ事業)は、新たに液状乳製品向けを含む乳製品向け生乳の入札取引で価格下落した場合も補てん対象とする。自給飼料増産を支援する飼料生産型酪農経営支援事業も拡充した。輸入粗飼料を減らし、飼料作付面積を拡大した場合に交付金を上乗せするものだ。


環境負荷軽減と自給飼料生産に取り組む酪農家を支援する飼料生産型酪農経営支援事業は、68億円(2億1900万円増)を計上した。これは、飼料作付面積が北海道で1頭当たり40㌃以上、都府県10㌃以上で、かつ環境負荷軽減の取り組みを行う酪農家に対して、飼料作付面積1㌶当たり1万5千円を交付する。


さらに、自給飼料増産を一層推進するため、2016年度より事業を拡充した。輸入粗飼料の使用量を減らし、飼料作付面積を拡大した酪農家には拡大した面積分に追加交付金3万円を上乗せした1㌶当たり計4万5千円を交付する。


同事業は今年度(2015年度)より、都府県の酪農家が活用しやすいよう、二期作・二毛作の2作目の面積と委託栽培分の面積も交付金対象に追加している。


一方、加工原料乳生産者経営安定対策事業は、脱脂粉乳・バター等向け、チーズ向け乳価の下落時に、生産者と国が拠出した積立金から補てん(低落分の8割)するもの。2016年度から「液状乳製品向けを含む乳製品向け生乳の入札取引における価格低落時」として、生クリーム等向けも補てんの対象に加えた。


今後の生乳取引ルールについて、指定団体、乳業メーカー、全国連は昨年10月に報告書を取りまとめ、生乳の入札制度を2016年度より2年間、試行的に導入し、その効果を検証すると結論づけた。その際、乳製品向けの入札は、用途無指定で行うため、現行のナラシ事業の対象に生クリーム等の液状乳製品向け生乳が含まれていない点が問題として提起されていた。


農水省牛乳乳製品課によると、ナラシ事業の2014年度末の積立金残高は約70億円。今回の運用見直しについて「試行的とはいえ、入札で価格下落した場合の備えが必要だった」と説明している。 このほか、酪農経営安定対策として、加工原料乳生産者補給金の所要額は305億6400万円(5億400万円減)。また、需給調整を補完するため、乳製品の委託製造に2分の1の経費助成をする国産乳製品供給安定対策事業は3億円(2億円減)を計上した。

「7~9月期、都府県の和牛交配率(F1)52・5%に」―北海道はわずかに低下

2016-01-10

日本家畜人工授精師協会が昨年12月25日に公表した2015年第3四半期(7~9月)の乳用牛への黒毛和種の交配状況(F1交配率)によると、都府県は52.5%と前期(4~6月)を大きく上回り、1年ぶりに5割を超えた。北海道ではわずかに低下したが、全国平均は35.8%で1.9ポイント増、前年同期比で0.7ポイント増と増加傾向が続いている。F1交配率が生乳生産に影響を与え始めるのは妊娠・育成期間を経た3年後とされる。


F1交配率を地域別に見ると、北海道は21.1%で前期比0.3ポイント減とわずかに低下したが、3期連続の20%台。前年同期比では0.1ポイント上回る。


一方、都府県は52.5%で前期比4.4ポイント増と大きく上昇した。前年同期比で1.5ポイント上回り、1年ぶりに50%の大台に乗った。


農水省は2014年6月、当時のF1交配率(2014年1~3月期=北海道20.4%、都府県47.3%)と性判別精液の利用動向などを踏まえて「この交配水準が続けば乳牛資源の不足が懸念されるため、酪農家への注意喚起と計画的なF1生産を指導するように」と各都道府県庁・酪農関係団体に通知している。

TPP経済効果―GDP14兆円増見込む輸出増、民間消費など寄与

2016-01-10

政府が昨年12月24日に公表したTPP経済効果分析によると、協定発効した場合の実質GDPへの影響(2014年度比)を重要項目別にみると、輸入増の影響が0.61%(約3.3兆円)減、一方で輸出増の効果が0.6%(約3.1兆円)増となった。このほか、民間消費が1.59%(約8.3兆円)増、政府消費が0.43%(約2.3兆円)増、投資額が0.57%(約3兆円)増として、差し引き2.59%(13.6兆円)増加すると見込んだ。


日本が交渉参加にあたり3年前(2013年3月)に公表した政府統一影響試算では、①関税撤廃効果のみを対象②関税は即時撤廃③追加的な対策を計算に入れない――など単純な条件で試算した場合、実質GDPで0.66%(10年比で3.2兆円)増の経済効果があると説明していた。


TPP大筋合意後改めて公表した今回の試算は、関税削減・撤廃効果に加えて、各ルール分野の合意による貿易・投資拡大、それによる生産性向上の効果などを織り込んだ結果、GDP増の効果が大きく膨らんだ。


TPP政府対策本部によると、仮に前回の政府統一試算と同じ手法で試算すると、GDPへの影響は0.34%(2014年比で1.8兆円)増にとどまる。「関税撤廃があまりされていないのが大きい」(渋谷和久内閣審議官)と説明している。


なお、今回の試算はTPP協定の経済効果だけを算出したもの。2015年1月に発効した日豪EPA(経済連携協定)など、既存のEPAを含めた実質GDPへの影響は3.84%(約20兆円)増と見込んでいる。

TPPへの体制整える出発点「国際競争力が大前提」―中畜・賀詞交歓会で中須勇雄副会長があいさつ

2016-01-10

中央畜産会(小里貞利会長)が1月5日に開いた新年賀詞交換会で、中須勇雄副会長は「TPPで大幅な関税引き下げ・撤廃が行われるからには、国際競争力を身に付けることが大前提だ。関税撤廃・引き下げは長期間かけて行われる。その間にしっかりと体制を整えなければならない。今年はそのための出発点になる」と挨拶した。


TPPの大筋合意内容について中須副会長は「畜産業界にとって、先行きが大変厳しいと思わせる内容だ。そのため、政府・与党はTPP関連政策大綱を取りまとめたが、その内容は畜産団体が要請してきたことが盛り込まれた。もちろん、これから先に具体化する作業があるが、我々は注視しながら然るべき声を出していかなければならない」と述べた。


また、来賓挨拶した農水省の今城健晴生産局長は「我々もかつてない厳しい合意内容だと思ったが、日本の酪農・畜産は消費者にとってなくてはならない産業だ。そのためにも、1日でも早くしっかりと備えなければならないと気持ちを切り替え、大綱を取りまとめた」とした上で「TPP関連法案の中で備えをしっかりと形にし、全国の関係者に対策に取り組んでいただくことが最大の課題だ」と述べた。

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