全酪新報/2019年9月20日号

「千葉県酪農に影響甚大、台風15号被害」――長期大規模停電が響く

2019-09-20

9日未明に記録的な暴風雨を伴って関東を直撃した台風15号により千葉県内では長期の大規模停電、断水が起き、酪農乳業に甚大な被害が発生した。搾乳への影響だけでなく、クーラーステーション(CS)3カ所の稼働がストップ、生乳の受け入れが止まった。やむなく廃棄される生乳は数千㌧規模にのぼる見通し。関東生乳販連や千葉県酪連等では、必死の対応に追われているが全容は依然不明。17日現在で台風前の通常乳量の8割程度まで集乳量は回復。残る2つの乳業工場も再開に向け準備中だが、被害の拡大、生産基盤への長期の影響は避けられない。

お断り=本記事は9月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「農水省、台風被害へ対策本部設置」――江藤農相「十二分な対応行う」

2019-09-20

家屋倒壊や大規模な停電など、千葉県を中心に大きな被害が出ている台風15号に関して、農水省は9月17日、「台風15号に関する農林水産省緊急自然災害対策本部」を設置した。江藤拓農相は「あらゆる施策を駆使し、本災害によって農林漁業を諦める方が出ないよう、十二分な対応を行う」との姿勢を強調した。酪農においても被害は大きく、全容が明らかになるとともに被害拡大が懸念される。


被災状況把握のため、江藤農相は14日に茨城県と千葉県を視察。その状況について17日の大臣会見で酪農について「ずいぶん回復していた」との見解を示しつつも、停電等の影響により、生乳廃棄や断水による飲水不足、乳房炎発生とそれによる体細胞数増加など「酪農に大きな影響が出ている」と説明した。

「新農相に江藤拓氏(宮崎)」9月11日発足安倍改造内閣――畜安法「いいとこ取り」に苦言も

2019-09-20

第4次安倍第2次改造内閣が9月11日に発足し、新農相に江藤拓氏(衆・宮崎2区、59歳)が就任した。同日の初閣議後に開いた就任会見で江藤農相は、農業において大宗を占める家族経営について「規模の大小にかかわらず、家族経営が日本の農業を支えていることに我々は十分に留意しなければならない」とその重要性を強調。改正畜安法におけるいいとこ取りに苦言を呈したほか、都府県の生産基盤にも言及した。議論が進められている次期食料・農業・農村基本計画については、家族経営の位置づけに対して「規模拡大や集約化だけでなく、強い農業、活力ある農村の実現に向け、産業政策と地域政策を車の両輪として政策が講じられるよう見直していきたい」との意向を示した。


江藤農相は「いいとこ取り」など運用上の課題も多い改正畜安法について「条件の良いところだけ集乳して調整金を得るといったことはモラルハザードだ。決して許されることではない。しっかり監視していく必要がある」と強調。生産基盤の弱体化が続いている都府県酪農の現状に対しては「非常に憂慮すべき事態」と述べ、畜産クラスター事業等の予算の活用を呼びかけるとともに、需要が堅調に推移している状況をふまえ「できる応援はしっかり行っていきたい」と述べた。


このほか、江藤農相は会見の中で▽農林水産物・食品の輸出1兆円に向けた課題と対応策▽国際交渉等の国内農業への影響と対応▽農協改革への評価――等について言及した。


そのうち、先般大枠合意した日米貿易交渉の影響について「過去の経済連携協定が最大限」とする昨年9月の日米共同声明に沿った交渉結果を評価しつつも、TPP11協定も含めた国産牛肉への影響を懸念。江藤農相は「自分の政治家としての将来を懸けてきた自負はあるが、相手は米国。TPP12の際もギリギリまで粘る交渉姿勢だった。(日米貿易交渉でも)意見の一致をみたものの、さらに無茶を言ってくる可能性も否定できない」と述べ、注視する姿勢を示した。


農水副大臣は伊東氏・加藤氏


政府は9月13日、第4次安倍第2次改造内閣の副大臣、大臣政務官人事を発表。農林水産副大臣には伊東良孝氏(70歳、衆・北海道7区)と加藤寛治氏(73歳、衆・長崎2区)、農林水産大臣政務官には藤木眞也氏(52歳、参・比例)と河野義博氏(41歳、参・比例)が就任した。

「牛乳・乳製品の輸出、3割増の94億円」――2019年上期農産物輸出は前年同期上回るも伸び鈍化

2019-09-20

農水省は8月9日、2019年上半期(1~6月)の農林水産物・食品の輸出実績を公表。同期の輸出額は前年同期比2.9%、128億円増の4486億円だった。政府が19年の輸出額1兆円を目標に掲げる中、引き続き増加傾向にあるが、伸びは鈍化。上期は前年同期を上回ったものの、目標額の半分の5千億円には達しなかった。農水省の試算によると、目標を達成するためには、下期だけで約17%上回る必要がある。牛乳・乳製品については、約94億円で3割増。粉乳を中心に大きく伸長し、LL牛乳等もやや増加した。


農水省は鈍化の要因に関し、日本の輸出の減速や世界経済等が影響していると説明した上で、農産品については「水産物、林産物が弱含む中でも、農産物・食品はプラスとなっており、健闘している」(食料産業局輸出促進課)と評価した。


19年上半期の畜産物の輸出額は251億2400万円で24.8%増。牛肉、牛乳・乳製品、鶏卵の好調な輸出を受けて大きく伸長した。牛乳・乳製品は29.1%増の93億8600万円。内訳は粉乳は52億4300万円で34.6%増、牛乳・部分脱脂乳は6億4500万円で29.3%増、チーズ・カードは6億2500万円で16.4%増だった。農水省の説明によると、粉乳の大幅拡大を要因に、日本産が海外で好まれている点も影響したとしている。現在は香港・台湾向けのLL牛乳やチルド牛乳の輸出も若干増加傾向にある。


輸出先を見ると、粉乳は依然としてベトナム向けが最も多く、次いで台湾、香港と続く。一方、牛乳・部分脱脂乳とチーズ・カード向けは香港が過半を占めている。


そのほかの畜産物を見ると、牛肉は132億3300万円で22.2%増、鶏卵9億8千万円で56.2%増、鶏肉は9億7100万円で7.5%増、豚肉は5億5400万円で10.9%増と全ての品目で前期を上回った。

「オリオン機械、タイの乳質向上へ支援実施」――目標超える成果挙げる

2019-09-20

オリオン機械(太田哲郎社長)はこのほど、2017年10月に事業を開始したタイの酪農発展のための支援事業の終了に伴い、バンコクで事業報告セレモニーを開催。同事業は生乳の品質向上を目的にしたもので、生菌数、体細胞数など設定していた目標を超える成果を挙げ、タイ政府から感謝の言葉を受けた。今後は成果を踏まえ、現地法人を拠点として東南アジア諸国への事業を展開する。


2年あまりにわたって実施した支援事業は、同社と国際協力機構(JICA)、タイ王国農業協同組合省畜産振興局の3者で契約を締結。JICAの中小企業海外展開支援事業を受託し、自動洗浄機能付搾乳システム及び生乳冷却機による生乳の品質向上に関する普及・実証事業として実施した。


事業の概要は、オリオン機械の自動洗浄機能付搾乳システムとバルククーラー、建屋を3カ所の農業試験場に導入したほか、指導的な人材を育成するための座学による研修も実施した。


当初、生菌数と体細胞数は30%減少、作業時間は50%削減を目標に設定していたが、生菌数は91%減少、体細胞数は51%減少、作業時間は62%削減できた。今後はそれらの実証成果をもとに、タイ国内のみならず、東南アジア諸国への販売拡大を視野に入れ、事業を展開。5年後の24年には酪農事業の売上高5億円を目指す。

連絡先・MAP

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