全酪新報/2019年10月20日号

「農水省、脱粉追加輸入枠6千㌧削減」――ヨーグルト消費減少、期末在庫が適正水準上回る

2019-10-20

農水省は10月4日、今後の乳製品需給を見通した結果、ヨーグルトの消費が踊り場にあることなどにより脱脂粉乳が余剰気味になっていることから、1月末に設定した2019年度の追加輸入枠を「削減する」との方針を発表した。2万㌧から6千㌧削減し、1万4千㌧とする。牛乳乳製品課の水野秀信課長は今回の判断について「来年1~3月各月末の在庫量が6万6千㌧となる試算結果から、必要在庫量6万㌧を大幅に上回るため、削減することを決定した」と説明した。なお、バターの輸入枠は変更せず、2万㌧のまま据え置く。

お断り=本記事は10月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「牛肉関税はSG付で削減、TPPと同様9%まで」――日米貿易協定

2019-10-20

日米貿易交渉における合意品目のうち、国産牛肉と競合する牛肉はTPPと同内容で、セーフガード(SG)付きで年々関税削減し、2033年度には9%まで削減する。SG発動基準数量は2018年度の米国からの牛肉輸入実績25万5千㌧以下をベースとし、2020年度の発動基準数量を「24万2千㌧」に設定した。米国とは22年度上半期までに協議を進め、TPP11協定が米国も含んだ上でTPP同水準となるよう修正されれば、2023年度以降よりTPP全体の発動基準へ移行し、影響はTPP水準の範囲内に収まる。一方、発動基準をめぐり豪州等TPP11参加国が再協議に応じるかどうかは不透明で懸念も大きい。


牛肉の関税率はTPPと同内容で、SG付きで長期の関税削減期間を確保。2019年度の26.6%より徐々に削減し、33年度には9%へ下げる。


SG発動基準数量は、18年度の米国からの輸入実績25万5千㌧を下回る形で合意した結果、2019年度及び2020年度の基準数量として24万2千㌧を設定。2019年度は発効日から年度末までの日数に応じた割合を24万2千㌧に乗じて算出する。SGが発動した場合は米国と協議を行う。


2018年度の牛肉輸入量はTPP11参加国36万4千㌧に対し、米国25万5千㌧。米国は2018年度が近年で最も多く、TPP11参加国からの輸入分と足した場合の米国の比率は約41%。TPP同様、年々発動基準数量が増えることに対し、農水省は「(枠数量が)伸びても米国分は41%の範囲内で収まると想定しており、『TPPの範囲内』という認識だ」としている。


今後、豪州等のTPP11参加国に対して再協議を求めていくことになるが、TPPで設定したSG発動基準数量は米国離脱後のTPP11でも変更はないことから、各国が修正・調整に応じるかが焦点になる。

「台風19号、記録的豪雨、広域に酪農被害」――水害で道路寸断、乳牛死亡も

2019-10-20

大型で強い勢力で10月12日に伊豆半島に上陸した後、関東地方、東北地方を通過した台風19号は12~13日、東日本を中心に記録的な豪雨により、各地で河川の氾濫や停電、断水が発生。酪農乳業では生乳廃棄や水没した牛舎で乳牛が死亡、牛舎が倒壊するなど深刻な被害をもたらした。寸断された道路の復旧が長引けば飼料供給に影響を及ぼし、被害の拡大が予想されるが、全容解明には時間がかかる見通しだ。


東北生乳販連によると、牛舎倒壊や停電などの影響により推定で36㌧ほどの生乳廃棄が発生している。宮城県丸森町では、浸水被害が治まらない地域や道路の寸断もあり12戸ほどが出荷できない状況(16日現在)。また、福島県で20頭の乳牛を飼養している酪農家では阿武隈川の氾濫により牛舎が浸水し、19頭が死亡するなど深刻な被害も発生している。


関東生乳販連によると、生乳廃棄量は推定で40㌧(15日夕方時点)ほど。埼玉県と栃木県では河川氾濫によりロールサイレージの流出は数戸あり、500個ほどが流出したと見ている。台風15号による被害の影響が残る千葉県の被害状況は現在調査中としている。


茨城県大子町では久慈川の氾濫と停電が続いているため一部の酪農家では生乳廃棄が続いている。同県全体での生乳廃棄は7㌧程度。また、栃木県で11戸、群馬県で2戸、静岡県で3戸の生乳廃棄が発生した。神奈川県では1戸が道路寸断により集乳ができない状況。


東海酪連によると、長野県では北部と東部地域で17戸、岐阜県で1戸、合わせて14.6㌧ほど生乳廃棄が発生。16日以降も生乳廃棄が続く見込み。16日現在、停電は解消しているが、一部地域では道路の寸断などで集乳が出来ない。また、一部の乳業工場は道路事情により生乳の受入が出来ず製造を中止している。

「日米貿易協定、承認案を閣議決定」――国会提出し議論へ

2019-10-20

政府は10月15日、日米貿易協定の承認案を閣議決定し、現在会期中の臨時国会(第200回国会)へ提出した。日米両政府は早期発効に向けて手続き等を進めており、今国会で承認が得られれば、年明け20年1月1日にも発効する公算が大きい。

「米国産トウモロコシ追加輸入で飼料価格上昇」――東大・鈴木教授がコメント

2019-10-20

日本政府はこのほど開催された日米首脳会談終了後、米国産トウモロコシ275万㌧を追加輸入すると発表した。その点について、東大大学院の鈴木宣弘教授は「一部に安いトウモロコシが買えて日本の畜産農家が利益を得るとの見解があるが、実は逆。シカゴ相場を上げて米国の農家を救うのが目的であり、日本の畜産農家は飼料価格が上がって迷惑なだけ」と指摘した。鈴木教授のコメントの一部を紹介する。


日米首脳会談後の記者会見で、嬉しそうにトランプ大統領が安倍首相に「米国の余剰トウモロコシを数百億円分買う約束のことを話してくれ」と促し、首相は「害虫駆除の必要から前倒し購入する」と応じた。それにしても、日本の飼料用トウモロコシの年間輸入量である約1千万㌧の3カ月分、275万㌧(1㌧当たり2万円とすると、約550億円)は大量である。


政府は害虫による食害対策として輸入すると説明しているが、辻褄が合わない。なぜなら、


①そもそも、害虫は確認されているが、食害はほとんど起きていないと農林水産省の担当課も認めた。その後「被害は確認していない」と表現を変更したが、意味は同じ。


②食害が懸念されている日本の飼料用トウモロコシは葉や茎を青刈りして発酵させる粗飼料であるが、米国から輸入しているのは濃厚飼料となるトウモロコシの実(粒)で用途が違う。粗飼料と濃厚飼料の給与にはバランスが必要で、完全には代替できない。


③「すでに8月8日に政府は前倒し輸入を決めていたのだから、食害対策が先にあった」という指摘もあるが、5月末の東京での日米首脳会談のあと、トランプ大統領が「日本との貿易交渉で大きな進展があった。農産品と牛肉は大変な影響がある。7月の選挙の後、大きな数字を期待している」とツイートし、加えて、記者会見でも「おそらく8月に両国にとって素晴らしいことが発表されると思う」と発言し、「TPPなんか関係ない」と言い放ったことを思い返せば、5月の時点で穀物輸入が決まっていたと考えるのが自然である。


④追加でなく「前倒し」で総輸入量は増えないという国の説明もありえない。輸入総量が増えないなら米国にとって何の意味もない。増えるから米国農家とトランプ大統領は喜んでいる。少なくとも米国側が単なる前倒しで了解していることはあり得ない。「国民は適当にごまかしておけばよい」という姿勢がエスカレートしてきているように思われる。


⑤国産のコメをトウモロコシに代わる飼料にしようと推進しているエサ米政策とも真っ向からバッティングする。


⑥ブラジル産のトウモロコシのほうが安いのに、足りないなら、なぜそちらを買わないのか、との疑問も寄せられているが、米国の余剰処理のためなのだから、そんな選択肢は最初から議論の余地はない。


中国の米国産大豆の輸入減が大問題になっており、トウモロコシは、近年、米国からの中国向け輸出はほとんどなかったが、今回の米中協議で中国は米国産トウモロコシを輸入すると一度は提示し、反故にした。


また、トランプ大統領がガソリンとエタノールを混合することを義務付けた規制を緩和したため、米国でエタノール向けの需要が減って需給も緩和しており、シカゴ相場が暴落している。


米国農家は大豆とトウモロコシと小麦を輪作しているので、日本のトウモロコシ買い付けで相場が上昇すれば、米国の穀物農家は助かる。日本の畜産農家にとっては飼料コストアップの不利益を被ることになる。


一部に、安いトウモロコシが買えて日本の畜産農家が利益を得るとの見解があるが、逆である。シカゴ相場を上げて米国農家を救うのが目的だから、日本は使えないものを買わされたうえ、飼料全体の価格も高くなり、迷惑なだけだ。

「新基本計画策定に向けパブリックコメント募集」――農水省来年2月末まで

2019-10-20

現在、2030年を目標年度とする新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けた議論が進むなか、農水省は9月6日~来年2月末までの期間で農業・畜産、担い手、農業経営、食料自給率など多岐にわたるテーマに関するパブリックコメントを募集している。意見提出方法は、農水省HP上の提出フォームhttps://www.contactus.maff.go.jp/j/form/kanbo/kihyo01/190906.html)のほか、郵送も可能(千代田区霞が関1-2-1 農林水産省大臣官房地方課地方提案推進室宛て)。各地方農政局等でも受け付けている。


食料・農業・農村基本計画は、10年後を目標年度として政府が施策の総合的かつ計画的な推進を図るべく、基本的な方針や食料自給率目標などを定めるもの。概ね5年ごとに見直す。その方針が実証・実施される現場の「生の声」は非常に重要だ。

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