全酪新報/2020年2月1日号

「過度な企業的経営依存にリスク、大規模ほど価格変動に脆弱」―― 酪農基本対策委で北大・清水池講師が講演(下)

2020-02-01

北海道大学大学院の清水池義治講師はこのほど、全国酪農協会が開いた酪農基本対策委員会で「北海道と都府県の均衡ある発展を目指して」と題して講演。家族経営と企業的経営のバランスが重要であると強調し、企業経営への過度な依存にはリスクがあると指摘した。家族経営酪農の意義に関する内容を紹介する。清水池講師は講演の中で、都府県・北海道ともに増加している企業的経営は、購入飼料などの価格変動に脆弱である点を指摘。その対応として、世界的に家族経営の形態に戻る現象があることを紹介。「家族経営は持続的で環境負荷が少なく、農村社会の活力を高めている。そこに新しい存在意義がある」と強調した。

都府県で最も多い成牛飼養頭数の規模階層は「30~49頭」、北海道は「50~79頭」の家族経営。その階層を08年と18年で比較すると、都府県の戸数は45%、北海道は31%減った一方、都府県の「100頭以上」の企業的経営は微増で、北海道は18%増えた。


また、飼養頭数を見ると、戸数の増減率と同様、都府県の家族経営は42%減、北海道は34%減だったが、都府県の企業的経営は16%増、北海道は18%増だった。


その結果、飼養頭数のシェアを見ると、都府県の家族経営は24%に対し、企業的経営は32%と家族経営よりも多くなった。北海道はより顕著で、家族経営の23%に対し、企業的経営は51%と半数以上。つまり、都府県・北海道ともに家族経営が減少し、企業的経営の比重が上昇している。


まず前提として、企業的経営やメガファームを否定しているわけではない。それらの経営は地域の生乳生産の担い手として非常に重要である。そして、家族経営が連合して地域の生乳生産を維持する手段としても重視されている。よって、中小規模の家族経営とメガファームなど多様な性格を持つ担い手が併存する地域農業が理想的である。


しかし、担い手が極端にメガファームに偏ってしまうことの弊害を考えてみると、まずは高コスト体質への懸念がある。全てのメガファームがそうではないが、中小規模の家族経営の方が生乳1㌔当たりの所得は明らかに高い。


購入飼料への依存度高まる


特に、北海道のメガファームにおいては、十勝など主産地は農地が限られている上、省力化を進めるに当たり購入飼料への依存度が高まっている。また、雇用労働力にも依存している。そのため、必ずしも家族経営に比べて低コストではなく、購入飼料への依存が高まることにより、大規模経営ほど価格変動の影響を受けやすい経営になってきている。


そのことは世界的に指摘されている。畜産クラスター事業などを活用し、大規模化を進めれば国際化への対応が可能かといえば、そうではない。


さらに、経営の持続性・安定性の問題もある。特に、畜産クラスター事業など最近は豊富な政策資金の投入により、大規模な投資によるメガファームの設立が相次いでいる。現在は乳価と個体販売価格が高い状態にある。しかし、その価格が下がった時に、安定して負債の償還と減価償却の積立は可能かどうか。


減価償却は可能か?


一つ例を示すと、国が実施した調査によると、北海道のTMRセンターでは、減価償却の積立ができていないところが多い。更新時期が来ても、資金がなければできない。それと同じようなことがメガファームでも起きる可能性がある。個体価格の下落や乳製品関税の撤廃・削減による乳価下落により、「畜産クラスター倒産」といった事態が発生するかもしれない。


極端な例を示すと、50~79頭規模、つまり家族経営規模の場合、個体価格が50%低下すると所得が3割減少、乳価が1㌔当たり20円低下すると、6割減となる。それに対し、100頭以上規模の企業的経営の場合、個体価格50%低下で所得は4割減、乳価20円下落だと赤字に転落してしまうという試算がある。つまり、大規模経営ほど価格変動に対して脆弱性があることになる。


さらに、農村社会学の観点から家族経営体主体の農村と企業経営主体の農村を比較すると、一概には言えないが、家族経営主体の農村の方が1人当たりの平均所得や地域経済・社会活動の活性度が高いという研究報告がある。


国民にとって魅力的な農村とは


また、多様な酪農経営が共存する農村と、外国人実習生の雇用を主体とするメガファームばかりの農村のどちらが持続的で活力が高いか。そして、国民にとってどちらが魅力的な農村なのか。農業政策への支出増を求めるのであれば、国民からその農村がどのように見えるのかを意識する必要がある。


欧州では、家族経営は持続的であり、環境への負荷、経営の安定性にも優れていると認識されている。それこそが現代における家族経営の新しい存在意義である。実際に、企業的経営は価格変動に脆弱なため、元の家族経営のような形式に戻っていく現象が世界的に起きている。

お断り=本記事は2月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「増頭・増産対策、都府県の成牛120頭以下が対象」――1経営当たり60頭上限で

2020-02-01

農水省は1月20日、省内講堂で全国畜産課長会議を開き、20年度当初予算や19年度補正予算等について所管ごとに事業内容を説明。このうち牛乳乳製品課は、後継牛の増頭に1頭当たり27万5千円の奨励金を交付する増頭・増産対策(全体で243億円)の要件に関して、『都府県の成牛120頭以下の飼養規模の経営』を対象に、「1経営体当たり上限60頭(増頭後の頭数は120頭まで)」とする方向で調整中だと説明した。


同事業は畜産クラスター事業計画に基づいて増頭していく取組を支援するもの。一定期間の増頭実績に応じて奨励金の対象となる頭数を決める考えで、自家育成や農協等が貸付する乳牛は対象とせず、原則的には市場を経由した外部導入のみを対象とする。なお、事業の対象期間(期首期末)は現在検討中。


成果目標としては生乳生産量の増加を設定する方針で、支援の重複を避ける観点から、既に畜産クラスター事業の施設整備を活用している生産者は対象外となる。


事業の内容について説明した同課の丹菊直子課長補佐は、都府県の基盤強化に向け「引き続き後継牛をきちんと生産、育成していただき、供用期間の延長等にも取り組んでもらった上で、上乗せとしてこの事業で増頭していただくという仕組みが必要と考えている」と述べた。


一方、夏場の需要期に向けて導入が進むことが見込まれることから「この間の頭数も増頭分として算入できる可能性もあるので、事業を活用したい方が現時点でいれば、市場からの導入価格等を証明できるような書類などを保管しておいていただくよう各県内で周知してほしい」としている。

「畜産クラスター規模要件緩和、都府県平均の8割目安に」――従来要件との選択で調整中

2020-02-01

19年度補正予算でも引き続き実施する畜産クラスター事業では、中小規模・家族経営においても増頭や規模拡大が図れるよう、施設整備事業における規模拡大要件を緩和。1月20日に農水省内で開かれた会合で見直しのポイントなど事業内容を説明した畜産企画課によると、「都府県における総頭数の平均飼養規模の8割」を新たに要件として設ける方針で、地域差を考慮し、従来の要件だった「地域における平均飼養規模」といずれかを選択できるよう調整中。一方、大規模経営は現行の成果目標水準に5%上乗せする方向で検討中としている。


新たな要件は畜産統計における平均飼養頭数に基づくもの。都府県の平均飼養頭数の8割(46.8頭)、北海道は道内の平均飼養頭数の8割(107.4頭)を要件とする方針で、要領上の表記は現在検討中だが、実頭数(経産牛頭数等)で示す方向で調整中。


事業内容を説明した同課の中村輝実課長補佐は、新たな要件のポイントについて「畜産の主産地ではクラスター事業を積極的に活用しているため、増頭規模が事業開始時より増えている。そういった地域の方々が事業に乗りにくいという話があったが、この見直しでより活用の道が広がるのではないか」と述べた。


規模要件の緩和と合わせ、大規模経営は中小規模経営に比べ生産性が高い点などから、成果目標水準の各目標値を現行の10%から15%に引き上げる方針。事業上の定義としては、常時雇用人数が5人以下(家族含まない)、株式会社や持分会社は出資者が常時農業に従事している場合は中小規模とする考えだ。

「関東販連、飲用向、はっ酵乳向、学乳向けの20年度生産者乳価」――据置きで決着へ

2020-02-01

20年度の乳価交渉について、関東生乳販連は昨年末に飲用向け・はっ酵乳等向け・学乳向け乳価を「前年度据え置き」で要請。このほど、主要乳業メーカーと要請通りの据え置きで基本的な合意に至った。今後は中小乳業メーカーとの合意に向けて個別に交渉を進める方針としている。

「2019年度補正予算、1月30日には参議院本会議で可決・成立」

2020-02-01

畜産クラスター事業や乳用牛の増頭・増産対策を盛り込んだ19年度第1次補正予算は1月28日、衆議院本会議で可決。30日には参議院本会議で可決成立した。農林水産関係補正予算は総額5849億円、うち総合的なTPP等関連政策大綱に基づく予算としては3250億円を措置。新規事業のほか、今年度実施の国産チーズの競争力強化対策や環境負荷軽減型酪農経営支援事業(エコ酪事業)などは引き続き実施する。

「都府県の生産基盤強化、予算措置で増頭を支援」――渡邊農水省畜産部長

2020-02-01

全国畜産課長会議の冒頭、農水省の渡邊毅畜産部長は、現在喫緊の課題となっている都府県基盤の弱体化について言及。「依然問題の多い都府県基盤の脆弱化に歯止めをかけ、基盤強化を行うべく、新たに後継牛への増頭奨励金の交付やクラスターの規模拡大要件の緩和などを措置した」として、酪農生産を後押しする事業を19年度補正予算はじめ予算全体で盛り込んだことを説明した。


また、現在議論が進められている新たな酪肉近と家畜改良増殖目標に向け、「生産者を始めとした関係者の意見を踏まえ、基盤強化や担い手の育成、畜産・酪農の課題解決と今後の経営の発展につながるものへと昇華させていけるよう、しっかり取り組んでまいりたい」との姿勢を強調した。

酪農会館建設の経過
全国酪農協会

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