全酪新報/2020年5月20日号

「コロナ追加対策、牛乳等の無償提供支援」――農水省、需給緩和対策を緊急実施

2020-05-20

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生乳需給の大幅な緩和を受け、農水省はこのほど、牛乳等を無償提供する関係団体の取組を支援する「牛乳等消費拡大支援事業」(21億8千万円、ALIC事業)を緊急に実施する。需給調整のための取組を後押しするもので、医療機関や福祉施設、フードバンク、子ども食堂などへの提供が対象。牛乳乳製品課の水野秀信課長は「廃棄乳の発生を防止し、酪農家の意欲を損なわないように講じた。安心して酪農生産を継続してほしい」と述べている。

同事業は、5月8日に要綱を改正した「生乳需給調整緊急支援事業」(5月10日号に一部既報、予算額40億3400万円)の中で実施する。指定団体や県酪連、地域の牛乳普及協会などが乳業メーカーから牛乳や国産生乳を主原料とするはっ酵乳、成分調整牛乳、加工乳を買い上げ、医療機関や児童福祉施設などに無償提供する取組の支援が目的。対象期間は4月27日から6月14日まで。輸送費を除く費用を定額補助(2月の取引価格上限)することで牛乳消費の促進を図る。


実施主体はJミルク。同事業ではこのほか、取組の推進に向けた会議の実施や調査・指導に要する経費も定額で補助する。


これまで酪農乳業分野への新型コロナ対策では、学乳から脱粉等への用途変更に伴う価格差支援をはじめ、バター等の製造により需給調整機能維持に協力する乳業者に対する交付金、酪農家の感染時の営農継続に向けた経費の支援などを措置(表)した。水野課長は本紙など酪農専門紙との懇談の中で、現在の生乳の増産傾向や今年3月末の新たな酪肉近で設定された目標数量780万㌧をふまえ、酪農家には引き続き安定した生乳生産を呼びかけるとともに、5月6日までを対象期間としてきた学乳対策に関しては、現状の影響をふまえて期間を延長する方向で検討していると説明した。


国産牛乳・乳製品の消費拡大をめぐり、農水省は4月21日より国民へ消費促進を呼びかける「プラスワンプロジェクト」をスタート。酪農関係団体も消費促進の協力への呼びかけをはじめ、牛乳飲用の訴求を目的としたPRバナーを作成・配布などの取組を実施。5月7日には酪政連や乳協、中酪など酪農5団体が主要な畜産関係議員に対して子ども食堂や医療関係者へ牛乳等提供する取組への支援を要請するなど、関係者一丸となって消費拡大活動を展開している。


5月14日にJミルクが公表した直近(5月4日週)の需給短信では、量販店などでの牛乳類の売り上げ(販売個数)は前年比で15.9%増、うち牛乳は18.8%増。4月末よりはやや落ち着いているが、依然堅調な消費が続いている。

お断り=本記事は5月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「第15回全共、今年度開催見送り」――新型コロナ影響、延期等は今後、実行委と協議

2020-05-20

新型コロナウイルスの感染が拡大する状況をふまえ、日本ホルスタイン登録協会は5月13日の理事会で、今年10月末から3日間を予定していた「第15回全日本ホルスタイン共進会九州・沖縄ブロック大会」の今年度開催の中止を決定した。開催の延期等については、引き続き全共実行委員会と協議を重ね、早期の決定を目指すとしている。

「2019年度末の脱粉・バター在庫高水準」――5月の輸入判断は慎重に検討

2020-05-20

5月13日に牛乳乳製品課が取りまとめた2019年度需給によると、同年度末の脱脂粉乳・バターの在庫量は、脱粉約7万6300㌧(前年度比16.3%増)、バター2万8800㌧(21.7%増)。生産量が増加傾向で推移するなか、新型コロナウイルスの影響を受けて3月は大きく増加した。牛乳乳製品課の水野秀信課長は専門紙との懇談の中で、業務用需要の減退により在庫水準が積みあがっている状況をふまえた上で「バターは業務用と現在伸びている家庭用のバランスを見て対応。脱粉については生乳需給改善促進事業等の活用により1万㌧強在庫が軽くなる」と述べるとともに、追加輸入の判断については「データを見て慎重に検討していく」との意向を示した。


19年度の乳製品生産量は、脱粉13万500㌧(対前年度8.7%増)で、バターは6万5500㌧(9.5%増)。消費量を見ると、脱粉12万7900㌧(6.8%減)、バター8万1900㌧(5.1%増)で、結果として年度末在庫は高水準だった。

「中酪、2020年度生乳出荷目標、全国で2.8%増産目指す」

2020-05-20

中央酪農会議は5月11日、2020年度の生乳需給安定化対策に係る生乳出荷目標数量を発表した。それによると、全国の生乳出荷目標数量は計718万8577㌧で、前年度比2.8%増を目指すとしている。


一方で、新型コロナウイルスの感染拡大を起因とする業務用需要の大幅な減退により、脱脂粉乳等の在庫が積みあがっている現状もあり、需給緩和時に向けた対策に関しても喫緊の課題となっている。


地域別にみると、北海道は412万6417㌧で前年度比5.0%増を目標に設定。他方で都府県は中国2.8%、四国1.8%、九州1.1%とそれぞれ増産を目指すとしているものの、全体では306万2160㌧、0.2%減を目標に定めた。


同数量は、2018年度より施行の新たな補給金制度に基づき、各指定団体が取りまとめた年間販売計画の総量を全国ベースでの出荷目標数量として設定している。前年度と基本的な枠組みに変更はない。

「緊急事態宣言39県を解除」――江藤農相「必要な対策、2次補正で」

2020-05-20

政府は5月14日、新型コロナウイルスの影響を受けて発出していた緊急事態宣言について、8都道府県を除く39県を対象区域から解除することを決めた。今後、政府は社会経済活動の本格再開に向けて第2次補正予算の編成を早急に進める考えで、5月27日を目途に概算決定を行い、今国会での成立を目指す方針。予算編成にあたり、江藤拓農相は15日の定例会見の中で、第1次補正予算の不足分を2次補正で講じるべく、必要な対策を確保していく姿勢を強調した。


会見で江藤農相は、4月に講じた1次補正予算について「現場の意見を十分に取り入れ、しっかりとしたものを編成させていただいたと思っている」と述べた上で、2次補正予算の編成に向け「それから時間軸も大分進み、現場の状況や要望、事態の深刻度も大きく変化したと理解している。1次補正の内容をしっかり周知するとともに、足らない部分を今回の2次補正でしっかりと要求していきたい」との意向を示した。


なお、宣言の対象区域として北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県は継続。これまで同様、8都道府県については外出自粛等のまん延防止に向けた取組の実施を求めるとともに、解除された39県についても、引き続きの手洗いやマスクの着用、3密回避などの基本的な感染対策を呼びかけている。

「酪農女性等が牛乳消費喚起飲用呼びかける動画配信」――農水省

2020-05-20

農水省は5月1日、新型コロナの影響を受ける牛乳乳製品のさらなる消費促進に向け、牛乳乳製品課の女性職員や神奈川・片倉牧場の松本七海さんなど、酪農女性が消費を呼びかけるPRポスターを作成し、省内に掲示した(画像)。農水省が進める農林水産業の魅力発信を目的としたYouTubeチャンネル「BAZZ MAFF」と、もう一杯の牛乳飲用を推進する「プラスワンプロジェクト」をコラボしたもの。4月30日には合わせて、牛乳の飲用を訴える動画を同チャンネルの中で配信した。


BAZZ MAFFではこのほか、牛乳の消費拡大に向け、北海道農政事務所や東海・九州の各農政局の職員が牛乳・乳製品消費の協力を求める動画を公開中。


農水省以外でも、関係団体や酪農学園大学付属・とわの森三愛高校(北海道・江別市)が動画を活用して牛乳の消費を呼びかけるなど、官民の枠を超えた運動が行われている。

「まきばの四季」① 酪農家・佐藤博久(秋田県鹿角市)

2020-05-20 まきばの四季_1

秋田県鹿角市の佐藤博久さん(69歳)に牧場の四季を写真とエッセイで紹介していただきます。佐藤牧場は県北部の高原(標高512㍍)で冬は季節風、夏はヤマセ等気象条件の厳しい地域にあります。しかしその分、牧場周辺の四季の変化は豊かとも言え、写真が趣味の佐藤さんは仕事中も常にカメラを持ち歩き、その様子をブログで紹介しています。


北国の春は遅い。桜の花が満開の所もあるが当牧場は残雪がこんな感じに(4月4日撮影)。当地は冬が長いから春はほんとうに待ち遠しい。4月始めにこの文を書いているが掲載される頃にはコロナウイルスの災禍はどうなっているだろう。日々の日本の様子、私たち酪農家の暮らしにはどんな影響があるのだろう。経験が無いことで困難さは想像もつかないし、心配ごとは尽きない…。


春になると思い出す。十数年前まで我が家では放牧をしていた。その時期になると牛たちは窓から入り込む春風、外気の匂いに春を感じ、外に出たいと鳴き出したものだ。


牛は自分の居場所が決まっていて、パドックから牛舎に入るときは年功序列で若い初産は一番後から入る。先に入るオバちゃん牛達は経験から自分の場所を知っているので、最後に入ってくる初産牛に空いた居場所を教えるのには一週間ほどで済んだ。毎年、初夏から秋の初産牛もスムーズに馴れていった。


ある年のこと。乳房が張り動きが鈍いオバちゃん牛の隊列の脇を身軽で動きの早い初産が小走りして牛舎へ。そして少しずつ並べられている餌を片端から食べ始めた!


取り敢えず一度シャッターを閉めてその牛を誘導し終えて、あらためてシャッターを開けると今度は外で待っていた牛が一気に中へ。大混乱した。


数日後、今度は若いほかの初産達も真似て序列を抜けて一斉に牛舎へ(牛も見ているのだね)。その対応に毎日がパニックに。それでも牛たちもいつかは馴れるだろうとそう思って根気強く小分けして出し入れして放牧していた。そんなある日ふと気づいた。「これでは牛に使われている」と。


その翌日から放牧をやめて牛舎で乾草を腹一杯食わせることにした。


(編集部から=全酪新報5月1日号に掲載したものです)

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