全酪新報/2022年1月20日号
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「フリーストールなど、道内の普及は3割、搾乳ロボット10年で約3倍」――新搾乳システム普及状況・北海道農政部調べ

2022-01-20

北海道農政部はこのほど、北海道における新搾乳システムの普及状況(フリ・パラ調査、2021年2月1日現在)を取りまとめた。道内では、ミルキングパーラー(搾乳ロボット含む)やフリーストール牛舎を導入している酪農家は1579戸で前年に比べ1戸増。普及率は30.3%となっている。一方、搾乳ロボットの導入数は430戸で48戸増。搾乳ロボット導入は年々増加傾向で、2011年2月時点の127戸と比べると10年間で約3倍にまで拡大しており、最も導入の多い十勝とそれに次ぐ根室では3桁を超えている。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

お断り=本記事は1月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「代替飼料の共同購入に1㌔5円」――暑熱要因の飼料不足を支援・2022年度関連対策

2022-01-20

昨年12月末に決定した2022年度の酪農関連対策(ALIC事業)では、「酪農経営支援総合対策事業」に今年度同額の45億6600万円を計上。生産基盤強化等の既存メニューに加え、22年度は暑熱等による牧草などの自給飼料不足対策として、輸入や他地域からの乾牧草購入など代替飼料の共同購入に1㌔当たり5円支援する。


同メニューは、昨年の自民党・畜酪対策委員会が実施した北海道の酪農関係者との意見交換を受けて拡充を決めた。昨年12月24日の記者会見で同メニューの拡充について説明した農水省は「昨夏の少雨などで不作となった地域で自給飼料生産を行う酪農家へ、その減少分支援を行う。今年度発生した災害への支援のため、今年度から実施したい」としている。


また、酪農ヘルパー対策では、ヘルパーの待遇改善支援について、奨励金(1人当たり月額最大3万円)の交付期間を1年間延長。2年目には1年目に当たる1.5万円を追加で交付する方針。


このほか、家畜排せつ物処理施設の長寿命化に向けた簡易な堆肥舎の整備などを支援する堆肥舎等長寿命化推進事業なども継続実施する。

「春先も年末年始同様に対応を」――金子農相が消費呼びかけ

2022-01-20

年末年始の処理不可能乳発生は回避できた一方、依然として今年度末と春先にもその発生が危惧されている。金子原二郎農相は1月14日の定例会見で「従来と同じ、年末年始と同じように消費拡大を呼びかけていくしかない」との考え方を強調。その上で「春休みの休校中は日量約2千㌧の牛乳が余るため、より多くの方に消費していただけるよう努力したい。そうした運動の展開が必要だ」と述べ、現在進行中の新型コロナ第6波の動向も踏まえ、一層の消費拡大を呼びかけた。

「日本酪農の勢力」 ~21年畜産統計を基礎として~ 最終回『過去を振り返る』 畜産・飼料調査所「御影庵」主宰・阿部 亮

2022-01-20

はじめに


このシリーズの原稿を書く傍ら、夏目漱石の文明論集を読んでいたら、彼は明治39年に大略、以下のようなことを言っているのに出会った。「毎日鏡を見ている人は昨日の自分と今日の自分は同じだと思い、今日の自分は明日の自分と同じと思ってしまう。時代の認識も同じようなもので、今年は昨年と似ており、来年もそうだろうという感覚でいる。しかし、明治40年になって、明治元年を回顧した時に始めて、その変化の大きいことに驚く。俗人はこのことを知らない。今日をもって明日を律せんとする。月日は留まらない思想も刻々と変化することを覚らない」と。そこで、俗人たる者として、最後に日本酪農の戦後75年を振り返りたい。どこかに何か温故知新があるかもしれない。テーマとしては、「政策」と「飼料給与」を選んだ。


1.政策


戦後の酪農のスタートを1946年(昭和21年)に見よう。戸数は4万8502戸、飼養頭数は約15万5千頭から始まっている。経産牛1頭当たりの乳量は1215㌔㌘とある。翌47年、畜産振興5カ年計画が決定され、有畜農業の推進に向かう。52年の目標値を生乳生産量で52万㌧、乳牛頭数で27万頭とした。50年には家畜改良増殖法が制定され、乳牛の人工授精の普及が加速する。52年になると、酪農勢力の更なる増強のために、畜産振興5カ年計画は延長され、有畜農家創設要項が決定されている。


その規模は北海道が3~5㌶層で大家畜が2頭以上、東北の1~2㌶層で大家畜を1頭以上というものだった。53~60年の間で回帰分析をすると、この間、毎年、3万1千戸の割合で酪農家が増えている。55年には世界銀行の融資により北海道根釧原野にパイロットファームの建設が始まり、64年迄に361戸が入植している。61年にはその後の農業政策の基礎となる農業基本法が制定され、畜産は選択的拡大部門と位置けられる。


63年には乳牛飼養農家戸数が41万8千戸とピ-クとなる。今の30倍の数である。酪農家は面的な拡がりを持っていた。しかし、生乳生産量の急激な伸びから乳製品価格が下落し、乳業メーカーは1.8㍑(1升)当たり2円の乳価の引き下げを酪農家に通告したために乳価闘争が起こっている。63年の1戸当たり飼養頭数は平均2.7頭で、耕種農業の中における複合的な生産の一翼をになっていた。けれどもそれ以降、飼養戸数は減少し、次第に専業化、規模を拡大し現在に至っている。


65年には、加工原料乳生産者補給金暫定処置法(不足払い法)が制定されている。その後、74年、ソ連がアメリカから大量のトウモロコシを輸入し、シカゴ相場の急騰によって国内の配合飼料価格が高騰するいわゆる畜産の危機に見舞われる。この時に、飼料穀物の備蓄制度が始まると同時に、現在もセーフティネットとして機能している配合飼料価格安定制度が整備されている。


下って、87年には乳脂率の取引基準が3.2%から3.5%に引き上げられている。1999年(平成11年)には家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進(家畜排泄物法)が制定されている。


近年の大きな出来事としては、自由貿易協定への参加を挙げねばならない。2018年12月30日発効のTPP11、19年2月1日発効の日欧EPA、20年1月1日発効の日米貿易協定がある。そして、20年3月には30年度を目標とする「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」(酪肉近)が制定されている。そこでは、乳牛飼養頭数を132.4万頭(21年が135.6万頭)と現状維持~微減とし、生乳生産量は780万トン(20年が743万トン)と5%増の計画である。


2.飼料給与


酪農が専業化し、次第に飼養頭数が増加する中での課題の一つに、年間を通しての粗飼料の平衡給与があった。春には牧草の青刈り給与、夏~秋にはトウモロシやエン麦、麦類の青刈り給与を行っていたが、冬場の粗飼料で難儀をしていた。それを解消したのが春作牧草と、夏作トウモロコシ・ソルガムからの通年サイレージ給与方式であった。1965年代中後半から普及し始め、75年頃には全国に広まる。その流れに沿って、全国の飼料作物の栽培面積は1965年の約51万㌶が85年には約102万㌶へと増加する。


しかし、それが90年をピークに減少に転ずる。特に都府県の減少率が高い。90年との対比で2020年を見ると、北海道は3.6%の減少だが、都府県は15.8%。この間、都府県の1戸当たり飼養頭数は増加している。粗飼料はどうしているか。前回も書いたが輸入乾草に頼ってきている。以前に筆者が調査した地域でも、通年サイレージ給与システムを維持しなくなった酪農家が一定数いた。通年サイレージ給与が盛んに行われていた頃、1975年の乾草輸入量は4万㌧程度であったが、2020年は約202万㌧となる。


それには大きく2つの理由がある。一つは1987年の乳脂率取引基準の改定。これによって、都府県酪農家の飼槽からイネワラが消え、輸入乾草に置き換わったこと。もう一つは、85年のプラザ合意。それによって円高が進み、安く乾草が輸入できるようになった。イネワラを置き変える以上の量の乾草給与が、電話1本で省力的に出来る時代が到来した。


次に濃厚飼料について見てみよう。乳牛用配合飼料原料構成を62年に見ると、フスマや脱脂米ぬか等のヌカ類、デンプン粕が38.9%と主役で、トウモロコシは9.6%でしかなかった。しかし、時が進むにつれてトウモロコシの配合割合が20%、30%と高くなり2020年度では44.0%と主役に。19年度、乳牛用配合飼料の生産量は303万5千㌧だが、トウモロコシは133万5千㌧使われている。


トウモロコシ無しには高泌乳牛の飼養は出来ないと言ってよい。配合飼料に使われるトウモロコシの全ては輸入である。それ故に、トウモロコシの輸入価格が日本の酪農経営に大きな影響を及ぼしている。トウモロコシの輸入価格はシカゴ相場、海上運賃(原油価格)、為替相場によって変動する。過去に「ソ連の大量買い付け」「米国の熱波・干ばつ」「米国の春の長雨」「バイオエタノール仕向け量の拡大」「米国の期末在庫減少」「港湾ストライキ」「中国の需要増加」等々に酪農家は振り回されてきた。こういったことはこれからもあり得る。世界の気象変動や灌漑用地下水の問題により、今まで以上の頻度で小中大難に見舞われることを覚悟しておかなければならない。何らかの方法で緩衝能を付けておく、それがこれから先の大課題である。(おわり)

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