全酪新報/2025年8月1日号
(2025年8月10日 合併号)
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「全国の酪農家戸数600戸減、23年より毎年5%以上の離農続く」――畜産統計2月現在
農水省がこのほど公表した25年2月1日現在の畜産統計によると、全国の酪農家戸数は1万1300戸で、前年に比べ600戸、5.0%減。コスト急騰等を背景に、23年より毎年5%以上もの酪農家が離農している状況が続く。全体の飼養頭数も減少が続く一方、1戸当たり平均飼養頭数は増加傾向で推移している。-詳細は全酪新報にてご覧ください-


お断り=本記事は8月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「乳製品製造会社『らくのう乳業株式会社』を新設へ、全農、東北・関東生乳販連との共同出資」――全酪連
全酪連は全農、東北生乳販連、関東生乳販連との共同出資により福島県郡山市に新たな乳製品製造会社「らくのう乳業株式会社」を今年10月1日に設立することで4者が合意したと発表した。事業内容は脱脂粉乳、バター、生クリーム等の製造・販売。新工場の設立により、引き続き関係者が連携して生乳需給調整機能を強化し、生産者の年間を通じた安定的な生産環境を整備するとともに、将来にわたり酪農生産基盤を支える。2028年12月より生産開始予定としている。
新工場の建設場所は酪王協同乳業㈱郡山工場跡地。事業費は約164億円、資本金は19億2千万円(全農と全酪連が49.5%、東北販連と関東販連が0.5%)。処理能力は最大1日当たり400㌧、最大貯乳量1千㌧。新工場完成後には、全酪連北福岡工場での生産を中止し、製造機能を移管する。
「ランピースキン病対応強化、法定伝染病並みへ」――政令施行7月28日、1年間の措置
農水省は7月28日、牛の届出伝染病・ランピースキン病に関して、家畜伝染病予防法に基づき新たな政令を施行。来年7月27日までの1年間、都道府県知事の判断による殺処分命令が可能となり、法定伝染病(家畜伝染病)並みの措置を講じることが可能になった。これに伴い、「ランピースキン病防疫対策要領」の一部を同日付で改正し、都道府県へ通知。今後の発生にも備え、まん延防止に向けた対応を強化した。
ランピースキン病はサシバエ、蚊などの吸血昆虫(ベクター)が媒介するウイルスによる牛の病気で、皮膚の結節や水腫、発熱症状等を呈し、乳量が大幅に低下するなど経済的被害が大きい。
24年11月以降、福岡県(19農場)と熊本県(3農場)で発生したが、媒介するサシバエ対策など、関係者の防疫対策により、12月26日の事例を最後に国内での発生は報告されていない。
家畜伝染病予防法上、ランピースキン病は届出伝染病であったことから、従来のまん延防止対策としては自主淘汰などに法的拘束力がなく、前回発生時に十分なまん延防止措置を行えなかった。
こうした状況を受け、本年3月より農水省の食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会において対策強化に向けて検討がなされ、法定伝染病と同程度の防疫措置を行えるよう今回政令が施行された。これにより、患畜(ウイルスが分離された牛)、疑似患畜(遺伝子検査で陽性となった牛)は都道府県の判断で殺処分が可能となった。殺処分にあたっては患畜には評価額の3分の1、疑似患畜には評価額の5分の4が手当金として交付される。
「国、全酪連の防疫支援に謝意」――ふくおか県酪・中島組合長
ふくおか県酪農業協同組合の中島清組合長は、昨年ランピースキン病が発生した際、その対応に全酪連をはじめとする関係者の協力がきわめて大きかったと謝意を表した。7月24日に開かれた全酪連総会で、議長を務めた際の挨拶で述べた。
中島組合長は国の対応について「我が国初の発生であり、発症牛の取り扱い、ワクチン接種、防疫対応など当初は大きな混乱があったが、農水省の殺処分牛に対する再導入の助成措置や大きな懸念事項であったワクチン接種牛の対米輸出問題の早期解決にご尽力いただき、心より深く感謝申し上げる」と話した。
また、全酪連福岡支所からも強力な支援があったことを報告。「対米輸出問題で発生農場から半径20㌔圏内の農場からの家畜市場への出荷が自粛され、子牛の大量滞留という課題にいち早く哺乳支援を提供いただくとともに、受入先の確保に向け各方面に働きかけていただいた。さらに、福岡支所が事務局を務める九州・沖縄地区酪農団体協議会は防疫及び防除対策、特にサシバエ対策に関するウェブ研修会を九州・沖縄各県の関係者間で開催。研修会を契機に本県ではサシバエ対策として、組合員全戸に対しハエ幼虫駆除剤の配布及び散布を本年3月に実施。福岡支所からは散布に必要なハエ駆除剤の提供と人員を派遣いただき、本病解決へ共に歩んでいただいたことは心強く、諸問題に対し前向きに対処する原動力となった。これもひとえに、酪農に関わる関係各位のご指導とご鞭撻の賜物であり厚く御礼申し上げる。あわせて、隈部会長が常に言う『酪農に寄り添った組織』を全酪連が実践されていることに敬意を表するとともに、ご心配をおかけした全国の酪農関係者に心より感謝申し上げる」と謝意を述べた。
「髙木大輔さん(熊本県)に農林水産大臣賞、意見・体験最優秀賞は椎谷美保さん(福島県)」――第52回全国酪農青年女性酪農発表大会
第52回全国酪農青年女性酪農発表大会が7月17日~18日、岡山市のホテルグランヴィア岡山で開かれ、各地域会議の代表者11名が発表。酪農経営発表の部の最優秀賞・農林水産大臣賞には髙木大輔さん(熊本県和水町)、酪農意見・体験発表の部の最優秀賞には椎谷美保さん(福島県二本松市)が選ばれた。全国酪農青年女性会議と全酪連の共催。このほか、審査員特別賞として酪農意見・体験発表の部の古川真弓さん(佐賀県武雄市)が選ばれた。当日は全国から酪友464名が一堂に会し、大会は大いに盛り上がった。
受賞を受けて髙木さんは「これまで頑張ってきたことが評価されて良かった。発表を通して自身の経営に振り返ることも出来た。これからも努力を続けていきたい」と意気込みを示した。
また、椎谷さんは「牛には健康で幸せに過ごしてほしい、うちの牧場に生まれて良かったと思ってもらえるよう取り組んだ。その結果、牛が喜んでいるように見えたり、楽しそうにしている姿が嬉しくなり、この良い循環が生産性にもつながった」と振り返った。
開会にあたり、全国会議の中村俊介委員長は「苦しい経営が続くなか、少しずつ乳価が上がってきたが、牛乳の店頭価格も上がり、消費者も困っている。今こそ酪農理解醸成活動が本当に重要だ。牛乳をバルクに入れれば終わりではなく、その後のことも考えなければいけない時代だ。牛乳の価値を消費者に広め、一杯でも多く牛乳を飲んでいただく活動を行っていかなければいけない。厳しい酪農情勢の中でも素晴らしい経営を行っている発表が聞けると思うので、それを持ち帰り、明日からの経営に繋げてほしい」と話した。(右:中村委員長)
続いて、全酪連の隈部洋会長があいさつ。「発表を聞くことで、経営者は自身の経営を見直すことができ、組合職員は経営について学ぶことができる。そして、会場に集まった酪友の気持ちが高まることがこの大会の大きな目的で、将来の酪農を支える組織のリーダーを育てるという目的もある。仕事をする上で大切なのはネガティブになってはいけない。同じ仕事をするのであれば、ポジティブに考えること。前向きに取り組むことで、経営は上向きになっていく。問題をひとつずつ解決していけば必ず利益は出る」と話した。(右:隈部会長)
また、世界の酪農状勢に言及。「昨年フランスで開催されたワールドデイリーサミットで世界の酪農家と意見交換したが、環境問題や後継者問題など課題は共通していた。今後アジア圏の消費は伸びて生乳が不足するといわれている。国内消費量1176万㌧のうち730万㌧が国内生産であり、国産を使っていく環境作りが大切だ。必ず明るい世界が酪農には来る。絶対に酪農は潰れないので、日本の安全安心な生乳生産に自信を持って搾ってほしい。段々と明るい兆しも見えてきた。とにかくポジティブに考え一緒に頑張ろう」と呼びかけた。

全国から464名の酪友が参加した

表彰を受ける髙木さん









