牛乳乳製品に関するニュース
「牛乳の摂取が長寿を伸ばす」「牛乳はメタボ予防の可能性」「乳糖不耐症には少量ずつ摂取を」―日本酪農科学会で3人の研究者が報告
全国の酪農・乳製品研究者で構成する日本酪農科学会は6月13日、名古屋市内で牛乳市民講座を開いた。①名古屋大学の松田幹教授②京都光華女子大学の廣田孝子教授③人間総合科学大学の柴田博教授――の3氏が講演し、牛乳乳製品に対する消費者などの疑問点に対して科学的な視点から報告し答えた。
まず、「ミルクの化学、生物学、栄養学」と題した講演で、松田教授は、乳糖不耐症について、乳糖を一度に30㌘(牛乳200㍉㍑中に乳糖は10㍉㌘)を摂取しても不調を訴える人はごくわずかだった調査例を紹介。「気になる人には、少量ずつ分けて飲む習慣をつける。乳糖の少ない乳飲料を飲むなどの対応がある」とアドバイスした。
また、(新谷弘実医師などによる一部書籍で)「牛乳は子牛が飲むもので、人が飲むものではない」と主張していることには「牛乳・卵・植物の種子(胚乳)の共通点は次世代の栄養分となるところ。その主張が仮に正しいとすれば、卵や植物も人が食べるものではなくなる」と指摘。「牛乳乳製品はコンパクトで栄養バランスが良く、毎日の食生活の中で適量を摂るのに有効な食品である」と結論づけた。
続いて廣田教授は男子学生35名を対象に4カ月間、①牛乳を毎日200㍉㍑摂取する(19名)②牛乳を摂取しない(16名)――の2群に分けて、牛乳摂取と内臓脂肪性症候群(メタボリックシンドローム)の関係性を検証した結果を報告した。その結果、体重変動には差が見られなかったが、メタボリックシンドロームの危険因子(腹囲、血圧、血糖値等)が①群で平均15項目から7項目まで減少した。これに対して②群では、12項目から10項目までの減少にとどまった。同様に女子学生40名を①牛乳を毎日200㍉㍑摂取する(22名)②牛乳を摂取しない(18名)――の2群に分けて検証したところ、体重はともに1㌔㌘程度減少したが、①群では体脂肪の大幅な減少と筋肉量の増加が見られたことを明らかにした。
廣田教授はこれらの検証結果から「牛乳には体脂肪の減少を促し、筋量を増加させる効果が見られる。コレステロール値にも変化はなく、メタボリックシンドローム予防の可能性がある食品」との考えを示した。
一方、柴田教授は「医学・疫学の観点から米を主食とする食生活に牛乳乳製品が加わったことで国民の平均寿命が大きく伸びた」と報告した。日本人の平均寿命が40歳半ばと短命であった1920年代当時、1日の一般的な食事は、米が6~7杯に対して味噌汁が1杯、魚が一切れ。摂取カロリーのうち米が6~7割を占めていた。しかし、70年代を過ぎ、肉、乳製品など動物性タンパク質と米の摂取割合が並んだが、同時期、日本は世界に誇る長寿国と呼ばれるまでになっているとした。
その理由の一つに柴田教授が指摘したのが動物性タンパク質の摂取量の増加に伴い、60年代後半より当時の一番の死亡原因であった脳血管疾患(脳卒中)が減少している事実。脳血管疾患は、血管が破れる場合(脳出血)と詰まる場合(脳梗塞)に大別できるが「日本人の脳梗塞は塩分の多量摂取や高血圧、動物性タンパク質の摂取が少なく、血中タンパク質(アルブミン)の不足、血清総コレステロール値の低い人に多い」と説明する。
また、柴田教授らは96年より4年間、65歳以上の高齢者に対して牛乳を毎日飲用するように習慣づけたところ①血清総コレステロール値の調整的な上昇②血圧の減少③血中アルブミン濃度の上昇――などの結果が見られた。高齢者における牛乳摂取が余命の延ばすことに大きく貢献することを強調した。
なお、牛乳市民講座は今後、来年の1月22日に大阪・北区中ノ島の大阪市中央公会堂、2月11日に東京・有楽町の朝日ホールで開催される。