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タンパク質不足の高齢者は老化の進行を早める―牛乳はバランスの良いタンパク質が豊富・Jミルクがセミナー

2011-03-03

高齢者の健康と栄養研究の第一人者である柴田博教授(人間総合科学大学大学院/日本応用老年学会理事長)は2月8日、東京都内で開催された(社)日本酪農乳業協会のミルクセミナーで、高齢者の低栄養、特にタンパク質不足は生活機能の低下をもたらし、老化の進行を早めることに繋がると指摘。良質タンパク質である牛乳・乳製品の効果や摂取法など元気で長生きするポイントについて講演した。


超高齢化社会を迎える中で、柴田教授は「高齢者のタンパク質不足に潜むリスク」と題して日本で高齢者の低栄養が増加していることに警鐘を鳴らす。しかも、特異なのは開発途上国型と同じタイプのエネルギーやタンパク質が不足している低栄養が多いことだ。


低栄養になると老化の進行が加速する。日本人男性の60~69歳以上のヤセ型割合は1987年(昭和62年)の7.2%(女性18.6%)から09年の12.3%(同22.3%)へと増加している。65歳以上の高齢者のBMI(肥満度)分布調査でも75歳を過ぎると男女とも肥満者が減って低体重者(ヤセ)が増加する。


高齢者が低栄養になった時の危険性(リスク)について柴田教授は「免疫力が低下し、筋肉の減少、骨が弱まるなどの体力が低下。その結果、インフルエンザや風邪からの肺炎や寝たきりの褥瘡等の感染症へと罹患しやすくなる」ことを挙げる。


また、「骨粗しょう症による転倒や骨折は日常生活を不便にし、精神的に引きこもりとなる。病気やケガ等で動けない状態が続くと、活力が失われ老化の進行が早まることが知られている」と説明する。


高齢者が低栄養状態に陥る原因は①食事量の減少(加齢による食欲の減退や嗜好の変化、摂食や嚥下機能の低下、味覚や消化機能の低下)②環境的な問題(1人暮らしでメニューの単純化、調理作業の手抜きや買い物に行きにくいこと)③経済的な問題(収入減少により食品購入の節約)④ストレスや精神的な要因(各種の疾患を患っているもある)⑤間違った認識やフードファデイズム(例えば「粗食が身体に良い」と信じたり、「健康に良いと特定の食品」のみを重点的に摂取するなど誤った食生活)――などと指摘。


また、「きちんと食べていても、栄養的にバランス良く食べないと低栄養になることもあるので注意すべきだ。摂取タンパク質として動物性と植物性があるが人間の身体への有効性では動物性タンパク質(牛乳、卵、肉、魚)が植物性タンパク質(大豆、精白米、小麦粉)より遥かに優れており、アミノ酸スコアでは植物タンパク質は全てを満たさないが、動物タンパク質のアミノ酸の割合は全てを満たしている」と牛乳等の動物性タンパク質の栄養的な優位性を指摘した。さらに100歳以上の長寿者の食生活調査では、長寿の男女とも動物性タンパク質の摂取割合は日本人の平均割合より高いことが判明したと柴田教授。


長寿とタンパク質の摂取量は関係があり、日本人の1人1日当たりの動物性と植物性タンパク質の摂取割合は1980年代に動物性タンパク質の割合が多くなり逆転。柴田教授は「動物性タンパク質の摂取割合の増加は、脳血管疾患による死亡率の低下とも相関し、全体的な寿命年齢が延びている」と述べた。


具体的には高齢者の健康状況の追跡調査では、栄養・健康状態や老化の指標として、アルブミン数値等(血清アルブミン・グロブリン比)の重要性を説明。「数値のレベルで健康程度の予測が可能となった」として、アルブミンの低下は肝疾患、腎疾患、低栄養が疑われ、抗生物質が効かなくなったりする。「正常値は1デシリットル当たり4.0~5.0㌘で、それ以下は栄養の偏たりや疾病の疑いがある」とした。


そのうえで柴田教授は牛乳・乳製品の摂取効果について、「牛乳を飲む習慣と生存率の関係を調査。高齢者で毎日牛乳を飲む習慣の方の生存率が高いことも判明している。また、70歳時の牛乳飲用とその後の身長の減少を調査したところ牛乳を飲む高齢者は飲用しない高齢者より身長が減少しないデータも。手軽に栄養分が摂れる食品として牛乳・乳製品は1日に牛乳200㍉㍑またはチーズ35㌘。乳糖不耐症の方は3回に分けて呑むと良い。牛乳は加熱しても栄養分の変化は少ないためスープやカフェオレなど幅広いメニーで利用できる。しかも、(脂溶性)ビタミン類は脂肪分に含有されるため、できるだけ無調整牛乳の飲用利用が望ましい」と述べた。

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