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全酪新報/2024年11月10号
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「都府県の生乳生産量1.1%減少」2024年度上期――北海道は1.2%増と好調
10月28日公表の牛乳乳製品統計によると、2024年度上期(4~9月、速報値)の生乳生産量は368万4716㌧で前年同期比0.2%増加した。23年度上期は例年以上に進行した酪農家の離農や記録的な猛暑等で生乳生産が落ち込んだ一方、今期は都府県が1.1%減、北海道の生産が好調で1.2%増。全体では微増となった。需要面では、はっ酵乳は伸長したが牛乳は低迷が続いている。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は11月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「脱脂粉乳5万㌧以下、バターは前年並み」――乳製品在庫量・9月末時点
9月末時点の乳製品在庫量は、脱脂粉乳が4万9013㌧で前年同月比16.4%減、バターが2万6040㌧で0.1%増。バターは実需者から国産の引き合いも強く、12月の最需要期に向けて前年並みを確保している状況。脱粉も関係者の在庫削減等の取り組みによって5万㌧以下の在庫水準を維持している。
一方、農水省がこのほど公表した9月分の牛乳乳製品統計をみると、9月は飲用の最需要期にもかかわらず、脱粉は19.3%増、バターは26.3%増と大きく前年同月の生産量を上回っている。特に脱粉については、引き続き業界一体で需要拡大などの対策に取り組んでいく必要がある。
「村上秀一さん(熊本酪農協)グランドチャンピオン受賞、ET黒毛和種1㌔3720円」――第40回らくのうマザーズ枝肉共励会
熊本県酪農業協同組合連合会(隈部洋代表理事会長)は10月25日、菊池市七城町の㈱熊本畜産流通センター内で「第40回らくのうマザーズ枝肉共励会」を開催した。今回出品された枝肉は、乳用種の部36頭、交雑種の部8頭、黒毛和種の部6頭の計50頭。審査の結果、グランドチャンピオン(以下GC)に熊本酪農協の村上秀一さん出品の黒毛和種(ET、肉質等級A-5)が輝いた。表彰式後には購買者22社による競りが行われ、このうちGCは白熱した競りの末に1㌔当たり3720円の高値で競り落とされた。競りには酪農家や購買者など計150名が参加した。
共励会の冒頭、主催者あいさつした隈部会長は、1983年の初開催以降、同共励会が口蹄疫やBSEを乗り越えながら今年で第40回を迎えるとともに、今年が県酪連創立70周年、らくのう牛乳販売50周年を迎える節目の年だと紹介。その上で「今年は酷暑だったにもかかわらず、優れた飼養管理技術により素晴らしい牛肉を作り上げたことに敬意を表したい。ぜひ購買者の方々には、酪農家がニコっとするような値段で落札してほしい」と呼びかけた。
共励会には関係団体から多くの来賓が出席。そのうち、全酪連福岡支所の坂本敬太郎支所長は来賓あいさつで、入賞者へ祝辞を述べた上で「本日出品された酪農家の方々のように、生乳生産のみならず肥育事業にも取り組まれていることが、国民の食を守ることにも繋がっているということを国や消費者へ訴えていかなければならない」と強調した。
競りに先立ち、GCを受賞した村上さんは出品者を代表して「厳しい酪農情勢のなか、酪農は生乳生産を基盤としつつ肉資源の生産も担っている。安全で安心な牛肉生産を進め、この食肉事業を確固たるものにしたい。本日出品の枝肉は、日頃より私達生産者が丹精込めて育てた牛達。活発な競りが行われるようお願いしたい」と呼びかけた。
左から隈部会長、村上さんと購買者(㈱マルイチ食品)
GCの枝肉断面(熊本県酪連提供)
「担い手や農地等の課題を議論、集約化した飼料産地の育成必要」――食料・農業・農村政策審議会企画部会
新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向け、検討を進めている食料・農業・農村政策審議会企画部会は11月6日、省内で会合を開き、食料供給に関わる農地や人、技術をテーマに議論。会合では、農水省が飼料作物など4品目の現状分析や克服すべき課題、検討の視点を報告。飼料作物に関しては、地域計画に基づき集約化した飼料産地の育成、青刈りとうもろこしや牧草等について栄養価や省力化も含め、ニーズに合った品質・数量の生産を図る必要があると示した(表)。
飼料作物の作付面積は減少傾向で推移している一方、青刈りとうもろこしの作付面積は近年微増。単収に関しては、草地更新率の低下等により、伸び悩んでいる状況。
説明した杉中淳経営局長は、課題及び検討の視点に関して「コスト削減を図るとともに、耕種農家による飼料生産を行える環境整備も重要。そのためにも、(地域の関係者と協議し、目指すべき将来の農地利用の姿を明確化した)地域計画に基づき、集約化した飼料産地の育成を図ることが必要だ。また、外部化という観点からコントラクター等飼料生産組織の育成を図ることも大切。スマート農業技術の開発の推進も必要になる」との考えを示した。
また、30年における農業経営体数の試算値も報告。すう勢ベースで総経営体数は30年には計54万経営体と20年の108万経営体と比べ半減する見込み。特に主業経営体において12万減の11万経営体と、大きく減少する見通しを説明。その上で「経営規模の拡大がないと推測して単純に農業経営体が減少することを考えると、20年に比べ、約3割の農地が使われなくなる恐れがある」と語った。
一方、農地の問題に関して、浅井雄一郎委員(㈱浅井農園代表)は半導体受託製造で世界最大手であるTSMC(台湾)の熊本県北部・菊池地域進出に言及。「一気に農地が転用されていることがニュースになっている。優良な農地の転用は一切認めない、抜け道を設けない制度にしていただきたい」と求めた。
「須藤晃さん・淳子さん夫妻(群馬県前橋市)が内閣総理大臣賞を受賞」――2024年度農林水産祭
農水省はこのほど、2024年度(第63回)農林水産祭天皇杯等の受賞者を公表した。畜産部門では、地域との耕畜連携に取り組み、牛に優しい酪農を営む須藤牧場の須藤晃さん・淳子さん夫妻(群馬県前橋市)が内閣総理大臣賞を受賞した。また、管内の飼料供給と耕畜連携を支える「みわTMRセンター」を運営する広島県酪農協(広島県三次市)が日本農林漁業振興会会長賞を受賞した。
表彰は11月23日、東京都渋谷区の明治神宮会館で開催する農林水産祭式典で行われる。
「国際酪農乳業情報レポート」――第11回
持続可能性推進するDSF③ Jミルク
「各国で実行手順に多様性、新興酪農国が改善計画実施」
デーリー・サステナビリティ・フレームワーク(DSF)の会員には2つの種別があります。実行会員として乳業会社のような個別の組織が、優先化して取り組むDSF評価項目(重要課題ともいう)の決定、改善計画の作成と実施、DSFへの報告などを行います。また、統括会員として各国の団体や政府機関などが、国内のデータをまとめて報告しています。
DSFは2020~25年の戦略プランにおいて、会員数を増やしていくことによって世界で生産される生乳に占めるDSFの報告対象割合を増やすことを掲げ、25年末の達成目標として世界で公式に取引される生乳の50%以上を報告対象とすることとしています。
これまでは順調に推移し、DSFが年次報告書でデータの公表を始めた18年度以降、21年度と22年度の年次報告書ではこの達成目標に既に到達し、23年度のデータは約52%となりました。では、会員数を増やすために、どのような工夫があったのでしょうか。今回は、DSFがインド、ルワンダ、ケニア、ベトナムの4カ国で実施したパイロットプロジェクトの事例を紹介します。
このパイロットプロジェクトは「社会的影響力のための酪農乳業」と名付けられ、新興酪農市場での酪農乳業組織のDSFの実行を支援するために、国際農業開発基金(IFAD)とグローバル・デーリー・プラットフォーム(GDP)から資金提供を受けて実施されました。
プロジェクトの作業には、当時DSF実行会員への加盟を検討していた4カ国の乳業会社が参加し、各国の国内状況や組織の事業環境を踏まえた持続可能性の課題の見直しや、マテリアリティ(重要課題)評価によるDSF評価項目の優先化を検討するとともに、優先化されたDSF評価項目を実現していくための改善計画によって、目に見える成果が得られることを目指しました。また、プロジェクトのもう一つの目的は、異なる地域や市場にわたって酪農乳業組織の経験を学びとして取り込み、他の組織にも役立つ情報や手引きを提供することでした。
事例紹介は、DSFが報告書にまとめて昨年発表しました。各国の組織が実行した具体的な作業の例として、インドの酪農協同組合の乳業部門であるアムール社はバイオガスプロジェクトを挙げ、酪農家一軒ごとに設置できるフレキシブルな形状の小型のふん尿の嫌気的消化装置の導入を進めたことで、薪やLPG(液化石油ガス)への代替エネルギーとしてのバイオガス活用や、肥料としての消化液の利用が可能になってきており、国のGHG(温室効果ガス)削減目標への貢献度についても今後調査していきたいことなどが紹介されました。
ルワンダの大手食品会社であるインヤンガ・インダストリーズ社は、これまでの同社の持続可能性の見直し作業を例に挙げ、組織外のステークホルダーに相談相手を担ってもらう地域マネジメントグループ(LMG)の設立とマテリアリティ評価の作業の様子を紹介し、当面は集中して取り組む優先評価項目として「農村経済」と「製品の安全性と品質」を決定しました。
ケニアの地元乳業会社であるパームハウス・デーリーズ社は、社内外の聞き取り調査やアンケート調査で得られた意見から持続可能性の課題を抽出し、DSF手法に従ってLMGを設置し、マテリアリティ評価で「農村経済」と「労働条件」を優先化し、改善計画を作成して実施中の取り組みを紹介しています。「農村経済」では研修牧場での個体乳量向上にむけた教育活動、「労働条件」では労使関係の改善などに取り組んでいます。
ベトナムのビナミルク社は、国内最大手の乳業会社であり、LMGには社内外のステークホルダーや政府関係者がメンバーとして参加し、マテリアリティ評価において「製品の安全性と品質」「労働条件」「農村経済」「GHG排出」「家畜飼養」「廃棄物」の6つの評価項目が優先化されました。
これらの4つの事例をみると、各国の組織で行われている作業には多様性があることがわかります。アムール社のDSF手法の実行手順【図1】では、LMGの設置やマテリアリティ評価は行わず、持続可能性に関して幅広いステークホルダーと意見交換を行うとともに、地域の有力者にも活動への理解を求めましたが、同社の組織の成り立ちやイノベーションの導入可能性を十分に考慮した上で進めたことが紹介されています。
ルワンダのインヤンガ社とベトナムのビナミルク社では、作業としてLMGの設置とマテリアリティ評価を実施したところまでが事例紹介されています。ケニアのパームハウス・デーリーズ社は、さらに行動計画の作成と実施にまで進み、測定基準に準拠した測定と年次報告を開始しようとしています【図2】。
最近、DSF事務局は、インドのプロジェクトでの経験を生かして、持続可能性の活動を新たに開始する組織が、DSF事務局やDSF会員からの手引きや情報提供を活用しながら、持続可能性の課題について関係者と協議したり、改善計画で想定される実践変更の効果を検証することができるDSF会員資格(ステージ1)を新たに設けるなど、新興の酪農国・地域のニーズにも対応を進めています。
経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)が今年7月に発表した「農業アウトルック2024~2033」では、これまで世界の酪農生産の伸びを担ってきた先進酪農国・地域では環境規制や飼養頭数が減少している問題もあることから、今後はアジアやアフリカの国々が生産の伸びを担っていくという見通しが示されています。これまで先進酪農国・地域を中心に進められてきたDSFの活動が、新興酪農国・地域にも広がりを見せるかどうか、注目されるところです。