全酪新報/2025年3月1日号
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「消費拡大や需要に応じた生産に、酪農経営安定へ総合力推進」――酪肉近骨子案
農水省は2月20日、省内で第10回畜産部会を開き、次期酪肉近等の骨子案をめぐり議論。消費拡大や需要に応じた生産などを柱として、酪農経営の安定などの方向性を明記。適正な乳価形成を基本に総合的な経営力向上を図るべく、経営資源に見合った生産規模、酪農家自らの経営分析・改善などを推進していくとした。なお、生乳生産数量目標など数値目標は3月中旬に行う畜産部会で公表予定。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

次期酪肉近骨子案をめぐり議論
お断り=本記事は3月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「実態に即した生乳生産目標の設定を、担い手確保などへ対応必要」――畜産部会で意見聴取
20日の畜産部会では、次期酪肉近の骨子案をめぐり、委員と農水省が意見交換した。生産者側の委員からは、骨子案では検討中としている新たな生乳生産目標数量について、生産現場は急激な変化には対応することが困難なため、実態に即した設定を求める声が上がった。
小椋茂敏臨時委員(JA北海道中央会副会長)は生乳生産目標について「5年後、(長期的な姿については)10年後と2段階で数字を示すと思うが、急激な曲線を描かれても生産現場は対応できない。また、日本の人口減少が進む中、世界の人口は右肩上がりで増加し、30年度には世界的に牛乳・乳製品が不足するとの予測もある。国の方針、指標としても急な上げ下げは出すべきではない。その辺も十分踏まえ、数字を設定していただきたい」と述べた。
これに対し牛乳乳製品課の須永新平課長は「今後アジアを中心に需要が高まり、生乳が世界的に不足するとの報告があるのは承知している。一方よく認識しなければならないのは、世界の主要な輸出国の生乳価格と日本の生乳価格の差。(需要拡大へ)輸出を推進するにも、この問題をクリアしていかなければ上手くいかない」と強調。
その上で「需要拡大は国内だけではなく、出口を拡大しながら、生産を考えていくことが大切。出口がないままでいきなり生産拡大をしてしまうと、価格が急激に落ちてしまうことも懸念材料としてある。このバランスをどう取っていくかも重要。数字を目の前に置きながら議論させていただければ」と語った。
また、酪農家の石田陽一臨時委員(神奈川県、㈱石田牧場代表取締役)は経営安定の取組に関して「この先、個々の酪農家が経営者としてレベルアップすることが大切。特に牛群検定などで得られる繁殖成績等のデータは、経営内容を立体的に把握できる良質な情報だ。それらの活用推進へ、国には情報発信をお願いしたい」と求めた。
このほか委員からは▽前向きなメッセージとなるような目玉となる施策の方向性を示すべき▽担い手確保に本腰を入れていくための具体的な内容を書き込むべき――などの要望が上がった。
「25年度の運動方針案など説明、柴田輝男委員長「儲かる酪農経営へ」」――酪政連・事務局長会議

日本酪農政治連盟(柴田輝男委員長)は2月20日、永田町の自民党本部で事務局長・事務局担当者会議を開き、3月5日開催予定の通常総会への提出議案である24年度運動報告・決算、25年度の運動方針・予算など議案書の内容を説明した。各地域から担当者38名が出席した。(右:柴田委員長)
冒頭あいさつした柴田委員長は「全国の皆様から会費を頂戴して運営している組織である以上、会費以上の働きをしていかなければならない」と酪政連としての活動の在り方を強調。その上で「酪農経営が儲かる方向にするのが我々の役割だ」と述べ、事務局担当者に対しても理解と協力を呼びかけた。
25年度の活動では、例年同様、生乳の需給調整対策に対する支援対策や高騰する酪農生産資材に対する支援対策の継続、国産自給飼料の増産や酪農ヘルパー支援・確保など必要な対策への支援を重点施策として要請していく方針。また、牛乳・乳製品の消費拡大に向け、公立高校への給食用牛乳の推進も引き続き働きかける。

会議では、農水省牛乳乳製品課の平田裕祐課長補佐が、酪農をめぐる情勢や現在策定に向けて議論中の酪肉近等について講演。その中で「酪農経営の安定を図るためにも、生乳需給の安定が大前提」と強調するとともに、次期酪肉近をめぐる議論でも需要拡大の推進が重要な取り組みとして位置づけられていると紹介した。(右:平田課長補佐)
一方、生乳需給の安定に関しては、加工仕向けによる需給調整、全国的な需給調整の取り組みが必要なことを関係者の共通課題だと改めて指摘。具体的には、畜安法における生乳取引の規律強化、主要な酪農関係補助事業へのクロスコンプライアンスの導入等の方向で対応を進めていると紹介した。
その上で、平田課長補佐はクロスコンプライアンス導入における要件の検討状況について触れ、「これまで生乳を全量、系統に集荷されている酪農家の方には、この要件自体は全く関係ない」として、チェックシートの記入・提出や全国協調の在庫削減対策等への拠出等は必要だが、今まで通り各事業を受けられることを説明した。

自民党本部で開かれた事務局長会議
「雪印メグミルク野田工場(千葉)で安全安心な取組学ぶ、牛乳風味変化への理解醸成を」――農水省主催・消費者団体と情報交換会
千葉県野田市の雪印メグミルク㈱野田工場で2月25日、農水省主催による消費者団体との情報交換会が開かれた。生協連などの団体が見学用コースを回り、牛乳・乳製品製造における現状や取り巻く課題等について同社や農水省と意見交換を実施。牛乳の風味変化に対する消費者の理解醸成を一層進めるべきとの意見に加え、高齢者への消費拡大の取組を進めるべきとの声もあった。
野田工場は牛乳やヨーグルト等約40品目を製造。さらに、牧場で搾った生乳が製品化されるまでの流れを学べる工場見学など、消費者を積極的に受け入れている。
一行はまず、牛乳やヨーグルト等の製造工程などを見学通路から学んだ。その中で、季節やエサの種類などにより牛乳の風味も変わることなどについても説明を受けた。
見学後の意見交換では冒頭、農水省の坂田進大臣官房審議官が工場見学について「今後の食品製造の在り方を考えるうえで非常に参考になった」と述べ、「乳製品製造にかかる現状や消費者の役割など率直な意見交換を交わし、(酪農乳業に対する)消費者理解の一助につながれば幸い」との考えを示した。
消費者団体からは、風味変化について消費者理解を図る必要があるとの声が多く上がった。特に10代は味覚が敏感な時期であることから、子どもへの理解を図るとともに、牛乳の特性などを冷静にきちんと伝えられる大人や学校関係者を育てていくことも大切との意見もみられた。牛乳の栄養的価値なども含め、食育の場で発信する重要性を指摘する声もあった。
このほか、今後の高齢化の進行も踏まえ、料理での牛乳消費の定着・拡大が必要との声や、給食がない長期休暇期間の家庭消費拡大へ消費者団体としても取組むべきとの意見もみられた。
結びに同社の畑本二美常務執行役員は「本日の意見交換を通じて、牛乳の風味変化や高齢者への価値訴求なども含め、如何に情報を発信して知っていただくかが、この先大切なことであると感じた。消費者団体、農水省とも連携し、取組を前に進めていきたい」と語った。

主婦連合会、消費科学センター、全国消費者団体連絡会、全国女性団体連絡協議会、日本生活協同組合連合会が参加。農水省、雪印メグミルクと意見を交わした

野田工場では実際の製造の様子を見学できる