全酪新報/2024年8月1日号
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「2025年度農林関係予算、概算要求へ自民党が議論を開始」――乳用牛の長命連産性の向上等盛り込む
自民党は7月30日、永田町で総合農林政策調査会と農林部会の合同会議を開き、2025年度農林関係予算概算要求に向けた議論を開始した。食料・農業・農村基本法の改正を踏まえ、農業の構造転換実現に向けた施策に必要な予算として、主要事項案を整理、会合で示した。酪農関係では、長命連産性の向上や飼料増産等を盛り込んだ。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
自民党本部で開かれた合同会議
お断り=本記事は8月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「生乳不需要期の加工仕向け、全国協調での対応が必要」――牛乳乳製品課・須永新平課長
農水省畜産局の須永新平牛乳乳製品課長は、生乳の不需要期の生乳仕向け先確保等の需給調整対応は、全国協調での取り組みが必要との認識を改めて示した。7月23日に仙台市で開かれた東北生乳販連の総会で述べたもの。(右:須永課長)
須永課長は需給調整対応について「農水省では系統外も含めた議論を進めており、6月には複数回の議論を踏まえた農水省の考え方を示した。そのなかで、(今後、迎える)不需要期を中心にした加工仕向け先の確保・拡充が重要で、脱脂粉乳、牛乳消費が低迷しているが、全国的な課題について全国の皆さんが参加する形でやっていく全国協調の取り組み、生乳に携わる全ての方々の協力が必要だ、と整理した。今後この方向に沿って国の施策も活用しながら、補正予算、年末の当初予算、補給金の単価の算定の機会を活用し、この取り組みをさらに深めて具体化していきたい」と説明した。
「生乳の自主流通量1.7倍に増加、需給調整リスクが偏在化」――中央酪農会議・菊池淳志専務
中央酪農会議の菊池淳志専務は、生乳需給上の課題として、改正畜安法施行後、いわゆる自主流通生乳の流通量が増えたため、指定団体の需給調整リスク・小売価格引き下げ圧力等につながっていると指摘した。7月23日に仙台市内で開かれた東北生乳販連総会に来賓として出席し、述べたもの。
菊池専務は「需給に関して、生乳の自主流通量の拡大が大きな課題になっている。平成30年には約25万㌧だった自主流通量が令和5年には約43万㌧と1.7倍に増加。これが指定団体の需給調整リスク負担の偏在化、小売価格引き下げ圧力、ひいては適正な乳価水準実現の阻害要因にもなっている。先般、各指定団体とともに、国に対し全国の酪農家、販売事業者等による需給安定対策の検討・構築、無脂乳固形分の需要拡大、酪農経営の支援等について要請を行ったが、引き続き今後の情勢も踏まえながら、必要な要請、取り組みを進めていく」として、今後の中酪の対応方針も含め説明した。
「日本酪農政治連盟の新委員長に柴田輝男氏」――副委員長に臼井勉氏を新任
酪政連は7月24日、東京・代々木の酪農会館で中央常任委員会を開催し、5月28日に急逝した木本栄一委員長の後任として、柴田輝男副委員長兼会計責任者(秋田)を新委員長に選任した。また、後任の副委員長には、臼井勉中央常任委員(栃木)を副委員長に新任した。この結果、副委員長は宮本貞治郎氏(長崎)、清水清人氏(岐阜)、三宅穣次氏無(岡山)の4人で、会計責任者は宮本貞治郎副委員長(長崎)が兼任する。(右:柴田新委員長)
就任にあたり、本紙の取材に応じた柴田委員長は「酪農家戸数の減少が止まらず、コスト高騰も長く続いている。酪農は地域によりやり方が異なるが、全国各地の状況を把握するため、副委員長をはじめ全国の委員の意見をうかがい、応えていけるよう、頑張りたい」と述べた。酪政連は今後、農水省の来年度予算要求に向けて、酪農政策・酪農予算のための要請活動を展開していく。
「筒井省悟さん(岡山県)に農林水産大臣賞、意見・体験最優秀賞は牧之瀬佳貴さん(北海道)」――第51回酪青女全国発表大会
全国酪農青年女性会議と全酪連は7月18~19日、名古屋市で全国酪農青年女性酪農発表大会を開催。経営発表の部6名のうち最優秀賞・農林水産大臣賞に筒井省悟さん(岡山県真庭市)、意見・体験発表の部6名のうち最優秀賞に牧之瀬佳貴さん(北海道弟子屈町)が選ばれた。大会は今回で51回目となる。
開会にあたり中村俊介全国酪農青年女性会議委員長は、直近の酪農情勢に言及し「新型コロナウイルス感染症の拡大、戦争や為替変動など本当に苦しい状況。国や都道府県、市町村、酪農関係団体の支援もあり、何とかやってこれているが、いまだに回復していない。今日集まった酪友の皆様には、全国の代表12名の発表を持ち帰り、それぞれの経営に役立てていただきたい。この2日間、大会に参加した甲斐があったと思える、有意義な大会としよう」と語った。
「仲間と共に希望の未来へ」――全酪連 隈部会長
続いて、隈部洋全酪連会長も挨拶。全国酪青女会議委員長を務めた経験(2004~2006年)をふり返り、「仲間と『父の日に牛乳を贈ろうキャンペーン』など消費者への理解醸成活動に夢中になり、発表大会では各地の代表の方々の優秀な発表に刺激を受け、全国の酪友と夜を徹して語り合った。当時の仲間たちは現在も各地で活躍しており、それが今の自分の支えになっている」と酪友とともに精力的に取り組んだ酪青女活動をふり返るとともに、改めてその意義を強調した。
その上で「まだまだ厳しい経営環境にあるが、少しずつ明るい兆しも見えてきている。暗い話題が多くとも、酪友が集まり、交流することで希望の光も見えてくる。何より今日の発表は、全国から集まった酪友の糧になる。ぜひ発表を聞いて、モチベーションを高め、多くの仲間を作り、大会を楽しんで牧場へ帰ってほしい」と呼びかけた。
農林水産大臣賞に輝いた筒井さん
「酪農は必要不可欠な産業、国として酪農家を支える」――坂本哲志農相・酪青女全国大会に来賓出席
第51回全国酪農青年青年女性酪農発表大会には、坂本哲志農相(熊本3区・衆議)が来賓として農相では初めて出席し、祝辞を述べた。
坂本農相は生産コストの高騰や消費の低迷など、依然厳しい酪農の経営環境に言及。「これからを担う子どもたちから高齢者まで、酪農は必要欠くべからざる産業で、牛乳・乳製品も無くてはならない。この思いを皆様と共有し、国として酪農家の皆様の生業を全力で支え、応援していく」と力強く挨拶した。
また、半世紀を超える歴史を持つ全国発表大会について、「1971年から始まったこの全国大会は、酪農家の将来を考える意欲、酪友の結束力を表すもの。現在、酪農業には様々課題があるが、酪友同士が集まり、意見を出し合うことが素晴らしい。今日の発表を聞かせていただき、皆様と一緒になってこれからの酪農の方向性に充てたい。そして皆様の経営意欲が実現できるよう国として保障してまいりたい」と抱負を述べた。その後、坂本農相は経営発表を傍聴した。
来賓として出席した坂本農相。酪友に応援の言葉を贈った
「事業強化・業務効率化を着実に実行」第13期中期事業計画――全酪連総会で隈部洋会長
全酪連(隈部洋会長)は7月25日、都内で通常総会を開催。冒頭挨拶した隈部会長は今後の運営方針について、「販売事業強化・業務効率化を柱とした第13期中期事業計画を着実に実行、現場に寄り添う姿勢を明確にしつつ我が国酪農が直面する様々な課題に対応するとともに、次の段階へのステップアップを目指して『ネクストステージ全酪』を合言葉に、酪農家が前を向いて進めるよう励んでいく」と述べた。(右:隈部会長)
また、最近の酪農情勢について「これまでの飲用乳価値上げにより一時よりも光が見えてきたが、コストの高い経営を余儀なくされており、厳しい状況が続いている。当初増産予測だった今年度は猛暑の影響が大きく、生乳生産が伸びていない。需給も緩和からひっ迫を迎えつつある。輸出を含めた需要回復を進め、生乳生産の増産を目指すべき。そのためには自給飼料増産や後継牛確保、暑熱対策の取組が重要だ」との考えを示した。
総会では任期満了に伴う役員改選が行われ、長恒泰治理事、小谷英穂常務、大森一幸常務、大久保克美代表監事が退任。総会終了後の理事会で隈部会長、小前孝夫副会長、伊藤一成副会長、北池隆専務、西村裕之常務を再任した。また、新理事に檜尾康知氏(おかやま酪農協組合長)、新常務理事に佐藤弘氏(実務精通役員)、工藤文彦氏(実務精通役員)、新監事に小林幹男氏(赤城酪連副会長)が選任。紺野宏監事(福島県酪農協組合長)が代表監事に選任された。