全酪新報/2024年12月1号
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「長命連産向上対策を継続支援、脱粉の在庫低減対策も引き続き措置」――2024年度補正予算

2024-12-01

自民党は11月27日、東京・永田町の自民党本部で総合農林政策調査会と農林部会の合同会議を開き、2024年度農林水産関係補正予算をめぐり議論。重点事項として、乳用牛の長命連産性向上対策に50億円、国産飼料生産・利用拡大対策に133億円を計上した。このほか、脱脂粉乳の在庫低減・需要拡大等に向けた支援対策や国産チーズの競争力強化対策なども引き続き措置する。11月29日に閣議決定した。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

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自民党本部で開かれた会合

お断り=本記事は12月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「牛乳の販売個数3週ぶりに減少」11月18日週――Jミルク需給短信」

2024-12-01

Jミルクが11月28日に公表した直近週(11月18日)の家庭用牛乳等(900~1千㍉㍑)の販売状況によると、牛乳の販売個数は前年同期比で0.4%減。11月上~中旬はプラスで推移していた一方、気温低下等を背景に3週ぶりに減少に転じた。


品目別にみると、加工乳は2週ぶり、成分調整牛乳は5週連続、乳飲料は20週連続で前年割れの状況。牛乳類全体で前年水準を下回っていることから、引き続き需要拡大に向けた取り組みが求められる。


牛乳類全体の販売個数は前年同期比1.9%減。また、成分調整牛乳は5.0%減、加工乳は1.6%減、乳飲料は7.9%減。直近数週間をみると、成分調整牛乳と乳飲料は低迷するなか、牛乳と加工乳は週によってバラつきがある。


このほか、はっ酵乳は3品目全てで前年水準超え。大容量タイプは12週連続、ドリンクタイプと個食タイプは3週連続で前年水準を上回った。

「全国酪農協会が都内で酪農基本対策委員会を開催」――酪農情勢や食料安保問題など研修

2024-12-01 12月1日号記事3_砂金会長近影

全国酪農協会は11月29日、東京・目黒のホテル雅叙園東京で酪農基本対策委員会を開催した。酪農をとりまく情勢や課題をはじめ、対策が急務となっている食料安全保障をめぐる問題、これからの日本酪農の方向性などについて、講演を通じて研修した。講師として、Jミルク専務理事の内橋政敏氏が「国内外の酪農を取り巻く情勢と課題について」、東京大学大学院特任教授・名誉教授の鈴木宣弘氏が「迫りくる食糧危機と目指すべき日本酪農の姿」と題してそれぞれ講演した。会員団体の役員などオンラインによる傍聴も含めて約70名の関係者が参加した。(右:砂金会長)


冒頭、主催者挨拶した砂金甚太郎会長は、このほど国内で初めて発生したランピースキン病に対して「全力で対応されている関係者に敬意を表するとともに、一刻も早い収束を願っている」と述べた。


その上で、現在の酪農を取り巻く厳しい現状などに触れ「配合飼料や燃料の高騰、長引く円安、生乳需給調整、脱脂粉乳過剰在庫対策など、放っておけない課題があり、これらに対しては政策的な支援、政府の予算措置が必要だ」と強調。酪政連を中心に、関連団体と一丸となって要請活動に取り組んでいく姿勢を改めて示した。

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目黒のホテル雅叙園東京で開かれた

「全酪連の新専務に熊谷法夫氏、農水省消費・安全局動物衛生課長等を歴任」――全酪連臨時総会・理事会

2024-12-01

全酪連は11月26日、東京・代々木の酪農会館で臨時総会を開催。役員の補欠選任が行われ、北池隆専務は退任。総会終了後の理事会で、熊谷法夫氏(実務精通役員)が新専務に選任された。


熊谷氏はこれまで、農水省消費・安全局動物衛生課長、大臣官房審議官兼消費・安全局付兼輸出・国際局付などを歴任。

「北海道酪農、都府県酪農、均衡ある発展に向けて」――第2回


北海道大学大学院・農学研究院
食料農業市場学研究室准教授 清水池義治

2024-12-01

~経営大規模化で高まる脆弱性~


本連載では、北海道酪農が直面する①国内需要の充足(10月1日号既報)②大規模経営の脆弱性③物流危機の観点――の3つの問題から、北海道・都府県酪農の均衡ある発展が必要であることを検討し、そのために求められる酪農政策の姿とそれを実現する方策を述べていく。


規模拡大進展に脆弱化の側面、購入飼料への依存、経営に影響


第2の問題は、生産面における北海道酪農の脆弱化である。


北海道酪農はこの間、おおむね10年ごとに2割強の減少率で酪農家戸数が減ってきた一方、経営の大規模化は進んできた。北海道における酪農家1戸当たり経産牛飼養頭数は、2000年に49頭、10年に63頭、20年に78頭、そして24年には90頭と着実に増加してきた(農林水産省「畜産統計」)(都府県は年で同頭)。北海道酪農の経営規模は、欧州の酪農大国であるドイツやフランスを超える水準に達している。


北海道における酪農家戸数および生乳生産量の年間乳量階層別シェア(ホクレン酪農部調べ)を、前回の「畜産危機」時の08年度と22年度を比較してみる【図1】。年間乳量1千㌧以上階層の大規模経営(1戸当たり経産牛飼養頭数100頭以上階層に相当)のシェアが大きく高まり、北海道酪農は大きな構造変化を遂げている。


戸数シェアでは、年間乳量1千㌧以上階層は08年度の8.5%から、22年度の22.0%まで上昇した。生産量シェアはより顕著で、年間乳量1千㌧以上階層は08年度の28.1%から22年度の58.4%へと飛躍的にシェアを高めた。


逆に、平均規模の経営が属する乳量500~1千㌧階層の生産量シェアは、08年度は全階層で最も高いシェアであった34.3%から、22年度には25.1%まで縮小し、同100頭以上階層のシェアを下回った。中規模家族経営の存在感が大きかった北海道酪農も、ここ20年間で大規模経営の比重が高まっている。


このように北海道酪農の規模拡大が進展し、生産の効率性が高まっているように見えるが、一方で脆弱化の側面もある。


【表2】に、乳用牛(24カ月齢以上)飼養頭数階層別の実搾乳量1㌔当たり全算入生産費および所得を示した。規模階層が大きくなると生産費が低下する「規模の経済」が見られるものの、飼養頭数100頭以上の階層ではあまり明瞭でなくなる。つまり、一定規模を超えると大規模化しても、生産費が低減しなくなるのである。


同様に、1㌔当たり所得もほぼ変化が見られない。他の研究によれば、これは北海道に特有の事態ではなく、欧州や中国でも同様の傾向が見られる。


この一因は、酪農経営の大規模化に伴い、飼養頭数の増加に連動した自給飼料面積の拡大困難や、自給飼料生産の省力化などの観点から、輸入穀物を原料とした購入飼料への依存度が高まるためである。大規模経営ほど、搾乳牛1頭当たりの配合飼料、あるいは配合飼料も含む購入飼料であるTMRの給与量が多くなる。


実際に、100頭以上階層の「流通飼料(≒購入飼料)費」が生乳生産費に占める比率は38~39%で、100頭未満階層(同22~34%)と比べて高い。北海道における平均的な大規模経営の姿は、他の家族経営と比較して、穀物飼料多投入の高泌乳経営であり、その点で都府県酪農に接近していると言える。


購入飼料依存度の高い経営は、そうではない経営と比べて、22年に起きたような飼料価格の高騰による経営への影響がより大きくなる。また、購入飼料依存、すなわち飼養頭数に対して限られた自給飼料面積しかない経営は、糞尿処理問題も深刻になる。


酪農経営の大規模化は、このような生産面での脆弱性を高める側面も有する。大規模経営への依存度が極端に高まらないように留意しつつ、中小規模の家族経営も存続できるような政策が求められる。

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12月1日号記事5_表

「北海道酪農、都府県酪農、均衡ある発展に向けて」――第3回


北海道大学大学院・農学研究院
食料農業市場学研究室准教授 清水池義治

2024-12-01

~生乳移出と物流危機~


本連載では、北海道酪農が直面する①国内需要の充足(10月1日号既報)②大規模経営の脆弱性(11月1日号既報)③物流危機の観点――の3つの問題から、北海道・都府県酪農の均衡ある発展が必要であることを検討し、そのために求められる酪農政策の姿とそれを実現する方策を述べていく。


深刻さ増す道外移出上の課題、ドライバー不足で輸送に制約


第3の問題は、北海道から都府県への物流維持の困難さである。


いわゆる物流の「2024年問題」は、改正労働基準法における時間外労働の上限規制強化が24年4月に自動車運転業務にも適用されることで、トラックドライバーの労働時間が減り、それによる輸送能力の低下がもたらす問題である。


2023年には、北海道では、17万㌧の粉乳類、6万㌧のバター、11万㌧のクリーム、3万㌧のチーズが製造され、その大半が都府県へ移出。また、都府県向けに北海道内の工場で製造される「産地パック牛乳」が32万㌧、未加工で都府県へ移出される生乳が50万㌧と、大量の生乳や牛乳・乳製品が北海道から移出されている。


特に物流の困難さを抱えるのが、液状で品質保持期間が短く、季節変動を含む需要変動の大きい移出生乳である。移出方法の大半は海上輸送で、関東・関西・中部地域向けが多い。北海道内の移出港まではトレーラー輸送、シャーシ(荷台)のみをフェリーに搭載して海上輸送、都府県の移入港から牛乳工場まで再びトレーラー輸送が一般的である。


図に、ホクレンの都府県向け生乳移出量の月別変動を示した。同一年で季節変動が大きいことに加え、年間最大の移出量や季節変動のパターンも年によって違いがある。都府県で生乳が不足する夏に移出量が増え、逆に過剰となる春先に減るのが、基本的な季節変動のパターンである。この理由は、需給調整、すなわち都府県における生乳の過不足状況に応じて北海道からの移出量が調整されているためである。


しかしながら、すでに物流問題に起因して都府県の不足をカバーできない事態が起きている。例えば、コロナ禍1年目の2020年は通常年と需給動向が大きく異なり、事前想定を超える移入需要が生じた結果、トレーラーやドライバーのスポット手配が追いつかず、夏季に牛乳の供給制限を伴う大幅な不足を招いた。また、近年、労働者の安全確保のため、台風など荒天時のフェリー欠航頻度が増している。最需要期の欠航は、フェリーがフル稼働しているがゆえに、欠航日の移出量を翌日以降の便に上乗せできず、不足の影響が1カ月以上に及ぶこともしばしばである。


海上輸送は、タンク大型化やフェリー更新による積載率の向上で輸送効率を高めているが、前述の荒天時の欠航問題に加え、タンク大型化で受入可能な都府県の乳業工場が限定され、効率的な輸送が制約されるといった問題もある。


より深刻なのは、北海道内の陸上輸送である。「2024年問題」以前からドライバーの不足は深刻化している状況で、加えて「24年問題」対応でトレーラーやローリーのドライバーの労働時間削減が求められている。


同一ローリーで1日複数回集乳の場合、ドライバーを増員しないと労働時間削減はできないが、ドライバー不足で現有体制の維持すら困難な状況である。また、特定時間帯にローリーの工場到着が集中し、待機時間が発生する場合、ローリー到着を時間的に分散すればよいが、そのためには集乳ルートの組み替えや、場合によっては酪農家の搾乳時間を変更する必要があり容易ではないだろう。毎日集乳から隔日集乳への変更も有力だが、酪農家によって生乳生産量に対するバルククーラー容量はまちまちであり、集乳頻度の変更に対応できない場合がある。


また、近年の系統外出荷の増加は、系統出荷生乳を取り扱う運送業者の取扱量低下をもたらし、事業継続への懸念が高まる恐れがある。


物流問題の打開のためには、究極的にはドライバー不足の緩和が必要であるが、一朝一夕には達成できないと思われる。一方、自動運転への期待もあるが、映像認識依存の運行では積雪期には道路のラインが見えない、降雪による視認性低下、気象によって変化する路面状態への対応など実用化には高いハードルが存在している。


北海道で生産はできるが、運べない。物流がミルクサプライチェーンのボトルネックになる可能性は将来的にさらに高まるだろう。

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