全酪新報/2024年8月10日号
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「農畜産物の合理的な価格形成へ制度化図る、需給や品質の反映基本に」――第5回価格形成協議会
現在、法制化を視野に検討が進む農畜産物の合理的な価格形成をめぐり、農水省は8月2日、省内で「第5回適正な価格形成に関する協議会」を開催。価格形成では需給や品質を反映した上で、持続的な食料供給に要する合理的な費用を考慮して制度化を進めることや、コスト指標を関係団体が作成を進めていくことなどが示された。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は8月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「農畜産物の適正な価格形成へ議論、実効性の担保に向けた措置が必要」――自民党・合同会議
高止まりしている農畜産物生産コストを価格に転嫁する方策について自民党・総合農林政策調査会の江藤拓会長は「生産・流通・加工・販売まで全ての関係者が見える化を行い、国民の理解を得て消費者が購入する、そうした説得力のあるものにしなければならない。指導・勧告や実名公開まで検討すべき。実効性がないと言われたらどうにもならない」と実効性の担保に向けた措置が必要との考えを示した。7月30日に党本部で開いた会議で述べたもの。
他の議員からは、「中小企業等下請け企業がコスト上昇で価格交渉をしてほしいと言い、無下にはねつけたら、公正取引委員会が指導する状況であり、これが農業にだけ適用されないのは不公平」「(生産資材価格の変動を川下の販売価格に連動させる)フランスのエガリム法は罰則がない。実効性を持たせるためにどこまで農水省が指導できるか。例えば業者名の公表までできるか」などの意見が上がった。
これに対して農水省の宮浦浩司総括審議官(新事業・食品産業)は「農水省としては、食料の持続的な供給の観点から、公取委の一歩手前の部分で措置していこうと検討しているところ。どこまでやれるかはまさに重要で、ご議論いただきながら精査していきたい」と話した。
「不需要期は業界一体で対応必要、牛乳の小売価格についても議論」――第6回需給等情報交換会
農水省は7月12日、指定団体等生産者団体と自主流通関係者を集め、「第6回生乳の需給等に係る情報交換会」を開催。会合は非公開で、このほど公表された議事概要によると、これまでの会合と同様に年末年始・年度末の不需要期における対応をめぐり議論し、業界一体で対応していく必要性などの課題を再確認。牛乳の小売価格と消費量の動向についても話題に上り、指定団体側は、牛乳の小売価格差の要因に関して議論する必要があると指摘した一方、自主流通関係者側は、乳業メーカーへ生乳を販売する段階での要因はないと報告した。
意見交換では、牛乳の小売価格の関係について、関東生乳販連は「価格の差が何に起因するのかを共通認識とし、議論することが必要」との意見を示した。
一方、自主流通関係者は農水省からの、道外に卸している価格と他の指定団体から出てくる価格に大きい差はあると感じているかとの問いに対し「違いはない。飲用価格は決まっており、距離がある場合は運賃を考慮すると、北海道の生産地段階では都府県よりもマイナスになる。道外に移出するのは輸送費の影響が大きい」(ちえのわ事業協同組合)、「生産者からの買取価格はホクレンよりも若干高く買い取っている。乳業に卸す価格は安売りしていない。運送費がネックになるため自社物流を行い、コストを下げることで生産者の手取り価格を上げている。(牛乳の小売価格は)乳業の納品価格というより、小売の経営戦略の違いではないか」(Milk Net)と答えた。
このほか、各事業者が不需要期の対応・課題に対する考え方を発表。対応については全国連や乳業メーカーとの連携、消費喚起対策や酪農の理解醸成活動の重要性等が説明された。課題としては、自主流通による道外移出生乳の増加と、都府県の乳製品向け処理能力の低下により、コア期間における調整が困難となっているとの声や、業界全体で不需要期の対応に当たる必要性などが上がった。
「生乳流通めぐる諸課題、厳しい局面こそ協調」――農水省・松本畜産局長が全酪連総会で言及
農水省の松本平畜産局長は、生乳流通をめぐる課題について「系統外の流通の関係について、現在の厳しい局面においては、協調し、お互いに努力しなければならない。現在、農水省では関係者が一堂に会する会合(生乳の需給等に係る情報交換会)を開いている。これが軌道に乗るような形で進め、力を尽くす」と語った。全酪連が7月25日に都内で開いた通常総会の来賓挨拶の中で述べたもの。(右:松本局長)
このほか松本局長は今後議論を進める食料・農業・農村基本計画について「酪農業の将来を見据えた中期的なビジョンについて考える上で、業界の方のご意見を聞きながら、行政としての方向性を立てる。生産者の皆様が将来に向けて酪農経営を維持・発展できるよう、取り組む」との考えを示した。
「7~9月の北海道からの生乳移入量9.1%増、9月は6万4千㌧見込む」――Jミルク・7月30日公表の24年度需給見通し
Jミルクが7月30日に公表した24年度需給見通しによれば、全国の生乳生産量は前年度比0.9%増の738万6千㌧の見込み。史上最高と言われた昨夏並みの猛暑となる予測等から、0.3㌽下方修正した。一方、牛乳生産量は前年度並みで、消費は依然低調に推移する見通し。特に都府県では、飲用最需要期に生産が追い付かず、需給は厳しい状況となることから、7~9月の移入量は9.1%増と前年を大きく上回る予測で、9月は6万4千㌧を見込む。
生乳生産量の内訳は、北海道が1.6%増の424万1千㌧と、猛暑などを考慮し前回5月よりも大きく下方修正。一方、都府県は0.1%減の314万5千㌧とほぼ前年度並みで上方修正した。
一方、消費面においては牛乳生産量が0.1%減の308万1千㌔㍑で、0.6㌽上方修正。飲用最需要期の7~9月は0.6%増で、それ以降の月でもおおむね前年を上回る見通しだが、年度全体では前年度並みの予測。
牛乳のうち、家庭用は0.2%減の246万4千㌔㍑。昨夏の乳価改定から一巡となる8月以降、ほとんどの月で前年を上回る。また、業務用は0.8%増の27万4千万㌔㍑、学乳は0.3%減の34万2千㌔㍑。
このほか、成分調整牛乳は7.5%減の21万5千㌔㍑、乳飲料は5.0%減の100万8千㌔㍑とともに減少。加工乳は3.6%増の15万1千㌔㍑で引き続き前年を上回る見込み。
なお、はっ酵乳に関しては、1.5%増の100万3千㌔㍑と前年を上回る予測。
都府県の生乳需給を見ると、北海道からの移入量は6.3%増の「53万7千㌧」と前年度を大きく上回る見通し。9月は5.5%増の6万4千㌧の予測で、翌月の10月も7.2%増の5万7千㌧との予測となっている。
脱粉期末在庫5万7600㌧に
24年度需給見通しのうち、乳製品需給を見ると、脱粉需要は依然低調に推移する見込みで、年度末在庫は業界協調の在庫対策を考慮しても、20.6%増の5万7600㌧を予測。引き続き在庫対策に取り組むとともに、脱粉需要の拡大に向けた対応の検討を継続していく必要がある。
用途別では、低調な消費が見込まれることから、飲用等向けは0.6%減の387万5千㌧。一方で乳製品向けは2.6%増の346万6千㌧。
乳製品向けのうち、脱脂粉乳・バター等向けは4.2%増の179万7千㌧。猛暑の影響により生乳生産量が減少予測となったことから前回よりも下方修正されたが、依然前年を上回る予測。
脱粉の生産量は依然増加する見込みの一方、出回りが低調なことなどから単年度の需給ギャップは「2万4700㌧」。在庫対策を加味しない場合の期末在庫量は51.7%増の7万2500㌧で23年度と比べ、約1.5倍増加する見込み。
一方、バター生産量は増加し、消費も好調なことから需要は供給を上回り、期末在庫量は2.2%減の2万3900㌧の見込み。
「牛乳・乳製品輸出額5.6%減、脱脂粉乳減少等が影響」――農林水産物等24年上半期輸出実績
農水省は8月2日、2024年上半期の農林水産物・食品の輸出実績を公表した。1~6月累計での輸出額は前年同期比132億円、1.8%減の7013億円。欧米やアジアでの堅調な外食需要等により、品目別では大幅増だった品目がある一方、中国及び香港による日本産水産物を中心とした禁輸措置の影響を受け、新型コロナ禍だった20年同期ぶりに上半期全体としてはマイナスへ転じた。これまで大きく伸長してきた牛乳・乳製品の輸出額も159億3400万円の5.6%減で、脱脂粉乳の減少等を要因に大きく落ち込んでいる。
農水省が財務省の貿易統計を基にとりまとめた農林水産物輸出入情報によると、牛乳・乳製品のうち、酪農品の1~6月累計は110億8670万円で9.3%減。このうち、LL牛乳などの牛乳・部分脱脂乳は9億6284万円で5.1%増と堅調に推移。一方、粉乳等全体は83億2千万円で11.3%減と大幅に前年同期を下回ったが、その中で大部分を占めている育児用粉乳等の乳幼児用調製品は、80億4471万円で13.6%増と大きく上回り、中でもベトナム向けが伸びた。
このほか上半期累計では、チーズ・カードは10億5393万円で19.2%増と拡大。酪農品には含まれていないアイスクリーム等氷菓は、48億5922万円で4.0%増と好調に推移した。
このほか、牛乳・乳製品を含む畜産物の輸出額は497億3500万円(2.9%増)。このうち牛肉は282億300万円(7.7%増)、鶏卵は34億400万円(14.5%増)、鶏肉は11億5200万円(12.0%増)、豚肉は10億4200万円(18.1%減)だった。