全酪新報/2025年1月1号
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「2025年度畜産物価格、加工原料乳補給金単価17銭上げ」――関連対策含め11円90銭、交付対象数量は今年度同325万㌧

2025-01-01

自民党は12月24日、25年度の畜産物価格および関連対策について、加工原料乳生産者補給金単価を今年度より17銭引き上げの㌔当たり9円9銭、集送乳調整金単価を5銭引き上げの2円73銭、総交付対象数量は今年度同の325万㌧に決定した。なお、関連対策(ALIC事業)による集送乳経費の合理化支援も含めると、補給金・集送乳調整金単価の合計は11円90銭となる。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

1月1日号記事1_表

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12月24日に開かれた畜酪委

お断り=本記事は1月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「搾乳牛1頭当たりの全算入生産費前年比2.3%上昇、2年連続100万円を上回る、飼料費嵩み 副産物価格下落」――23年牛乳生産費

2025-01-01

農水省統計部は12月24日、2023年の牛乳生産費を公表。搾乳牛1頭当たりの全算入生産費(資本利子・地代全額込み)は103万2548円で、前年に比べ、2万3646円、2.3%上昇、2年連続で100万円を上回った。一方、労働費は前年並みだったものの、飼料費は57万831円で6.0%上昇と大きく上回り、そのほか副産物価額の低下等の影響もあり、前年に大幅に上昇した生産費をさらに上回った。


搾乳牛1頭当たりの全算入生産費は、北海道は97万9878円で2.8%上昇、都府県は109万5103円で1.7%上昇。また、飼料費の内訳をみると、牧草・放牧・採草費は都府県が5万1481円、10.7%上昇に対し、北海道は11万3839円、4.7%上昇と上昇率は都府県の半分程度に留まった。


他方で流通飼料費については、都府県が60万7757円、4.4%上昇。北海道は38万2563円で、7.5%上昇。北海道と都府県ともに18%以上も上昇した22年よりさらに上昇している。


光熱水料及び動力は、北海道は3万4618円で1.3%上昇、都府県は3万9548円で3.2%低下。一方で副産物価額は、北海道は9万4568円で11.3%低下、都府県は10万9797円で11.9%低下。ともに悪化している状況で、特に北海道では子牛が16.0%の低下と大きく落ち込んだ。


このほか乳牛償却費は、北海道は15万3249円で14.5%低下、都府県は13万2188円で10.0%低下、共に1割以上低下している。


全算入生産費は12年度から17年度までは75万円前後で推移していたものの、18年度から徐々に上昇。20年度には80万円を超え、22年度には100万円も超えている。

「新規就農者の育成確保に107億円」――25年度大臣折衝事項

2025-01-01

自民党は12月25日に総合農林政策調査会等の合同会議を開き、25年度当初予算に向けた大臣折衝の結果を報告。このうち、今年度も実施している新規就農者の育成・確保に向けた支援(96億円)として、11億円増の107億円の予算を確保。地域の中核となる担い手の機械導入の促進、新規就農者の確保等を引き続き推進する。このほか、多面的機能支払交付金に500億円、中山間地域等直接支払交付金に285億円、環境保全型農業直接支払交付金に28億円などそれぞれ必要な予算を確保した。

「北海道酪農 都府県酪農、均衡ある発展に向けて」――第4回


北海道大学大学院・農学研究院
食料農業市場学研究室准教授 清水池義治

2025-01-01

~持続可能なミルクサプライチェーンへ~


本連載では、北海道酪農が直面する①国内需要の充足(10月1日号既報)②大規模経営の脆弱性(11月1日号既報)③物流危機の観点(12月1日号既報)――の3つの問題から、北海道・都府県酪農の均衡ある発展が必要であることを検討し、そのために求められる酪農政策の姿とそれを実現する方策を述べていく。


多様な経営形態の存在が重要、コストの消費者負担に限界も


北海道の酪農経営は、都府県と比べて大規模であり、生乳生産量の拡大も続いている。だが、前回までに検討したとおり、牛乳・乳製品需要を問題なく充足できるほど北海道の生産は大きくなく、経営の大規模化によって飼料価格など経営外部の変化に対する脆弱性が増している。そして、物流は現状維持すら容易ではなく、日本全体として北海道への依存を意図的に高める選択肢は持続可能でないといえる。


持続可能なミルク・サプライチェーンの構築のために重要なことは、「都府県における酪農生産基盤の維持」「酪農経営の多様性確保」以上の2点である。


需要充足と物流の観点からだけでも、都府県酪農の存在意義は明らかである。加えて、人口の大半が居住する都府県で生乳を生産し、賞味期限の短い牛乳を製造する合理性、消費者により近い場所での酪農教育ファームや消費者直接販売による酪農への理解醸成、中山間地における農地の有効活用、耕種農業が必要とする堆肥の供給(肥料高騰下ではなおさら)など、都府県酪農が担うべき役割への期待は大きい。


これまで日本の農村社会では、離農者の農地を残った農家が引き受けて経営規模を拡大できたとしても、農家の数そのものは減ってきた。しかし、このままでは農村社会の維持が困難になってきている。多くの人々を農村社会に迎え入れようとするならば、多様な酪農経営がその地域に存在していることが重要だ。


そもそも、酪農経営は多様性を内包している。経営規模や飼養方法、農地利用など様々なアプローチが可能で、何か特定の解があるわけではない。経営者の理念・哲学や周囲の自然・市場環境に応じて、多様な経営形態が選択されうる。


他産業と同様の労働者として働き、合理的な企業経営を追求したければ、メガファームなどの大規模法人経営がある。一方、企業の一員として働くことに疑問を感じ、自分の意思決定と労働にもとづく一貫した経営を行いたい人は、家族経営を選択する。


また、労働ではなく家族との生活を重視したい、あるいは酪農を通じて社会の持続可能性の改善に寄与したい人にとっては、放牧やオーガニック、アニマルウェルフェア、6次産業化(牛乳・乳製品の自家加工・販売)といった「オルタナティブ」な経営が選択される。


2000年代以降の国の酪農政策は、「競争力強化」や経営の大規模化を重視し、それらに該当する経営を選別的に支援するという新自由主義的な性格が強い。だが、都府県酪農や酪農経営の多様性を保持するためには、従来とは異なる新たな酪農政策が必要な時期になってきている。


この観点で試金石となるのが、昨年6月に成立した改正食料・農業・農村基本法(以下、改正基本法)であろう。改正基本法は5つの基本理念を掲げるが、その中心は「食料安全保障の確保」である。「食料安全保障の確保」は、「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義された(第2条)。


この食料安保に関して、農林水産省は「合理的な価格形成」の実現を重視し、「適正な価格形成に関する協議会」で飲用牛乳などの品目を対象に議論が進んでいる。合理的な価格形成は、①農産物コストをカバーする農産物価格の形成、②農産物コストを反映した農産物価格の小売価格への転嫁、③価格転嫁された小売価格で消費者が購入できる、これら3つを全て達成して初めて実現される。


今の酪農乳業の現状は、これら「価格形成」の①と②は十分ではないが、ある程度は実現されている。だが、③については小売価格が上昇した結果、牛乳・乳製品の消費は減少している。つまり、③は実現されていない。「食料安全保障の確保」の点から考えると、「国民一人一人が(食料を)入手できる状態」になっておらず、問題である。


これまでの日本の農業政策は、農産物・食料コストを消費者が小売価格を通じて全て負担することを基本としてきた。だが、国民の経済格差が拡大する中で、農産物・食料コストを消費者が負担する枠組みは限界を迎えている。持続可能な農家経営と、消費者が購入可能な農産物・食料価格を同時に実現するためには、国が「所得支持」という形で農業者に直接支払いを行い、農産物・食料コストの一部を公的に負担する必要がある。

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