全酪新報/2024年6月1日号
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「需給調整の負担偏在、全生産者で対応必要」――食料・農業・農村政策審議会畜産部会が意見聴取
農水省は5月24日、省内で食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、畜産物の需給・流通をテーマに関係者から意見を聴取した。酪農乳業関係者からは、需給調整の負担が偏在しているとして、自主流通側を含めた全生産者で対応にあたる必要性を訴える意見が上がったほか、酪農関連制度の運用見直しの検討、脱粉・バター需要の跛行性への対応などが課題として上がった。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
農水省内で開かれた畜産部会
お断り=本記事は6月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「季節別乳価導入へ賛否、乳製品の加工費負担は地域に偏り」――第4回生乳の需給等に係る情報交換会
農水省はこのほど、「第4回生乳の需給等に係る情報交換会」(4月26日開催)の議事概要を公表した。季節別乳価に関して、一部の指定団体側から推奨する声が上がった一方、自主流通側からは年間を通じて一定の乳価の方が生産者にメリットがあるとの意見があった。また、需給調整に関して、指定団体側から乳製品工場のある地域に負担が偏っている現状を指摘する意見も見られた。
季節別乳価について、一部指定団体から「需要期生産にはコストがかかることから、季節別乳価を導入すべきではないか。農家にとっては受け取る乳代が一定の方が良いのかもしれないが、コストに応じた乳代にする方が、経済合理性があり、需要期の生産も促すことができる」「乳業メーカーからも需要期生産に努力するよう言われており、2000年から生産者段階での季節別乳価に継続して取り組んでいる。年間の取引の中で、夏場にしっかり出荷した方が、冬場に飲用向けを中心に引き取ってもらえる」との意見が出た。一方、自主流通側からは「夏場に高い価格となるということは、冬場は安い乳価になる、川下からは、下げないと買わないというロジックが成立する場合がある。酪農家目線に立つと一定の乳価の方が安心できるのでは」との意見があった。
他方で、需給調整の現状については、指定団体側から乳製品工場のある地域に加工リスクが偏在化しているとの意見のほか、「需給調整コストは需要期に安定供給するために生じるコスト。加工向け乳価と飲用向け乳価との差の一部や、追加的な加工賃がコストと認識している。この他、不需要期に向けたCSの残乳調整や乳業工場への調整依頼に関するマンパワーなど、目に見えない調整コストが発生する。需給調整の仕組みの維持にどれだけコストがかかっているのか、具体的に数字が出れば議論が進むのでは」などの意見があった。
一方、自主流通側からは年間を通じた乳製品工場の稼働を推奨する声や、「契約農家に頭数の調整をお願いすることで夏冬の生産数量のブレを極力なくしている。契約農家が少ないのでできることだが、細かく飼養頭数等のデータを収集しながら、調整している。また、需給緩和やひっ迫を招かないよう、飼養頭数の増減の振れ幅を緩やかにする必要があるのではないか」との説明があった。
「牛乳乳製品の消費拡大支援、脱脂粉乳の需要踏まえ在庫対策」――農水省・渡邉洋一畜産局長が強調
日本乳業協会が5月17日に開催した定時社員総会後の懇親会の席上、農水省の渡邉洋一畜産局長は、現在の生乳需給状況について「脱脂粉乳の需要は依然として低迷している状況で、大きな課題だと認識している」と強調した。その上で「農水省としても、在庫低減対策や牛乳・乳製品の消費拡大をしっかりと支援していきたい」との考えを示した。
渡邉畜産局長はまた、5月29日に参院本会議で可決、成立した改正食料・農業・農村基本法を踏まえて、今後、関係者間で議論が行われる予定の「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(酪肉近)」について触れ、「我が国の酪農乳業を次の世代にしっかりと良い形で維持発展していけるように、今後とも議論への協力や参加をお願いしたい」と呼びかけた。
懇親会には会員など関係者約250名が参加し、来賓も多数出席した。そのうち、乾杯の発声を務めたJミルクの大貫陽一会長は「業界の持続的な発展には、やはり消費者の業界に対する理解が不可欠だと思っている」と述べた上で、Jミルクとしても理解醸成と牛乳・乳製品の需要拡大に向けて、関係者と連携して取り組んでいく姿勢を改めて示した。
「2024年4月の受託乳量は0.5%増でスタート、飲用牛乳等向け低迷続く」――中央酪農会議・用途別販売実績
中央酪農会議が5月15日に公表した用途別販売実績によると、2024年4月の受託乳量は59万570㌧で、前年同月比0.5%増加した。昨年は関係団体による生産抑制の取り組みに加え、コスト高騰等を背景に酪農家の離農が例年以上に進んだこともあり、大幅な減産でスタート。一方、今年は春に生乳生産量が増える例年と同様に増産となったが、飲用牛乳等向けは低迷が続いており、脱脂粉乳・バター等向けは大きく増加している。
4月の受託乳量をみると、北海道は33万2521㌧で1.0%増、都府県は25万8049㌧で0.1%減。このうち都府県で前年同月を上回った地域は、関東(1.5%増)、近畿(0.9%増)、中国(1.9%増)の3地域。このほか、東北(3.6%減)、北陸(3.9%減)、東海(0.7%減)、四国(1.8%減)、九州(0.1%減)と5地域は下回った。
用途別では、飲用牛乳向けは23万5895㌧で3.3%減、はっ酵乳等向けは3万5234㌧で3.0%減、チーズ向けは2.4%減。飲用牛乳等向けとはっ酵乳等向けの減少幅は、前月と比べると小さくなっているものの、長らく低迷が続いている。
他方で、脱脂粉乳・バター等向けは17万4403㌧で8.0%増、液状乳製品向けは10万7314㌧で0.3%増。特に脱粉・バター等向けは、1月は0.2%増だった一方、2月は4.0%増、3月は9.9%増と前年同月を大きく上回っている状況。飲用向け等の消費低迷も踏まえて、引き続き消費拡大の取り組み推進が課題となっている。
「6月は『牛乳月間』、各地で取り組み展開」――牛乳乳製品の消費拡大に向けて
6月1日の「牛乳の日」を皮切りに、6月の「牛乳月間」には、酪農家などによる牛乳・乳製品の消費拡大に向けた様々な取り組みが全国各地で展開される。生乳生産が2月より3カ月連続増と回復傾向で推移する一方、依然として飲用を中心とした需要面は低迷が続いていることから、今後も関係者が一体となって継続的に消費拡大や酪農理解醸成活動に取り組んでいく必要がある。
牛乳月間では、農水省が消費者の部屋で牛乳の飲み比べや展示(6月3~7日)を実施するほか、全酪連が酪農マルシェ(6月1日)を開催。各地で「父の日に牛乳(ちち)を贈ろうキャンペーン」や、生産者団体や乳業メーカーによる屋外での消費拡大イベント等を開催し、酪農や牛乳・乳製品の魅力発信や消費促進に努める。
「酪政連の木本栄一委員長が死去」――日本酪農の発展に尽力
日本酪農政治連盟の木本栄一委員長(満74歳)が5月28日死去した。告別式は6月1日、埼玉県深谷市のメモリアルホール岡部で執り行われた。
木本委員長は、埼玉酪農業協同組合組合長、関東生乳販連理事、埼玉県酪農協会理事などを務めるほか、これまで、関東生乳販連監事(2009年8月~12年7月)、酪政連副委員長(20年3月~24年3月)などを歴任。酪政連での政治運動をはじめ、長年に亘り様々な立場においてリーダーシップを発揮し業界をけん引、日本酪農の発展に大きく尽力した。
酪政連委員長には今年3月6日に就任したばかり。酪農業界が抱える諸課題に対し問題提起を図り、関係者一体で議論を行っていく意欲を示していた。