全酪新報/2024年11月20号
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「国産飼料増産、担い手・酪農ヘルパー確保へ支援を」――酪肉近策定、生産者側委員から意見・農水省畜産部会

2024-11-20

次期酪肉近策定へ検討を進めている農水省は11月13日、都内で畜産部会を開き、飼料やその他の課題をテーマに議論。酪農家の委員からは、国産飼料増産や担い手確保への支援を求める声が上がったほか、年々減少する酪農ヘルパー要員の確保へ、やる気向上につながるサポート体制の構築が重要だという意見があがった。今後、酪肉近に関しては、来年1月に構成案について意見を交わす予定。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

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東京・九段下の三番町共用会議所で開かれた

お断り=本記事は11月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「農水大臣に江藤拓氏が就任」――第2次石破内閣発足

2024-11-20

11月11日に発足した第2次石破内閣で、農相に江藤拓氏(衆議・宮崎2区、64歳)が就任した。翌12日午前に就任会見に臨んだ江藤農相は「今後、大胆に農政を運営していく。大転換ということであれば、殻を破らなければならない。だからこそ思い切ってリーダーシップを取っていきたい。生産現場の声に丁寧に耳を傾けながら全力を尽くす」と語った。


江藤農相は、資材高騰など農業を取り巻く情勢の変化に加え、今後、基幹的農業従事者の大幅な減少や、農地面積の減少が予測されることから「とてもではないが、食料安全保障を確立するには足りない」と指摘。その上で「こうした環境変化に対応すべく、改正食料・農業・農村基本法の理念実現へ、まず次期食料・農業・農村基本計画をしっかりと策定する。それに基づく制度設計と必要な予算の確保が不可欠。日本の農政は大転換を求められており、このため初動の5年間を『農業構造転換集中対策期間』と位置づけ、計画的かつ集中して必要な施策を講じることで強い生産基盤を確立し、人材確保を図っていく」と述べた。


合理的な価格形成に関しては「資材等の恒常的なコスト増を生産者だけで賄うことが困難となっている中、持続的な食料供給をしていくためにも不可欠」と説明。法制化をめぐっては「やるしかない。特に消費者の理解がなければできない」と語った。


農水副大臣には笹川博義、滝波宏文の両氏氏が就任


政府は11月13日、第2次石破内閣の副大臣、大臣政務官人事を発表した。農林水産副大臣には笹川博義氏(衆議・群馬3区、58歳)と滝波宏文氏(参議・福井、53歳)、農林水産大臣政務官には山本佐知子氏(参議・三重、57歳)と庄子賢一氏(公明、衆議・比例東北、61歳)が就任した。

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これまで農林水産副大臣、内閣総理大臣補佐官、19年9月の第4次安倍第2次改造内閣で農相などを歴任。自民党では、農林部会長、総合農林政策調査会会長など、農林関係の要職を務めてきた

「酪政連など、農林・食品関係6団体から要望聴取」――25年度税制改正・自民党総合農林政策調査会と農林部会等

2024-11-20 11月20日号記事3_宮下会長近影

自民党総合農林政策調査会と農林部会等は11月19日、党本部で会合を開き、2025年度の税制改正をめぐり農林・食品関係6団体から要望を聴いた。今後、12月中を予定する税制改正大綱の決定に向けて議論を進める。(右:宮下会長)


会合の冒頭、総合農林政策調査会幹事長から11月18日付で調査会長に就任した宮下一郎氏は「ひとつでも多く皆様方のご要望を実現できるよう、総合農林政策調査会、農林部会として頑張っていきたい」と意気込みを示した。


団体からは、JA全中や全国農業会議所、日本酪農政治連盟、食品産業センター等がそれぞれ要望を表明。このうち、酪政連の柴田輝男委員長は、軽油引取税の課税免税措置の恒久化、集送乳ローリーの軽油免税措置、車検延長も含めた農家所有トラックの軽減措置の創設等を求めた上で「いま酪農は大変な状況にある。酪農家の経営を助けるためにもお願いしたい」と述べた。

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自民党本部で開かれた会合

「東京・豊洲で土日ミルクフェス2024開催」――Jミルク主催、休日の牛乳消費促進

2024-11-20

Jミルクは11月16日、東京・豊洲の豊洲公園で「土日ミルクフェス2024」を開催した。給食のない休日の牛乳消費促進をテーマに小中学生を主な対象に実施している「土日ミルク」の一環。イベントには、地域交流牧場全国連絡会や全国酪農青年女性会議の会員酪農家をはじめ、中央酪農会議、全酪連、日本乳業協会など関係団体職員や牛乳でスマイルプロジェクトのメンバーらが協力し、イベントを盛り上げた。


会場では、ミルクサプライチェーンのお仕事体験ブースを設置。牛乳の官能評価、店頭向けのPOP作りなどの催しを提供した。このうち酪農のブースでは、つなぎに着替えて酪農家になり切って楽しく学べるコーナーを用意。模擬搾乳体験や、エサの展示を通じ、理解醸成を図った。


また、㈱加茂牧場(加茂太郎交牧連会長、千葉県八千代市)から乳牛が3頭(ホルスタイン種の成牛1頭、子牛2頭)も昨年に続いて登場し、イベント終了間際には酪農家が搾乳を実演、正しい搾乳手順などを解説。普段見ることのない光景に子ども達からもたくさんの歓声が上がった。


加茂会長は「東京のど真ん中に牛がいるといういい意味での非日常感も響き、恒例のイベントとして大勢の人に浸透している。消費は急に増えないかもしれないが、こうした活動がプラスに働くのは間違いない。酪農の未来のためにも、末永く豊洲の地で発信していければ」と話した。


また、今回初参加した全国酪農青年女性会議の中村俊介委員長は「まだ厳しい酪農だからこそ、消費者理解が大切だ。理解醸成のために多くの関係団体・酪農家が同じ方向を向いていることは安心できる。今日のイベントを今後の酪青女活動に活かし、これからも頑張っていく」と語った。

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普段見られない実際の搾乳を見守る来場者たち

「野生鳥獣問題を考える」――第1回


静岡県立農林環境専門職大学名誉教授
小林信一

2024-11-20

「増加する人身被害」


野生鳥獣による農作物被害は、ここ数年横這いで推移しているものの、被害額の問題以上に営農意欲減退や離農などに大きな影響を及ぼしている。酪農でも特にシカによる飼料作物への被害は深刻で、ハンターによる狩猟とは別に、生産者においても電牧や柵など効果的な被害防止対策の検討・実施が求められている。本欄では、今号より静岡県立農林環境専門職大学名誉教授の小林信一氏(一般社団法人全日本鹿協会副理事長・事務局長)に、野生鳥獣問題の現状や課題、必要な対応策等について解説いただく。


「シカも秋の繁殖期は危険に、野生の動物の習性学び対応を」


起きてしまったシカによる死亡事故


近年、シカやイノシシ、クマなどの野生鳥獣による様々な被害が話題に上るようになったが、おとなしいと思われていたシカでも死亡事故が起きてしまった。シカは本来臆病で人間を襲うなどはしないが、秋は繁殖期に当たりオスはメスを争って互いに角を突き合わせたり、ハーレムにメスを囲い込んで他のオスの進入を許さないために突きかかるなどしたりする。この時期のオスは人間にとっても危険な存在だ。


シカに比べると、イノシシやクマは人にとってより危険と言える。イノシシに突進されると、牙がちょうど人間の大腿部あたりに刺さる。動脈を切断されると死に至ることもある。


北海道にのみ生息するヒグマは、これまでも悲惨な人身被害を引き起こしてきた。酪農界では乳牛頭を襲い32頭を殺したと言われる「OSO18」が有名だ。ヒグマも普段は木の実やフキ、セリなどの植物や昆虫などを主に食べており、サケも一種のボーナスのようなものだという。しかし、最近はハンターが狩猟したシカが放置された結果、肉の味を覚えてしまったことが、乳牛を襲うきっかけになったと言われている。


都府県に生息するツキノワグマ(但し九州は絶滅)は、ヒグマより格段におとなしいとされるが、秋になると人が襲われたとの報道がたびたびされる。ほとんどは山菜取りに山に入った方が、出会い頭に襲われたなどのケースが多い。特に子連れの熊は危険とされる。しかし、近年東北で人間を襲う「人食い熊」の出現が地域を震撼させた。こちらも、狩猟後に放置されたシカ肉が関与しているとも言われる。


環境省の調査によると昨年度の人身被害件数は、ヒグマ6件に対しツキノワグマは192件、被害人数はそれぞれ9人、210人と圧倒的にツキノワグマが多いが、死亡者数は2人、4人となっている。イノシシはそれぞれ、47件、65人で死亡者は「なし」だった。ちなみに、シカは公表された数値はないので、そうした被害はこれまではなかったと思われる。


被害にあわないために、どうしたらよいか


全日本鹿協会の事務局にはシカに関する様々な問い合わせがあるが、人身被害の増加に伴って、野生動物に襲われないためには、どうしたらよいかというのがある。野生動物全体に対して言えることだが、背を向けず、ゆっくりとその場を離れるということが基本だろう。逃げようとすると、追いかける習性がある動物もおり、追いかけられたら100㍍10秒で逃げ続けてもまず追いつかれてしまう。クマやイノシシでも時速40㌔以上で走る。「木に登る」という策が書いてある本もあるが、クマは木登りが得意だし、中々上手く登れる木がある時ばかりではないだろう。イノシシがジャンプして人を襲ったということは聞いたことはないが、助走なしで1㍍をジャンプできる身体能力を持つ。


前述したように、出会い頭の遭遇が襲われる要因として多いことから、鈴をつけたり、ラジオをかけながら歩いたりなどして、自分の存在を野生動物に知らしめるということが昔から行われてきた。しかし、人を「餌」として認識したクマなどには却って逆効果だとする警鐘も近年鳴らされている。また、クマやイノシシ、シカあるいはサルが奥山ではなく、都市部にも出現するようになり、都市でも人身被害の恐れが高まってきている。


先年、北海道の丘珠(おかだま)飛行場近くの市街地を歩いていた人が、後ろからヒグマに押し倒されてケガを負ったという「事件」があった。残念ながら、野生動物からの人身被害に全く遭わないための妙案はないようだ。野生動物との緊張関係が高まっていることを認識し、野生動物の習性を学ぶことが必要だろう。


野生動物による交通事故も多発


人身被害には、直接的な動物による咬傷などによるものの他、交通事故に関連したものも多い。北海道では昨年ついにシカに関連した交通事故が年間5千件を超えた。死亡事故も発生しているが、それはシカと衝突して死亡したというよりも、衝突して、あるいは衝突を避けようとして対向車などと衝突して起きたケースが多い。


高速道路では、数百㌔にわたって高さ2.5㍍の防護柵を設置しており、その建設費用と共に維持費用も膨大なものになっている。また、鉄道へのシカの侵入や衝突は、鉄道会社にとって頭の痛い問題となっている。その対策も様々考えられている。例えばシカが嫌がる匂い(オオカミなどの尿の成分を抽出)をしみ込ませて作った忌避剤やLED発光器、あるいは超音波発生器など、様々な製品が生み出されている。


筆者もいくつかの実験を行ったが、効果があったものも一過的にすぎないものであった。近畿鉄道は発想の転換でシカが鉄路を渡るためのシカのための踏切を作っている。しかし、根本的な解決には至っていない。毎年北海道で「野生生物と交通事故」研究会が開かれ、多くの事例が発表されている。なお、交通事故は人身被害のみではなくロードキル、つまり野生動物が車によってひき殺されることも一方で問題とされている。

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牧草地を闊歩するシカ(朝霧高原)

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