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トランス脂肪酸「乳製品由来は心疾患等に関与せず」―食品安全委員会が調査結果を示す
多くの国内外の文献調査から、反芻動物由来のトランス脂肪酸(乳製品、牛肉、羊肉に多く含まれる)の摂取は、冠動脈性心疾患や肥満、糖尿病との関連は認められないことが明らかにされた。
多量摂取を続けると、動脈硬化などの虚血性心疾患のリスクを高めるとされるトランス脂肪酸(TFA)についての食品健康影響評価の調査結果に関する検討会が1月11日、東京都内で開かれ、食品安全委員会の新開発食品専門調査会で概要が示された。
トランス脂肪酸の情報整理、マーガリンなど重要食品の分析結果と摂取量の推定が行われた。我が国で現在、流通しているマーガリンやショートニング中のTFAの分析が実施された。さらに、国民健康・栄養調査のデータを解析して年齢別、性別、肥満度別の摂取量を推定した。また、WHO/FAO、EFSA、フランス、カナダなどの国際機関等の評価書を入手し、翻訳したほか、文献を収集し、データベースが作成された。
調査結果の概要は次の通り。
日常摂取する主なTFAは、マーガリン、ショートニングなどの硬化油、脱臭のためシス型不飽和脂肪酸を高温処理した食用植物油、反芻動物の3つに由来する。硬化油のTFAを多く摂取すると、冠動脈性心疾患、肥満、アレルギー性疾患が増加することが疑われている。また、胎児への影響も懸念され、出生体重の減少や流産、死産のリスクも疑われている。動物実験でも硬化油は動脈硬化を促進し、脂肪を体内に蓄積しやすく、胎児に悪影響を及ぼすことが示されている。
しかし、硬化油に含まれるTFAには非常に多くの異性体が存在し、どのTFAが有害なのかは明らかではない。TFA以外の科学物質が有害である可能性もある。ナタネや大豆などから作られる食用油にもTFAが少量含まれ、これらも健康障害の危惧はある。
一方、反芻動物由来のTFA(乳製品、牛肉、羊肉に多く含まれる)摂取量と冠動脈性心疾患や肥満、糖尿病との関連は認められていない。
また、マーガリン等重要食品中のTFA含量を測定した結果、一般用マーガリン、ファットスプレッドでは同一銘柄で06年度に比較して、10年度のTFA濃度は平均70%前後に減少していた。業務用マーガリン、ショートニングではTFA含量はほとんどのサンプルで1%前後の値だった。
日本人の摂取量についての解析結果は、工業的に生産されるTFA(硬化油由来と食用油由来の合計)摂取量の中央値は男性で1日当たり0.292㌘(0.13%エネルギー)、女性で0.299㌘(0.16%エネルギー)であった。
年齢別では若年層に多く、男性15~19歳で0.439㌘(0.17%エネルギー)、女性7~14歳で0.409㌘(0.20%エネルギー)であった。