ニュースと話題/2011年12月
大手乳業の中間決算は「3社とも減収減益」―大震災により製造から流通まで大きな影響
明治、森永、雪印メグミルクの大手乳業3社の上期(12年3月期第2四半期)決算が11月10日までに出揃った。今年度の上半期の販売実績は、㈱明治(事業子会社)が1815億円、7.1%減、森永乳業㈱(単体)は2302億円、3.7%減、雪印メグミルク㈱は2585億3800万円、0.4%減となった。
3社とも3月に発生した東日本大震災の影響で減収減益決算となった。工場や物流拠点の被災に加え、計画停電により発酵に時間がかかるヨーグルト生産が大きく影響を受け減少した。牛乳は依然として低迷が続いている。3社とも下期は順調に回復基調にあるとしている。
㈱明治の中間決算は市乳部門が9.4%と苦戦―下期は主力商品回復へ
明治ホールディングス(HD)は11月10日、12年3月期上期(4~9月)の決算を発表した。微増収大幅減益だった。東日本大震災で工場が被災するなどの影響を受け、特に市乳は大幅に減少した。事業子会社の㈱明治の牛乳類は472億円で7%減少、ヨーグルトは525億円で11%減少した。下期は大震災の影響から回復するため、上期に苦戦した主力商品は前年を上回ると見込んでいる。
㈱明治の乳製品事業は、1815億円で7.1%減少した。部門別内訳は、市乳部門(牛乳類、ヨーグルト、飲料など)は、1310億円で9.4%減、乳食品部門(チーズ、バター、業務用乳製品等)は、505億円で0.6%減とそれぞれ減少した。マーガリンは好調、粉ミルクは買いだめの反動などで苦戦した。
主力商品も減少し、「おいしい牛乳」は247億円で7.5%減、ブルガリアヨーグルトは332億円で5.4%減、プロビオヨーグルトLG21は150億円で14.4%減、北海道十勝チーズは51億円で5.5%減とそれぞれ減少した。
上期の集乳量は65万9千㌧、6.8%減で、そのうち北海道は40万3千㌧、3.4%減、都府県は25万6千㌧、11.2%減だった。
菓子や健康・栄養、医薬品を含めた明治HDの売上高は5481億円で2.1%減少。利益面では、営業利益は74億円で58.9%減、経常利益は86億円で54.8%減、純利益は23億円で74.8%減の大幅な減益となった。営業利益は売上高減少による要因が34億円で最も大きく、原料調達コストの上昇は23億円だった。
森永乳業(連結)の中間は売上高が2.2%減―電力不足等で40億円減収
森永乳業は11月10日の今年度上半期中間決算(連結)を発表した。第1四半期は東日本大震災の影響、第2四半期は天候の影響を大きく受け、減収減益となった。売上高は3093億円で2.2%減、営業利益は109億8500万円で23.2%減、経常利益は111億2300万円で22.4%減と減収減益となった。
大震災による減収の要因のうち、大きなものはサプライチェーンの寸断、電力の制約によるヨーグルト、牛乳、乳飲料、紅茶飲料の供給が維持できなかったことによる影響が約40億円。3月11日の大震災の発生直後から育児用粉ミルク、流動食の「仮需要」が発生、買い溜め的な消費行動による4月以降の売り上げ減少が約10億円と見込んだ。第2四半期の天候要因は猛暑だった前年同期が「良すぎた」(専務執行役員三浦幸男財務部長)ことなどから、天候要因の影響は約25億円だった。
減益への影響は生乳価格値上げ(約4億円)を含む原材料(輸入コーヒー等)単価値上げの影響が約17億円だった。
部門別実績では、市乳のうち牛乳類でPB商品の売り上げが減少したが、「森永のおいしい牛乳」は7.3%増と大きく伸びた。売上が伸びたデザート類では、プリン等は5.3%増加した。また、乳製品のうち粉乳は大震災以降の買い溜めの反動と、中国での特需がなくなったことで、12.5 %減少した。その他のうち、大震災の影響を大きく受けたリプトン、サンキスト等の飲料は、大震災直後に資材が揃わず供給不能になった時期があったため23.1%減と大きく減少した。
通年の業績予想は、売り上げが当初予想から130億円減の5710億円、営業利益は48億円減の141億円、経常利益は47億円減の140億円といずれも下方修正した。
雪印メグミルク㈱の中間は市乳部門が9.4%と苦戦―下期は主力商品回復へ
雪印メグミルク㈱は11月4日、今年度上半期中間決算(連結)を発表した。今年4月、日本ミルクコミュニティ㈱と雪印乳業㈱が合併して初めての決算は、東日本大震災の影響で減収減益となった。売上高は2585億3800万円で0.4%減、営業利益は82億1300万円で5.8%減、経常利益は90億8千万円で5.6%減。四半期純利益は56億7600万円で、5.6%減だった。
同日、本社で決算発表した中野吉晴社長は大震災の影響等に言及し、「施設への被害に加えて計画停電、節電による生産・物流の減少、新商品の発売時期の遅れなど、経営環境は厳しかった」と総括した。また、商品別の対応として「牛乳は震災直後に一時的に品薄となったものの早期に回復。ヨーグルトは、計画停電の影響を受け回復に時間がかかったが、6月から前年を上回っている」と説明した。
部門別実績の概要は別表のとおり。同社がカテゴリーナンバーワン戦略に位置付けているヨーグルト、ナチュラルチーズは、新商品の投入効果により売上高は伸長した。特にヨーグルトは大震災の影響で一時的に減少したが、第2四半期から販売量が大幅に拡大している。
通年での業績予想は、売り上げは当初の見込みから100億円減額し、5150億円。営業利益は170億円で変更はなかった。
戦略的設備投資の一つである茨城県阿見町に建設する乳製品統合工場は大震災の影響で、稼働予定を2014年度下期に1年繰り延べたが、北海道の大樹工場新棟(さけるチーズ生産能力向上、2012年度上期稼働)と、神奈川県の海老名工場再構築(市乳・乳飲料の新基幹工場、2012年度下期稼働)はそれぞれ予定どおり実施する。
チーズフェスタに6千人のファンが来場―16カ国・314種類ものチーズ
11月11日の「チーズの日」にちなみ、渋谷区神宮前のベルサール原宿で11月11~12日の2日間、第20回となる「チーズフェスタ2011」(主催=チーズ普及協議会、日本輸入チーズ普及協会)が開かれた。日本をはじめ米国、欧州、オセアニアなど16カ国・314種類のチーズが一堂に集まり、2日間で約6千名が来場した。
会場には試食・販売コーナー、調理方法やワインの選び方についての相談コーナーに多くのチーズファンが押し寄せた。特に今年は20周年企画として、一般公開前日の11月10日に酪農・乳業関係者らを招きオープニングセレモニーと記念セミナーを行った。
≪メモ≫日本における「チーズの日」は1992年、チーズ普及協議会と日本輸入チーズ普及協会が制定。チーズの元祖とされる蘇(そ)について、文武天皇が西暦700年11月(新暦)に製造・献上を命じた記録に基づき、覚えやすい11月11日を記念日としている。
酪農教育ファームのスキルアップ研修会―関東など全国7カ所で実施
(社)中央酪農会議は11月14日、東京・日本橋の東京八重洲ホール会議室で2011年度酪農教育ファームスキルアップ研修会(関東会場)を開催した。酪農教育ファーム活動に取り組む酪農家、酪農場の職員など47名が出席した。
研修会の冒頭、まず、中酪の中島靖勝酪農理解対策室長が酪農体験活動における安全・衛生対策について解説。続いて、武庫川女子大学の藤本勇二講師が「引き込み、引き出し、学びを創る」のテーマで食育の授業の考え方、進め方について講演した。その後、5つのグループに分かれてグループ討論、グループ発表、意見交換を行った。今年度のスキルアップ研修会は9~12月にかけて全国7カ所で開催された。