ニュースと話題/2012年2月
業績は回復傾向も「大手3社ともに売上高は減少」―12年3月期第3四半期
明治、森永、雪印メグミルクの大手乳業3社は、2月13日までに12年3月期第3四半期決算を発表した。3社とも東日本大震災によって寸断されたサプライチェーンの早期立て直しを図り、業績は回復傾向にあるが、景気が低迷する厳しい市場環境の中、売上高は前年を下回った。
明治
明治ホールディングス㈱の事業子会社・㈱明治の食品セグメント(乳製品、菓子、健康栄養、その他)の業績は、売上高が7471億円で1.5%減、営業利益は104億円で55.3%減となった。食品セグメントは大震災の被害により、特に第1四半期の市乳が前年実績を大きく下回ったが、第2四半期以降は想定どおりに推移している。その結果、全体の売上高は概ね前年同期並みに回復した。
食品セグメント乳製品事業のうち、市乳では第1四半期に売上が大幅に減少した主力の明治ブルガリアヨーグルト、明治プロビオヨーグルトLG21は、第2四半期から積極的な市場開拓により前年並みになり、第3四半期は前年を超えるまでに回復した。
なお、明治ホールディングス全体では、同期の売上高は8382億9千万円で1.3%減、営業利益が207億2800万円で38.1%減、経常利益は218億3300万円で36.3%減、四半期純利益は100億6900万円で43.6%減だった。
森永
森永乳業㈱の連結業績は、売上高が4507億3200万円で1.9%減、営業利益が132億6100万円で29.8%減、四半期純利益は50億1110万円で45.5%減の減収増益となった。
大震災や夏場の猛暑などの影響を受けて売上高は減少し、利益面では売上減少や原材料をはじめとする原価の上昇により大幅に減少した。四半期純利益については、大震災による特別損失10億円、効率的な生産体制の構築を目的とした設備集約のための費用16億円を計上するなど、大幅に減少した。
また、森永乳業単体の製品分類別では、市乳合計の売上高は1540億6千万円で1.3%減。そのうち牛乳類は567億800万円で4.7%減、乳飲料等は520億1400万円で1.9%増、ヨーグルトは349億3400万円で2.7%減だった。
乳製品合計の売上高は704億4700万円で4.2%減。そのうち粉乳は242億7800万円で11.5%減、バターは92億2500万円で4.8%減、チーズは336億200万円で1.4%増、アイスクリームは427億1900万円で3.8%減となった。
雪印メグミルク
雪印メグミルク㈱の連結業績は、売上高が3903億4400万円で0.1%減、営業利益が138億3200万円で4.3%減、経常利益が150億8100万円で5.3%減、四半期純利益が97億9800万円で22.3%増だった。
セグメント別の売上高は、乳製品が1368億円で0.5%減となった。生乳需給ひっ迫の影響を受けたもの。このうちチーズは498億円で0.8%増と生産設備増強を進めている「さけるチーズ」を筆頭にナチュラルチーズが好調に推移した。
一方、飲料・デザート類は1960億円で0.9%減少した。清涼飲料は好調だったが、前年好調だった加工乳の落ち込みをカバーできずに減収となった。そのうち、市乳は1553億円で3.2%減。白物飲料は628億円で6.0%減、色物飲料は447億円で前年並みとなった。
はっ酵乳は270億円で6.5%増、計画停電の影響や市場競争が激化する中、主力ブランドの「ナチュレ恵み」が売上をけん引した。
その他、飼料・種苗は355億円で8.8%増、配合飼料の販売価格上昇と販売数量の増加で増収だった。
酪政連が早急な除染対策を農水省に要請―4月からの新基準で・自民党が畜産・酪農対策小委員会を開く
日本酪政連(佐々木勲委員長)は2月10日、自民党が党本部で開いた農林部会畜産・酪農対策小委員会(野村哲郎委員長)で、12年度畜産酪農関連対策・畜産物価格に関する要請を行った。佐々木委員長は、東電原発事故で、特に東日本において自給飼料を重視してきた酪農家が依然として苦境に立たされていることを報告し、牧草地の除染等早急な対策を求めた。
要請で佐々木委員長は「生産費削減を目指し粗飼料の自給を進めてきたところに(飼料中の放射性セシウムの)暫定許容値の見直しとなった。酪農家も経営努力しているが除染等の対策もお願いしたい」と粗飼料の安定確保に向けた支援を強く求めた。
同委員会にはJA全中の飛田稔章畜産・酪農対策委員会酪農委員長も出席。加工原料乳生産者補給金決定に当たっては「現行以上」、限度数量は「現行を基本に適正水準を」それぞれ要請した。
農水省は12年度予算で、チーズ向け生乳への助成(1㌔当たり一律14.6円、最大60万㌧)に加え、需給状況に応じて生産者自らが乳製品を製造・需要創出する取組に充てる生産者需給調整機能強化対策事業(最大6万㌧、製造費の2分の1)を新たに実施することについて、出席議員が「不需要期対策の必要性は理解できるが、製造費の生産者負担について各団体とよく打ち合わせしたうえで実行すべきだ」と農水省の適切な対応を指示した。
生産者需給調整機能強化対策事業について佐々木委員長は「不需要期対策としては評価しているが、6万㌧で十分なのかという不安もある。生産者負担や補助対象等を農水省とともに検討して詳細を示してほしい」と事業の詳細な説明を求めた。
飛田委員長は「バター不足が生じないことを前提に組合員の所得確保に結びつく対策を要請してきており、非常に評価しているが、単年度ではなく恒久的なものを望む」と重ねて要請した。
酪政連が事務局長会議を開き、11年度の活動報告などを行う
日本酪政連(佐々木勲委員長)は2月15日、東京都内で約30名が出席して事務局長・担当者会議を開いた。また、農水省牛乳乳製品課の本田光広課長補佐が最近の酪農情勢について講演し、研修を行った。
会議では「酪農政策・予算の確保運動をはじめ、東日本大震災対策やTTP交渉参加阻止運動に間断なく取り組んできた」などと11年度の運動報告・収支決算の概要が報告された。
酪政連の12年度予算案は、2月23日開催の中央常任委員会を経て3月2日の通常総会に上程されることが報告されたが、基本会費の枠組みに大きな変更はないとした。
会議であいさつした佐々木委員長は11年度を振り返り、大震災と原発事故により東北・関東などの酪農家が今も大きな影響を受け続けている厳しい現況を紹介。「酪農家が経営継続に不安が出ている。酪政連として農水省とじっくり連携しながら取り組んでいきたい」と述べた。
「要望が高いハイグレードWCS」ALICの事業の中にも関連事業
農水省牛乳乳製品課の本田光広課長補佐は2月15日に開催された酪政連事務局長・担当者会議に出席。12年度農林水産予算案の概要を中心に、4月からの放射性物質の新基準値への対応などについても説明した。
その中で本田課長補佐は「各地から要望の大きいハイグレード稲発酵粗飼料利活用推進事業については、ALIC畜産振興事業(その他対策)の国産畜産物安心確保等支援事業の中に、国産稲発酵粗飼料の流通促進を支援する事業があるので、代替事業として利用を検討してほしい」などと述べた。