乳滴/2026年5月20日号
花の名は
横断歩道の信号待ちの間、そばの花壇の見事なフリージアを眺めていたら、理髪店から出てきた店主らしいオジサンから「どうぞゆっくり見ていって。家内の趣味です」と声をかけられた。自慢の花壇らしく、しばらく話を聞くことになった。
花など昔はまったく関心がなかった。花見に出掛けてもダンゴ(というかビール)にしか関心がない人生。どのくらい無知だったかというと、記念日にきれいな花束(安かった)を得意気に買って帰ったら、家族に「これは仏様にあげる花」と教えられたほど。
生来不器用で日々大したことをしているわけではないが生きることに精一杯、腹の足しにもならない花の名など知らなくても別に構わなかった。
そんな殺風景な暮らしに近年変化が。北風冷たい正月の陽だまりでポツリ咲く梅。一面の枯野の下にのぞくホトケノザ。サクラ、ヤマブキ、フジ、ツツジ、サクラソウ。冬に蓄えた力を一気に発散させる様子に近頃感銘を受ける。
そういえば家の年寄りが道端の花の名を「これは〇〇あれは□□」と言いながら、時には通りすがりの他人と意気投合しつつ花をめぐるおしゃべりになるようなことがあった。花を通じて知らない人と話し込む。そんな年頃に、いつか私もなっていた。









