全酪新報/2021年10月1日号
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「新規就農対策のメニュー拡充、最大1千万円無利子で融資」――要件の詳細は検討中
2022年度農林水産関係予算概算要求では、新規就農者支援として今年度措置している「農業人材力強化総合支援事業」を見直す。同事業の農業次世代人材投資事業(経営開始型)の後継事業として、49歳以下の認定新規就農者を対象に、経営開始に必要な初期投資の資金を「最大1千万円」無利子で融資できるようメニューを拡充する。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は10月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「全酪連が乳配価格1550円下げ」――中国需要一服で、依然価格動向に注視必要
全酪連は9月21日、10~12月期の牛用配合飼料価格を前期(7~9月期)に比べ、「全銘柄平均1㌧当たり1550円」値下げすると発表した。中国向けの輸出需要が落ち着きをみせ、トウモロコシや大豆粕の国際相場が軟調に推移したのが要因。産地の南米での天候不安、海上運賃は堅調が続いていることから、今後も動向には注視する必要がある。配合飼料価格は昨年10月期から4期連続で値上げが続き、値下げに転じるのは5期ぶり。
配合飼料原料をめぐっては、主原料のトウモロコシが一時は7㌦超/㌴まで上昇していた(シカゴ相場)が、9月現在は5㌦/㌴程度で推移。原料高騰に伴い、20年度第4四半期に2年ぶりに通常補填が発動し、続く21年度第1四半期には通常補填に加え異常補填も8年ぶりに発動した(計547億円)。8月頭時点の財源は、異常補填約394億円、通常補填約464億円。
一方、哺育飼料価格は1㌧当たり3万9千円値上げする。脱脂粉乳やホエイなどの原料需要の堅調により高止まりで推移している。値上げは3期連続で上げ幅は1㌧当たり9万円。
ホクレン 高騰対策継続㌧当たり2千円
9月17日には、ホクレンも10~12月期の全畜種平均の配合飼料価格を㌧当たり約1600円値下げすると発表。これに合わせて、前期(7~9月)に実施していた配合飼料価格高騰特別対策を継続すると発表した。前期の倍の総額4億円、1㌧当たり2千円の対策費を講じる。
今回も継続する特別対策は、今後の配合飼料安定基金の補てん金単価が大幅に減少し、生産者負担の増加が見込まれることから実施するもの。会員農協へ供給する配合飼料を10年1日分から12月末出荷分を対象としている。
「牛乳統計8月、天候不順等で牛乳消費5.2%減少」――生乳生産は7カ月連続増加
農水省が9月28日に公表した8月分の牛乳乳製品統計によると、8月の生乳生産量は62万8214㌧で前年同月比3.4%増となった。生乳生産は7カ月連続増加で推移する一方、牛乳生産量(消費)は昨年の巣ごもり需要増の反動や天候不順等の影響により、8月は25万9418㌔㍑で5.2%減だった。前月同様に需要が伸びる夏場においても低迷している状況で、脱脂粉乳及びバターの生産量も大幅増の状況が続いている。
生乳生産量のうち、業務用は2万5479㌔㍑で9.0%増、学乳は5623㌔㍑で64.9%減。牛乳全体では6月より前年同月を下回っている一方、業務用は3月より徐々に回復傾向で推移している。学乳は昨年の夏休み短縮の反動から下回ったが、コロナ以前の例年と概ね同程度の水準となっている。
他方で、加工乳・成分調整牛乳は3万2542㌔㍑で3.1%減、乳飲料は9万5605㌔㍑で8.2%減、はっ酵乳は8万6551㌔㍑で2.2%減。いずれも牛乳同様に低調で減少幅も拡大している。
このほか、乳製品の生産量は、脱乳は1万2265㌧で25.1%増、バターは6035㌧で17.7%増とともに増加傾向で推移。月末在庫量は、脱粉は9万547㌧で6.8%増、バターは4万2410㌧で6.2%増。特に脱粉の在庫対策が急務となっている。
「畜産ICT事業、今年度同額の13億円要求」――引き続き省力化を支援
畜産局畜産振興課は2022年度農林予算概算要求の中で、酪農・肉用牛の省力化などを支援する「畜産経営体生産性向上対策」(=畜産ICT事業、旧楽酪事業)に今年度と同額の13億円を要求。搾乳ロボットや発情発見装置、自動給餌機等の先端技術導入などを通じて、引き続き酪農・畜産農家の省力化や生産性の向上の取組を後押しする。畜産経営のICT化のための調査の支援が外れた以外、今年度とメニューや要件は変わらない。
畜産農家の省力化・生産性向上に向け、同事業では今年度と同様に搾乳ロボットや発情発見装置などのICT関連機械の導入を後押しする(補助率:2分の1以内、1戸あたり2500万円上限)。要件も「労働時間1割削減」から変更はない。
また、乳頭交差などロボット搾乳不適合家畜等に関する調査なども今年度と同様に支援する(定額)。
このほか、今年度も実施している全国データベースによる生産関連情報の一元的集約化と、それに基づく高度かつ総合的な畜産経営のアドバイスを提供する体制の構築等も支援する(定額)。
「緊急事態宣言9月で終了」――飲食店制限は段階的に緩和
政府は9月30日、ワクチン接種の広がりなどを背景に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発令していた19都道府県を対象とした緊急事態宣言、8県を対象としたまん延防止等重点措置について全面解除した。
菅義偉首相は28日に行われた新型コロナ対策本部で議論した内容を踏まえ、その後開いた記者会見で「期日の30日をもって解除し、ウイルスへの警戒を保ちつつ、飲食などの制限については段階的に緩和する」などと述べた。
緊急事態宣言の発令と延長により、牛乳・乳製品も業務用需要の低迷など需給全般に大きな影響を及ぼしており、乳製品在庫の解消に向けた対策を講じる必要がある。
「牧場で輝く家畜の命」連載⑤ 瀧見明花里さんの写真エッセイ

ゼンキュウファーム(北海道広尾町)のジャージー牛

夕日に染まる牧場。もうすぐ搾乳が始まる
牧場に到着すると「ワンワン!」と元気なお出迎え。敷地内を案内してもらうと、牛さん、豚さん、鶏さん、お馬さん、ニャンコさんとご対面。大勢の動物たちと会うことができ、ウキウキが止まりません。「自由に撮って良いよ」と、撮影を開始。
しゃがみ込んでカメラを構えていると、近くに1台の車が止まり、こちらをじっと見ています。挨拶をすると「子牛が生まれたのかと思ったよ!」とのお返事が。どうやら私の撮影している姿が生まれたての子牛に見えた模様。そんなやりとりをしていると、あっという間に夕暮れ時になりました。
夕焼け空の下、虫たちの鳴き声だけが響きわたる放牧地に、白い鼻息を吐く牛さん。あまりにも美しく、シャッターを切るのを辞めて目に焼き付けます。「最高だなぁ」心の中でそう呟いて見惚れていると、夜の搾乳の時間がきてしまいました。私もちょっぴり酪農家さん気分で一緒に牛追いをさせてもらい、牧場を後にしたのでした。(全酪新報では毎月1日号に掲載しています)
プロフィール
瀧見明花里(AKAPPLE)

農業に触れるためニュージーランドへ1年3ヶ月渡航。2017年より独立。『「いただきます」を世界共通語へ』をコンセプトに、牛、豚、鶏をはじめとする家畜動物を撮影、発表。家畜の命について考えるきっかけを届けている。
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