全酪新報/2022年10月1日号
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「基金補填とは別に配合1㌧6750円交付」―生産コスト削減が要件・飼料高騰対策

2022-10-01

飼料等の高騰を受け、農水省は9月20日、2022年度コロナ等対策予備費で飼料価格高騰緊急対策事業に504億200万円を計上した。生産コスト削減など事業要件を満たす生産者を対象に、配合飼料対策として基金制度とは別で1㌧当たり6750円、粗飼料対策として都府県は経産牛1頭当たり1万円、北海道は同7200円の交付を決めた(一部既報)。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

お断り=本記事は10月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「酪農の景況感大幅に悪化」日本政策金融公庫調べ――生産コスト高の影響深刻

2022-10-01

日本政策金融公庫が9月21日に公表した2022年上半期の農業景況調査の結果によると、資材コストの高騰や円安進行等の影響悪化を背景に、農業全体の景況DI(※)は大幅マイナスだった前年実績よりさらに悪化。生産コストの景況感についても全業種とも影響は深刻で、過去最低水準を記録した。酪農の景況も前年実績より北海道42.9㌽低下、都府県46.7㌽低下。特に都府県の景況感を示す値は他業種と比べても最も低く、マイナス80を超えた【図】。資金繰りや生産コストの景況感も悪化が顕著で、このうち生産コストは20年と比べ2倍以上にまで景況が悪化していることが明らかとなった。


酪農の景況DIは、15~19年は概ね好調だった一方、北海道と都府県ともに20年より悪化。大幅に悪化した21年以上に22年はマイナス幅が拡大し、北海道75.7㌽、都府県86.2㌽となった。22年通年ではさらに悪化すると公庫は見ている。


経営状況の景況感をみる資金繰りDIについては、北海道は21年より33.1㌽低下のマイナス63.4、都府県は35.2㌽低下のマイナス77.1とともに大幅に悪化。また、生産コストDIは、北海道が11.3㌽低下のマイナス92.3、都府県は13.9㌽低下のマイナス95.3だった。飼料高騰や円安の進行など、コスト上昇による酪農経営への影響は大きい。


飼料費3~5割増加


今回の公庫調査では、景況調査のほかに原材料費高騰の影響や今後の対策の意向も調査。原材料費のうち飼料費は、調査に応じた畜産農家の6割超が「前年比30%以上増加した」と答えたほか、酪農では北海道は18.7%、都府県では24.9%が「前年比50%以上増加した」と回答していることが分かった。飼料コストは高止まりが酪農経営に大きな影響を与えている。


「前年比50%以上増加した」との回答を原材料費の項目別でみると、農薬・薬品費で割合が高かったのは、畑作、酪農(北海道)、稲作(北海道)。燃料動力費では施設野菜、茶、酪農(北海道)。その他資材費で割合が高かったのは酪農(北海道)、養豚、肉用牛。酪農については、飼料費の高騰は都府県、そのほか原材料費では北海道において影響が大きかった。


今後の対策については優先度の高いものから5つを回答する形で調べたところ、酪農では北海道は「原材料の使用量低減」が最も多く53.7%、次いで「補助金・価格補填等の利用」「仕入先等との価格交渉」が上位に。都府県は「補助金・価格補填等の利用」が最も多く43.8%、次いで「使用原材料の変更」「資金の借り入れ」との回答が目立った。


9月10日号記事2-画像

「全酪連配合10~12月期、前期価格を据え置き」――原料等軟調も円安に懸念

2022-10-01

全酪連は9月22日、2022年10~12月期の牛用配合飼料価格及び哺育飼料価格について、前期(7~9月)価格を据え置くと発表した。原料のトウモロコシのシカゴ相場は6月に760㌣/㌴前後で推移したものの、米国産地で好天に恵まれ7月には600㌣/㌴まで下落。その後、高温・乾燥等による作柄悪化懸念を背景に、22日現在で680㌣ほどまで上昇している。


海上運賃は5月に85㌦/㌧前後で推移していたが、原油相場下落や輸送需要減少などにより軟調に推移し、9月には60㌦前後まで下落。為替相場は27日現在144円後半まで円安が進行しているが、飼料情勢や海上運賃などを踏まえ前期価格から据え置く。


配合飼料価格は20年10~12月期から21年7~9月期まで4期連続値上げとなったが、10~12月期は一転して値下げへ、その後22年1~9月まで3期連続で値上げとなった。価格上昇が足ぶみするのは1年ぶりだが、依然として高値水準が続いている。


なお、JA全農とホクレンも26日までに、同期の配合飼料価格(全畜種平均)を前期価格から据え置くと発表。このうちホクレンは、前期(7~9月期)まで実施していた配合飼料価格高騰特別対策を継続すると発表した。10月1日から12月31日出荷分を対象に、㌧当たり1千円の対策費を講じる。対策総額は2億円。

「乳業大手3社、11月より、製品値上げへ」――原材料の上昇受けて

2022-10-01

乳業大手3社は9月16日までに、11月1日出荷分より製品価格の値上げを実施すると発表した。11月分からの飲用・はっ酵乳向け乳価の10円値上げ、国際的な原材料価格や物流費コストの上昇、エネルギーコストの高止まり等が要因で、各社とも企業努力のみでのコスト吸収の範囲・水準を超えるとしている。値上げにより想定される牛乳・乳製品の消費への影響に加え、10月より多くの食品や外食産業において値上げされる状況の中で、一層の消費拡大が求められる。


各社における価格改定の対象商品数及び改定率は、▽㈱明治は115品、希望小売価格2.0~7.5%、出荷価格2.8~6.1%▽雪印メグミルク㈱は83品、市販用:希望小売価格4.0~12.5%、宅配用:出荷価格5.3~8.3%、業務用:出荷価格7.4~9.2%▽森永乳業㈱は91品、希望小売価格3.6~10.5%、出荷価格3.8~10.2%。改定率は各社ともバラつきがある。なお、森永は育児用ミルク他について12月1日出荷分より値上げする方針。


牛乳消費拡大 業界全体で ㈱明治・松田社長


明治が北海道恵庭市に新たに設立した恵庭工場の稼働にあたり、9月14日に開いたオンライン発表会で、同社の松田克也社長は11月からの値上げによる需要への影響について「牛乳全体では非常に厳しい状況になると思っている」と指摘。その上で「独自で需要喚起すべきことはしっかりやる。一方、業界全体でやるものはJミルクを中心に行っていかなければならない。かつての余乳処分が起きないよう関係組織と連携を取りながら対策を打っていきたい」との認識を示した。

「台風14号被害、九州管内39戸で生乳廃棄」――牛舎や倉庫の一部損壊も

2022-10-01

非常に強い勢力で九州を直撃した台風14号は9月18~19日にかけて九州に上陸。土砂災害など甚大な被害が発生したほか、鹿児島県の一部地域では19日から8日間停電が続いた。27日現在、酪農関係では生乳廃棄が発生したほか、牛舎や倉庫、牧場施設の一部損壊等が多数発生した。


九州生乳販連によると、酪農家における人的被害は無かったものの、19日には停電等の影響で管内の酪農家39戸で生乳廃棄が発生した。福岡県1戸、佐賀県3戸、長崎県1戸、熊本県7戸、大分県4戸、宮崎県13戸、鹿児島県10戸で、推定量は36㌧。


また、台風15号の影響で静岡県等では23日から記録的な大雨となり、断水や停電、土砂災害が各地で発生、関東生乳販連によると酪農関係の被害はない。

「Grass Go、水耕栽培で粗飼料生産」――室内で自動的の作業

2022-10-01

水耕栽培により室内で粗飼料を生産する装置、ハイドログリーングロウシステムを日本に導入、販売しているGrass Go社のデモ機展示場(栃木県大田原市)を訪ねた。同システムは室温20~24度、湿度70%程度に保たれた室内で、天候に左右されず安定した品質・収量で、粗飼料を生産するシステムだ。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

「牧場で輝く家畜の命」連載⑰瀧見明花里さんの写真エッセイ

2022-10-01
牧場で輝く家畜の命⑰ A

「ゼンキュウファーム」(北海道広尾町)のホルスタイン

牧場で輝く家畜の命⑰ B

水を飲むウシさん

朝の搾乳を終え、牛さんたちは奥にある放牧地へと大移動。1列になって、先頭の牛さんに着いていきます。私は一頭、また一頭と牛さんを見送り、列の後ろまで待ってから後を追うことにしました。


最後尾の牛さんを発見し、マイペースに給水スポットで休憩を挟みます。先客の牛さんが飲み終わるのと交代で、ものすごい飲みっぷりを披露してくれました。「ゴキュッゴキュッ」と音を立てて、コマーシャルかのように美味しそうに水を飲む牛さん。一向に終わる気配のない給水タイムに、私は思わず「まだ飲むの?」と尋ねました。


そんな言葉は届くことなく、取り残された1頭と一人。すると、思い出したかのようにハッと顔をあげ、心細そうな声で「モォ〜ッ」とひと鳴き。その後、牛さんは慌てて駆け足で立ち去りました。その姿はまるで「待って〜」と背中を追う子供のよう。見事にひとり置いてきぼりを喰らった私は失笑し、トボトボと後を追ったのでした。(全酪新報では毎月1日号に掲載しています)


プロフィール


瀧見明花里(AKAPPLE)


農業に触れるためニュージーランドへ1年3ヶ月渡航。2017年より独立。『「いただきます」を世界共通語へ』をコンセプトに、牛、豚、鶏をはじめとする家畜動物を撮影、発表。家畜の命について考えるきっかけを届けている。


※写真の無断使用はご遠慮下さい

https://photographer-akapple29.com/

連絡先・MAP

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東京都渋谷区代々木1-37-2
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