全酪新報/2022年11月10日号
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「政府、生産抑制1頭当たり15万円交付」――乳製品の長期保管含め57億円、第2次補正予算案で措置
政府が11月8日に閣議決定した22年度第2次補正予算では、生産抑制の取り組みや乳製品の長期保管等を支援する生乳需給改善対策に57億円を計上した。生乳約40万㌧と見込まれる需給ギャップの早期解消に向け、生産者や生産者団体の取り組みを支援する。このうち低能力牛の早期淘汰の取り組みに対し、生産者団体の一定負担(5万円)を要件に1頭当たり15万円(3~9月)の奨励金を交付する。来年3月以降、経産牛4万頭規模を想定している。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は11月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「畜産クラスター事業、飼料増産優先枠を拡充」――新たに省エネ優先枠新設
2022年度第2次補正予算では、畜産クラスター事業に555億円(所要額)を計上した。要件を満たせば優先的に採択される枠として、新たに「省エネ優先枠」を設定するほか、2021年度補正で新設した飼料増産優先枠を、より施設・整備への支援を重点的に行えるよう拡充する方向で検討している。
事業メニューの内容等は基本的に変わらない。コロナ禍により畜産物の需給も影響を受けている一方、中長期的には国内の生産基盤強化が課題となることから、引き続き生産基盤の維持・強化に必要な機械導入や施設整備等を後押しする。
同事業のメニューは、①施設整備事業②機械導入事業③調査・実証・推進事業④畜産経営基盤継承支援事業――の4つ。優先枠としては既存の中山間地域優先枠、輸出拡大優先枠、肉用牛・酪農重点化枠に加え、牧柵や飼料生産・調整機械、子実用トウモロコシ収穫機等の整備を支援する飼料増産優先枠を設定している。また、新たに設定する省エネ優先枠は、電気使用量等の削減に取り組む協議会を優先採択し、省エネに資する機器の導入を支援するもの。ヒートポンプや省エネ型換気装置、ヒートポンプと一体的に導入するバルククーラー等を対象に検討している。
「乳協・松田副会長、乳価引き上げの影響懸念」――需給緩和へ一体で対応を
農水省が11月7日にオンラインを併用して省内で開いた食料・農業・農村政策審議会畜産部会(三輪泰史部会長)の席上、松田克也委員(日本乳業協会副会長、㈱明治社長)は11月からの乳価引き上げによる生乳需給への影響及び当面の需給対応等について「乳業者として最も心配しているのは、乳価引き上げに伴い、生乳需給が一層緩和し、乳製品向けの増加が想定されること。今年の年末年始や年度末にはこれまで以上に高い確率で処理不可能乳の発生が懸念される」と強調した。乳業者として処理不可能乳の発生防止に向けこれまで以上に最大限の努力を図る姿勢を示した上で、関係者間での情報共有や対処方針を検討する必要性を挙げるとともに、行政に対しても当事者感覚を持った上での一層の指導・協力を求めた。
また、需給対応のうち、生産者が取り組んでいる生産抑制対策について、一層強化する必要があると指摘。「生産者団体の自主的な努力だけでは実現が困難と考える。生産抑制に取り組む生産者の負担が大きくなりすぎないよう、また生産基盤を大きく毀損させないためにも行政による生産者の公平性にも配慮した強力な指導と効果的な支援が必要ではないか」との考えを示した。
さらに乳価引き上げによる影響として、生乳流通の混乱が生じる可能性を懸念。生産抑制に協力しない生産者が、北海道から都府県の飲用向けとしての生乳移送が活発化するのではないかと不安視する声が高まっているとして、「需給調整の実効性を高めるためにも、行政による適切なご指導と生産者間の公平性が確保される制度運用の改善を図ってほしい」と農水省の対応を求めた。
会合で農水省畜産局牛乳乳製品課の大熊規義課長は「生乳の出荷先が指定団体であるか否かに関わらず、酪農家自身が変化する需給状況等を理解し、需給緩和へ対応できるよう情報発信していきたい」などと答えた。
「1日限りのわくわくモーモー牧場」――交牧連が都心で消費者交流、牛乳消費呼びかけ
地域交流牧場全国連絡会(加茂太郎会長、㈱加茂牧場代表取締役)は11月3日、東京・豊洲の豊洲公園で1日限りのわくわくモーモー牧場をオープン。消費者との交流を通じて生産費高騰と苦境にある酪農経営の現状への理解、牛乳の消費促進を呼びかけた。天候に恵まれ、初夏を思わせる陽気の中、家族連れなど大勢の消費者が来場。イベントには交牧連所属の28名の酪農家が協力した(4面に関連記事)。
会場では体験・体感をテーマに、生産者と交流を深められる酪農クイズラリーや模擬搾乳体験など、五感で楽しめる様々な催しを展開。また会場には、加茂牧場(千葉県八千代市)が見学用として連れてきた経産牛1頭と子牛2頭も登場。コロナ禍で生の牧場体験が例年よりも減少していることもあってか、牛の愛らしさに惹かれる子ども連れも多く一日を通じて大勢の人で賑わった。
このほか、農協乳業9者のご当地牛乳など牛乳・乳製品が販売された。
イベントのねらいについて加茂会長は「酪農家はいま非常に厳しい状況にあるが、今日だけはそのことを忘れて交流を楽しみたい。コロナ禍で空いてしまった消費者との距離を縮め、我々のモチベーション向上につなげられれば」と述べた。
企画を担当したclover farmの青沼光さん(富山県)は「都会でも牧場を体感できる仕組みを考えた。普段酪農を意識していない人にも来場いただき、少しでも酪農を知ってもらえれば幸い」と語った。
同イベントには中酪も後援。寺田繁事務局長は「11月からの飲用乳価値上げで、さらに需要が減少し、緩和傾向が強まることも懸念される。一層の消費拡大に努めるとともに、全国的な生産抑制も必要ではないか」と話した。
「22年秋の叙勲、岡田穂積氏(岡山)旭日双光章、岡田猛氏(鹿児島)旭日単光章」
政府は11月3日付で22年秋の勲章受章者を発表した。酪農関係では、岡田穂積氏(76歳、元おかやま酪農協組合長、岡山県岡山市)が旭日双光章を受章。また園田猛氏(72歳、農事組合法人霧島第一牧場組合長、鹿児島県霧島市)が旭日単光章を受章した。
農水省関係では、樋口久俊氏(76歳、元佐賀県鹿島市長、元畜産局長、東京都杉並区)が旭日中綬章を受章。また、井出道雄氏(72歳、元農林水産事務次官、畜産環境整備機構理事長、中央畜産会副会長、東京都杉並区)が瑞宝重光章を受章した。
例年行われている伝達式(農水省)並びに拝謁(皇居)は、新型コロナ禍の影響を踏まえ今回も行わない。
「22年秋の褒章、須藤陽子氏(千葉)に黄綬褒章」
政府は11月3日付で22年秋の褒章受章者を発表した。酪農関係では、㈱須藤牧場(千葉県館山市)取締役の須藤陽子氏が黄綬褒章を受章した。
例年行われている伝達式(農水省)並びに拝謁(皇居)は、新型コロナ禍の影響を踏まえ今回も行わない。