全酪新報/2023年1月10日号
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「年末年始の需給、混乱は回避も、春休みへ厳しい状況続く」――日本乳業協会・宮原道夫会長
処理不可能乳の発生が懸念されていた年末年始の需給対応は大きな混乱なく乗り越えた。一方、学乳の休止期間かつ需給が緩和する時期から予断を許さない状況が依然続いており、年度末の春休みにかけての飲用不需要期にも生乳余剰のリスクがある。引き続き積極的な消費拡大の推進、生産抑制や生乳処理体制の最大化等に関係者一丸で取り組むことが重要になる。1月6日開催の乳業団体が開催した賀詞交換会で日本乳業協会の宮原道夫会長が挨拶の中で酪農乳業界一丸での取り組みを呼び掛けた。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は1月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「乳製品在庫の解消期待も対策は継続必要け」――Jミルク川村和夫会長が賀詞交歓会で挨拶
乳製品の過剰在庫問題をめぐり、Jミルクの川村和夫会長は「生産抑制や過剰在庫解消対策の効果により、一筋の明るさが見えつつある」との認識を示す一方、先般北海道で合意された乳製品向け10円上げの影響も懸念されることから、「23年も、道半ばの需給改善にしっかり取り組むことが必要だ」との考えを改めて強調した。乳業団体13団体が1月6日に都内で開いた賀詞交歓会の中で述べたもの。交歓会には約150名の酪農乳業関係者が出席した。
また、川村会長は今後の消費動向に関して「インバウンド消費や全国旅行支援による業務用需要の一層の回復も期待される」と述べた上で、需給改善の取り組みと合わせた理解醸成の重要性を指摘。「食料安全保障の観点からも自給率の向上が図れるよう、消費者や小売・流通の皆さんに厳しい事業環境に理解いただけるよう丁寧に説明していかなければならない」との認識を示した。
「国も需給ギャップ改善支援、乳製品向け改定の影響を注視」――大熊規義牛乳乳製品課長
農水省牛乳乳製品課の大熊規義課長は、生産コストの高騰分については、適切な価格転嫁の必要性を指摘。「4月からの乳製品向け乳価引き上げ後の需給動向をしっかり注視しつつ、生乳需給ギャップの改善に向け、補正予算では経産牛の早期リタイア支援や乳製品在庫の長期保管事業を措置したほか、23年度畜産物価格や関連対策として酪農緊急パワーアップ事業も講じた。これらを通じ、生産者の取り組みを後押しし、酪農経営の改善を図っていく」との考えを示した。1月6日に都内で開かれた関東生乳販連と関東乳業協会の賀詞交歓会で述べたもの。
また、直近の需給動向に関して、年末年始は業界内外の努力により大きな混乱なく乗り越えたと説明しつつ「引き続き年度末に向け、緊張感を持ちながら取り組みをお願いする」と述べた。
「酪農支える具体策を提案、後継者確保、高校生の飲用促進など」――酪政連の佐藤委員長が活動への抱負
生乳需給緩和と生産コストの高騰、そして乳製品の過剰在庫等、依然問題を抱えたまま明けた2023年。年頭にあたり、酪政連の佐藤哲委員長に今年の酪政連活動の考え方を聞いた。佐藤委員長は本年も引き続き、『地域に酪農家が存続する施策』を求めて活動していく方針を強調した。具体的には良質粗飼料の増産体制整備や親元継承などの後継者確保策等を提案していく。一方、需要拡大策として高校生を対象にした消費拡大運動の推進にも取り組む方針。本紙など酪農専門紙が1月4日に聞いた。
2022年を総括すると
22年はコスト高騰に苦しんだ1年だった。ロシアのウクライナ侵攻等で、飼料価格が高騰したほか、電気や燃料費も上昇。ヌレ子相場の暴落も大きかった。また、機械が故障した際の部品も届かず、厳しい経営環境だった。
そうした中、酪政連として地域で酪農家が存続するよう施策を要望し、「国産粗飼料利用拡大緊急酪農対策」(22年度予備費)や「生乳需給改善対策」(22年度第2次補正予算)などの対策を措置いただき、自民党の先生方や農水省に生産現場の窮状を理解いただいたと思っている。
一方、乳価交渉では昨年11月から飲用乳価等の引き上げが行われ、北海道で加工向けなどの乳価が4月より引き上げられることで決着した。
今年の活動方針は
離農とそれによる地域の崩壊を防ぎ、地域で酪農家が生き残れる施策を要請していくという基本は変わらない。具体的な内容は皆で話し合うことになるが、自給飼料の増産と良質な粗飼料生産に向けた体制整備を求めていきたい。
合わせて、昨年はコスト高騰への対応で道半ばとなっていたが、高校生を対象とした牛乳・乳製品の消費拡大に関しても、再度積極的に取り組んでいきたい。
さらに、今年度と同様に次世代の担い手対策として、親元継承の支援の継続に加え、酪農ヘルパー対策の充実等を要望していく。有害鳥獣による被害も統計以上の問題となっており、引き続き対応を求めていく。
全国の酪農家へメッセージを
心配されていた年末年始の需給は関係者の並々ならぬ努力により、処理不可能乳の発生もなくクリアできた。
指定団体・乳業メーカーの努力による乳価の引き上げや国の支援に加え、最近は為替も若干、円高傾向にあり、今後は多少経営の見通しが立って来るのではないかと考えている。
自給飼料を生産し肥料を生産・活用することで資源循環できる酪農は、現在国が推進する食料安全保障やみどりの食料システム戦略とマッチしており、将来性のある産業と言える。今後も酪政連は酪農家の努力が報われるよう、全国の生産者とともに頑張っていきたい。
「フードバンクへ1万9200本、熊本県の酪農家がLL牛乳贈呈」――12月19日の贈呈式で隈部洋会長が目録手渡す
熊本県の酪農家の総意として、フードバンク熊本へ1万9200本のLL牛乳(200㍉㍑)が贈られた。長引くコロナ禍による生活困窮者や子ども達の健康作りを支援する、社会貢献活動への一助となりたいという想いとともに、牛乳の消費拡大や酪農理解醸成に繋げることを目的としている。12月19日には、熊本県酪農業協同組合連合会の会議室で贈呈式が行われた。
贈呈式では、県内の酪農家を代表して熊本県酪連の隈部洋会長からフードバンク熊本の鬼塚静波代表へ目録を手渡した。鬼塚代表は「コロナ禍で子ども食堂は増え、運営継続が毎月の課題で、生活困窮家庭も増えている。こうした中、たくさんの牛乳をいただけるのはとてもありがたい」と謝意を示した。
隈部会長は「我々の酪農経営も厳しいが、生活困窮者や母子家庭など厳しい生活を送られている方々へ牛乳が届けられることを嬉しく思う。出来る限り支援していきたい」と述べた。
なお、21年12月にも県内の酪農家からフードバンク熊本へLL牛乳を贈呈していた。
「年末年始の牛乳消費拡大に多数の企業、団体が協力」
年末年始の処理不可能乳の回避に向け、業界関係者に加え、業界外からも多数の企業・団体、自治体が牛乳・乳製品の消費拡大に向け、各々が取組を展開した。このうち、イトーヨーカドーとハウス食品は12月26日から1月3日の間、寒い冬に合わせて牛乳とハウス食品のシチューのセット購入による値引きキャンペーンを実施。一層の消費拡大を図った。
エースコックは明治とコラボ。SNSによる即席めん・スープと明治おいしい牛乳を使用したアレンジレシピを発信している。
地方自治体も、消費拡大に協力。消費拡大キャンペーンの実施や職員による牛乳・乳製品の購入推進などの取り組みが行われた。
「中酪、動画で牛乳の効能PR」――ミルクボーイ起用・第3弾
年末年始の消費拡大に向け中央酪農会議は昨年に引き続き、吉本興業㈱の人気お笑い芸人「ミルクボーイ」を起用した漫才動画第3弾を公開。牛乳に変身したミルクボーイが、テンポの良い漫才を通じて牛乳摂取による睡眠の質の向上などの効能を紹介している。
また中酪はこのほど、「スゴいぞ!牛乳」という共通ロゴマークを作成。牛乳の持つ豊富な栄養素や体の抵抗力を高める効果があること、酪農が地域の景観維持に貢献していることなどを消費者へPRし、牛乳と酪農の重要性を発信。さらなる消費の促進につなげたい考えだ。共通ロゴマークはミルクボーイの漫才動画などに使用されている。