全酪新報/2023年7月20日号
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「全国の酪農家700戸減少、昨年の約1.5倍が離農」――畜産統計、飼養頭数も1万5千頭減少
農水省は7月7日、23年2月1日現在の畜産統計を公表した。全国の酪農家戸数は1万2600戸で、前年に比べ700戸、5.3%減。乳用牛の飼養頭数は135万6千頭で1万5千頭、1.1%減。生産コストの急激な上昇による酪農家への影響は深刻で、500戸減だった昨年の約1.5倍もの離農が発生した一方、需給緩和対策としての生産抑制策により経産牛頭数も減少した。今後、需給対応や消費拡大対策など課題は山積している。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は7月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「飼養頭数伸び率、大分6.4%増で最も高い」――飼養戸数は3県除き全て下回る
畜産統計の酪農家戸数と飼養頭数を都道府県別でみると、頭数の伸び率は大分県が前年比6.4%増と最も高く、次いで香川県、茨城県、青森県で増えている。一方、戸数については福井県と高知県、大分県は前年同だったものの、それ以外全ての都道府県で前年を下回った。
頭数については、大分県が最も上昇率が高く、次いで香川県1.8%増、茨城県1.7%増、青森県1.6%増。北海道も昨年は2.0%増だったものの、生産抑制対策等を背景に23年は0.4%減と下回っている。
一方で戸数は、3県を除いて全てで減少。このうち千葉県、愛知県、滋賀県、大阪府、奈良県、和歌山県、佐賀県は1割以上減少と深刻な状況で、地域の飼養頭数や1戸当たりの平均飼養頭数自体は増加傾向にあるものの、生産基盤維持の為にも早急な対策が求められている。
「厳しい情勢こそ発信が必要」――関東販連・菊池会長が強調
関東生乳販連の菊池一郎会長は7月19日に都内で開いた通常総会で、生産コストの上昇等により酪農経営が打撃を受けている現状について触れ、「厳しい情勢だからこそ、いろいろな形で踏ん張っていかなければならないし、発信していく必要がある」との認識を強調した。「会員の生産者の期待になかなか応えられるような職責は果たせていないと思うが、これからの酪農に少しでも貢献できるよう、反省しながら頑張っていきたい」と述べた。
来賓出席した農水省の須永新平牛乳乳製品課長は、政府がこれまで実施してきた飼料高騰対策に加え、8月の飲用乳価の値上げを踏まえ、訪日外国人や観光客を対象とした消費拡大に取り組んでいると説明。「酪農乳業の事業者が一体となって産業全体が発展していく道をなんとか見いだせるよう、現場の皆様との意見交換を密に重ねながら、各種対策を推進していきたい」との意気込みを示した。
関東副会長に髙橋秀行氏(千葉県酪連会長)が新任、副会長は2名体制に
関東販連が総会後に開いた理事会では、千葉県酪連会長の髙橋秀行氏が副会長に選任された。定款では2名を副会長とすることができる。今回の選任で副会長は、平野正延氏(東京都酪農協代表理事組合長)と髙橋氏の2名体制となった。
「全国酪農青女と全酪連、札幌で酪友フォーラム開催」――酪農家同士の絆が力に
全国酪農青年女性会議(中村俊介委員長)と全酪連(隈部洋会長)は7月13日、北海道札幌市内で「酪友フォーラム2023 Challenge to the Next Stage~酪友とともに50年 次の時代へ」を開催。過去の発表大会の酪農経営の部発表者6名による現状報告をはじめ、各地域会議の活動報告やパネルディスカッションを行い、発表大会の意義や酪農家同士で思いを共有することの魅力を再確認。全国から約300名の酪友らが参加し絆を深めた(フォーラムの詳細は次号掲載)。
フォーラムは、例年7月に実施している全国酪農青年女性酪農発表大会が昨年50回目の節目を迎えたことから、厳しい経営環境にある酪友を元気づけ、新たなスタートを切ろうと企画したもの。
開会にあたり、中村委員長は「全国の酪友が一堂に集い優秀な経営や有益な意見・体験を発表し、酪農に対する思いを共有することで酪農の安定的発展を目指してきたからこそ、今日の日本酪農がある」とこれまで長きにわたり連綿と続いてきた全国大会の意義を強調した。
その上で「生産コスト高騰など酪農はまれに見る危機に瀕しており、離農してしまった酪友もいる。今回このフォーラムを通じ、過去の大会の歴史を振り返りながら、酪友同士がこの先の夢や希望を大いに語り合い、明日への糧として元気を持ち帰ってほしい」と呼びかけた。
一方、8月から実施される飲用乳価の引き上げについて「値上げせざるを得ない酪農家の状況をしっかり消費者に理解してもらえるよう、今後の理解醸成活動は一層重要で、酪青女活動にこれまで以上に力を入れて取り組んでいく」と述べた。
続いて挨拶した全酪連の隈部会長は、酪青女会議活動や全国大会について「発表者のひとりは『発表大会に参加したことで、自身の経営に対する責任感と意識が一層高まり、悩みを相談できる酪友もたくさんできた。あらためて出場してよかったと思う』と語っていた。まさにこの大会の意義はそこにあると思う」と述べ、大会等が人材育成や酪農家相互の交流の場であると評価した。
また、当面の厳しい酪農情勢について「必ず良い時は来る。徐々に明かりも見え始めている状況だ。苦しい時でも下を向いたままではいけない。ぜひとも今回のフォーラムや来年以降の活動の中で仲間を作って交流し、気持ちを高めて日々の仕事に邁進してほしい」とエールを贈った。