全酪新報/2023年10月1日号
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「乳製品国家貿易、バターへ枠数量振り替え」――CA枠内で安定供給図る
農水省は9月29日、乳製品の国家貿易による輸入枠数量を検証。全体として生乳需給が緩和していることから、5月の検証に続き2023年度の輸入枠数量はカレントアクセス(CA)の枠内(生乳換算13万7千㌧)に留めた上で、バターについては冬季の需要期に向けてホエイなど品目別の数量を振り替え、8千㌧から1万320㌧へ数量を拡大して安定供給に努める。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は10月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「不需要期は再び連携を、価格改定の影響」――Jミルク内橋専務
Jミルクの内橋政敏専務は7~9月期の飲用向け需給について「価格改定の影響が出ており、今後は猛暑で需要が下支えされていたものがなくなる。牛乳値上げの影響はある程度継続する見込みで、これまでの価格改定の影響も考慮しながら需給あるいは消費動向をしっかりと見極めていくことが必要」と強調した。
その上で、飲用不需要期に向けた取り組みについて「年末年始や春先は飲用消費が低調となることからも、処理不可能乳の発生防止に向け、再び業界として連携していきたい」との考えを示した。9月29日に農水省内で開かれた生乳需給見通しに関する記者説明会で述べたもの。
また、8月からの飲用乳価値上げ、製品価格改定の影響については「Jミルクが調査会社のデータをもとに毎週牛乳類等の販売動向を公表している。牛乳については当初30円ほど上昇すると考えていたが、19円ぐらいの引き上げとなっている。また、昨年11月の値上げ前と比べても足元では40円弱値上がりしている形となっており、価格帯の低い乳飲料へ一部振り替わる動きもみられる」と説明。
当面の対応として「引き続き消費者に対し、価格改定の背景や牛乳・乳製品の価値への理解醸成活動による市場の活性化に取り組み、発信していきたい」と述べた。
「全酪連配合飼料、10~12月期1㌧1500円値下げ」――3期連続、主原料生産好調等で
全酪連は9月25日、23年10~12月期の牛用配合飼料価格を前期(7~9月)価格から1㌧当たり1500円値下げすると発表した。円安が進行している一方、米国における主原料のトウモロコシの生産好調等により、23年4~6月期から3期連続の値下げとなった。哺育飼料価格についても脱脂粉乳が弱含みで推移していることから、1㌧当たり1万2千円を値下げする。
トウモロコシのシカゴ相場は6月に600㌣/㌴台で推移していたものの、低調な中国向け輸出成約に加え、7月以降は受粉に適した天候が続いたことから軟調な展開となり、9月は480㌣/㌴台で推移している。
大豆粕の価格は、生育に適した天候となったこと等により低下し、440㌦/㌧前後で推移している一方、今後は中国の堅調な需要や円安の影響などから値上がりも見込まれる。また、海上運賃は5月には50㌦/㌧台だったものの、8月より、堅調な原油相場、パナマ運河の水位低下に伴う滞船日数の増加により船腹需給が引き締まり、9月は55㌦/㌧を超える水準で推移している。
全酪連のほか、ホクレンは21日に全畜種平均で1㌧当たり約2200円値下げを決定。JA全農も同日、全国全畜種総平均1㌧当たり2700円値下げすると公表した。
「日本畜産物輸出促進協会を設立」――会長に井出道雄氏、最高顧問に森山裕氏が就任
(一社)日本畜産物輸出促進協会が9月22日、都内で設立総会を開催。全議案が原案通り承認され、総会後に開催された理事会で会長に井出道雄氏、副会長に姫田尚氏(中央畜産会副会長)、最高顧問に森山裕氏(中央畜産会会長)が選任された。これまで任意団体として活動していた日本畜産物輸出促進協議会が一般社団法人化したもの。法人組織となったことで、今後は農林水産物・食品輸出団体(品目団体)の認定申請を行う。また、会員の共通問題の処理や関係団体との連絡調整、輸出促進に必要な情報の収集、分析・検討と結果の提供等を通じて効果的な輸出拡大を支える。
総会の冒頭、あいさつした井出代表理事は「本会の前身である日本畜産物輸出促進協議会は2014年に設立され、畜産物輸出はこの間177億円から22年には978億円と大幅に増加し、畜産物輸出に大きく貢献してきた。より効果的な施策を実施するために関係者が検討を重ね、本日、一般社団法人としての設立総会を開催する運びとなった」と協会設立の経緯について説明。畜産物の輸出拡大・促進に向け「政府が目標としている畜産物輸出額は25年に2065億円、30年までに4676億円と意欲的な数字が掲げられている。これらの達成に向けて、オール畜産による法人組織で取り組んでいく」と述べた。
また、来賓あいさつした中畜の森山会長は「TPP以降、攻めの農業に転じる機会となったが、農畜産物輸出には生産基盤強化や生産性向上など、取り組まなければならないハードルは高い。国内市場が伸び悩む中、畜産物の輸出に関して理解醸成を進めてほしい」と呼びかけた。
同会の会員として、品目別の牛乳乳製品輸出協議会や全農、家畜改良事業団など畜産関係13団体が所属している。
全国家電会館で開いた日本畜産物輸出促進協議会の設立総会
「中央酪農会議の会長に山野徹氏(全中会長)を選任」――9月28日に臨時会員総会開く
中央酪農会議は9月28日、都内で臨時会員総会を開催。その後開いた理事会で、中家徹会長の退任に伴い空席となっていた会長の互選を行い、JA全中代表理事会長の山野徹氏が中央酪農会議の会長に選任された。
総会の冒頭、隈部洋副会長(全酪連代表理事会長)は現在の需給について、生乳生産が予想以上に落ち込むものの、消費は依然低迷、不需要期の動向にも注視する必要があると指摘。一方、現需給下では指定団体外の生乳流通量が拡大傾向にあることについて触れ「こうした傾向は適正な価格形成を実現していく上で大きな課題となる。他の全国連組織と連携して、当面の経営環境の改善に向けた支援策と合わせ、必要な対策を講じていく考えだ」との意向を示した。
「牧場で輝く家畜の命」連載㉙瀧見明花里さんの写真エッセイ
過去回にも登場したダイズちゃんが生まれてから約1年。1歳のお誕生日をお祝いしに会いに行ってきました。いつもは広くて急勾配の敷地を歩いて牛たちを探していましたが、今回は放牧地の1番奥に抜ける秘密の道を教えてもらい、車で捜索。牛たちがそこにいる確証はないので、出会えることを心から祈ります。ドキドキしながら、木々に囲まれた細い砂利道をしばらく走ると、道が途絶えたところで、運よく牛たちがお出迎えしてくれました。
久しぶりに会ったダイズは、相変わらず少し控え目。私は、勢いよく迫ってくる他の牛たちに圧倒されて、なかなか近寄れません。ダイズが歩み寄ってきてくれたのも束の間、後ろから、横から〝かまって攻撃〟をくらいます。特に1歳年上の男の子たちは迫力満点で、その後もダイズとの接近は難航を要しました。想像した再会とはギャップがありましたが、撮影した写真は、1歳のダイズの姿を残せた貴重な思い出となりました。(全酪新報では毎月1日号に掲載しています)
プロフィール
瀧見明花里(AKAPPLE)
農業に触れるためニュージーランドへ1年3ヶ月渡航。2017年より独立。『「いただきます」を世界共通語へ』をコンセプトに、牛、豚、鶏をはじめとする家畜動物を撮影、発表。家畜の命について考えるきっかけを届けている。
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