全酪新報/2023年10月20日号
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「粗飼料生産拡大など支援へ」――政府の経済対策緊急パッケージに反映へ
政府は10月13日、食料安全保障の強化等に向けて「食料安定供給・農林水産業基盤強化に向けた緊急対応パッケージ」を決定した。酪農関連では、粗飼料の生産拡大に向け耕畜連携や国産農畜産物の輸出等を支援していく方針を盛り込んだ。本パッケージを骨子として経済対策へ反映させ、年末までを目途に食料安全保障強化政策大綱の改訂を行う。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は10月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「価格形成協議会、飲用牛乳WGを設置」――合意形成目指して議論
農水省は10月11日、省内で適正な価格形成に関する協議会の第2回会合を開き、その実現と仕組み構築に向けて協議した。酪農関連では「飲用牛乳」について本協議会の下にワーキンググループ(以下WG)を設置、協議していくことを決めた。現時点でゴールの設定は行わず、合意形成を図る方針で議論を進める。乳製品に関してはWGでの議論の過程で検討対象となる可能性があるとした。
飲用牛乳におけるWGの設置は、「畜産・酪農の適正な価格形成に向けた環境整備推進会議」が策定し中間とりまとめで記載した専門家によるワーキングチームでの議論を行う方針に基づいて実施するもの。
同日夜に省内で開かれた記者説明会で、大臣官房新事業・食品産業部の木村崇之企画グループ長は、WGでの検討対象として、牛乳・乳製品のうち飲用牛乳を選んだ理由について「流通経路も分かりやすく、コストの把握も比較的可能であることから、まずは議論を飲用牛乳でWGを立ち上げることで了承した」と説明。
その上で、乳製品については「検討対象から外したということではない。WGで検討を重ねていく中で、自ずと乳製品についても議論が出てくる可能性はある。その際、乳製品の価格形成についても議論を行っていくことになる」との考えを示した。
また、議論の方向性に関しては「原料乳に係る生産コストだけでなく、製造、流通、小売の各段階のコストを調べ、最終製品が消費者へ受け入れてもらえるかどうか、そういう議論をしていきたい。いつまでに取りまとめを行うというよりも、きちんと合意形成を図りながら議論を進めていく」との考えを示した。
WGの構成員は実務に精通した取引担当者等を対象に検討する方針。なお、飲用牛乳以外には、豆腐・納豆のWGの設置も決めた。
「脱粉・23年度末、単年度ギャップ2万2200㌧見込む」――引き続き在庫対策の活用等必要
Jミルクが9月29日に示した需給見通しによると、2023年度末の脱脂粉乳在庫は7万6300㌧(前年比18.5%増)で、22年度末より1万㌧程度積み増す見通し(既報)。業界協調の在庫削減対策分6300㌧を反映した値で、その分を除くと在庫量は8万2600㌧(28.2%増)。
図のように、ピーク時と比べ在庫量は減少しつつある一方、2023年度に配分済みの対策分を除いた場合の単年度ギャップは「2万2200㌧」の見込み。対策を講じない場合、期末在庫は依然高水準が予測されることから、引き続き在庫対策の活用や消費拡大の推進等が課題となっている。
2023年度の脱粉生産量は14万8100㌧で前年度比4.1%減、輸入売渡し量は1200㌧、推定出回り量は13万1100㌧で30.2%減(前年対策除く出回り量との比率は4.9%減)の見通し。単年度ギャップは、「生産量と輸入売渡しの合計から推定出回り量を引いた値」で、在庫対策分を含めた場合は1万8200㌧、配分済みの対策分を除くと2万2200㌧となる。
脱脂粉乳の生産量・輸入売渡・推定出回り量・在庫量(四半期毎)
「2023年度上期受託乳量、前年同期20万㌧下回る」――飲用牛乳等向け4.5%減、生乳生産・需要も減少
中央酪農会議が10月16日に取りまとめた用途別販売実績によると、2023年度上期(4~9月)の受託乳量は343万4407㌧で、前年同期比5.4%減。需給緩和に対する各地域における生産抑制策や例年以上に進行する離農、記録的な夏場の暑さ等により前年同期を約20万㌧下回った。
一方、飲用牛乳等向けは4.5%減で、2020年度は新型コロナ禍を背景とした巣ごもり需要により4年ぶり増と好調だったものの、その後は年々需要が低迷。2023年度は数回にわたる乳価値上げや製品価格の改定等の影響もあり大きく落ち込んだ。
上期の受託乳量は北海道が197万9448㌧で5.2%減、都府県は145万4959㌧で5.7%減。全ての地域が前年同期を下回るなか、特に北陸と東海は8.0%減と落差が大きく、都府県で乳量が最も多い関東も4.7%減と生産基盤の弱体化が懸念される。
需要面については、飲用牛乳等向けは153万2787㌧で4.5%減、好調だった2020年度と比べると13万4294㌧も減っている。また、はっ酵乳等向けも飲用牛乳等向けと同様の傾向で、2020年度上期は好調なヨーグルト需要により24万3885㌧で1.0%増だったものの、その後は減少が続き、2023年度上期には22万1307㌧で4.8%減となっている。
このほか、脱脂粉乳・バター等向けは82万798㌧で10.2%減、2021年度上期をピークに減少傾向で推移している。液状乳製品向け(生クリーム等向け)もコロナ禍からの回復に伴い増加していたものの、2023年度上期は64万3307㌧で1.3%減だった。チーズ向けは21万6207㌧の5.3%減で、生乳生産量の減少に伴い、増加傾向から一転して減少している。
「9月販売実績、全国の受託乳量6.2%減」――液状乳製品向けは好調
中酪が公表した用途別販売実績のうち、9月の全国の受託乳量は53万4101㌧の6.2%減で、北海道と都府県ともに大きく減少した。需要面では例年消費の多い9月に飲用牛乳等向けが3.6%減と低迷している一方、液状乳製品向けは4.2%増と好調だった。
9月の北海道の受託乳量は31万875㌧で6.0%減、都府県は22万3225㌧で6.4%減。都府県を地域ごとにみると、中国と四国、九州以外の地域は5%以上前年同月を下回り、特に北陸(10.1%減)と東北(9.6%減)、東海(7.9%減)での落ち込みが目立った。
用途別でみると、飲用牛乳等向けは26万4906㌧で3.6%減、このうち北海道は8万4140㌧で前年同だった一方、都府県は5.3%減と大きく下回った。
このほか、はっ酵乳等向けは3万5362㌧で4.0%減、脱脂粉乳・バター等向けは9万1144㌧で21.9%減、チーズ向けは3万2266㌧で8.0%減。液状乳製品向けは11万423㌧で4.2%増、今年度は減少が続いていたものの9月は増加に転じた。
「酪政連が宮下一郎農相を表敬訪問」――情勢や課題など意見交換
日本酪農政治連盟(佐藤哲委員長)は10月12日、このほど就任した宮下一郎農相を表敬訪問した。冒頭以外は非公開。訪問後、本紙など酪農専門紙の取材に応じた佐藤委員長は「宮下農相からは、飼料を含む生産資材の高騰など困窮する生産現場の現状を踏まえ、大変な経営環境下にあることに理解を示されるとともに、支援に向けて取り組んでいく旨の言葉をいただいた」と話したほか、畜産・酪農振興に向けた地域活性化の重要性や中山間地での交流人口の増加等が話題に上がったと説明した。
表敬訪問ではまた、小松平一中央委員(伊那酪農業協同組合組合長)が牛ふん堆肥を施用した水田で栽培した新米を宮下農相へ贈呈した。
佐藤委員長のほか、柴田輝男副委員長、木本栄一副委員長、宮本貞治郎副委員長、清水清人副委員長、小松中央委員らが出席した