全酪新報/2023年11月1日号
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「農水省、飲用牛乳WGが初会合」――実現可能な合意点目指す
農水省は10月20日、適正な価格形成に関する協議会の下に設置した「飲用牛乳ワーキンググループ(WG)」の初会合を省内で開いた。牛乳の適正取引推進へ具体的な仕組み作りの検証・議論を目的としたもの。今後会合では、酪農乳業における乳価交渉をはじめ、卸売や小売での価格設定など、流通3経路の価格を論点として、コスト構造の把握に向けて議論。課題等を共有した上で実現可能な合意点を目指す。
10月20日に初会合が開かれた「飲用牛乳ワーキンググループ」では、酪農家や指定団体、中央団体、乳業メーカーや卸売・小売の関係者、研究者、消費者団体関係者など22名が会合の構成員として選出された。メンバーは次の通り(名簿順、敬称略)。
▽寺田繁(中央酪農会議事務局長)▽篠永彰仁(ホクレン酪農部長)▽佐藤裕司(東宗谷農協代表理事組合長)▽迫田孝(関東生乳販連代表理事常務)▽小針勤(小針牧場)▽山本裕康(サツラク農協専務理事)▽深松聖也(JA全農酪農部部長)▽本郷秀毅(日本乳業協会常務理事)▽土橋道人(㈱明治常務執行役員)▽東倉健人(森永乳業㈱常務執行役員)▽小板橋正人(雪印メグミルク㈱常務執行役員)▽長谷川敏(永利牛乳㈱代表取締役社長)▽大川清治(熊本県酪連代表理事専務)▽山崎佳介(国分グループ本社㈱常務取締役)▽七尾宣靖(日本チェーンストア協会食品委員会委員)▽江口法生(日本スーパーマーケット協会専務理事)▽村尾芳久(全国スーパーマーケット協会事務局長)▽木村匡秀(同教育研修課主任)▽田辺恵子(主婦連合会副会長)▽内橋政敏(Jミルク専務理事)▽福田晋(九州大学理事・副学長)▽三石誠司(宮城大学食産業学群副学群長)-詳細は全酪新報にてご覧ください-
20日に省内で開かれた第1回WG
お断り=本記事は11月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「脱粉在庫低減策など盛り込む」――自民党、2023年度補正・重点事項案
自民党は10月25日、永田町の自民党本部で総合農林政策調査会と農林部会の合同会議を開催した。総合経済対策の予算の裏付けとなる2023年度農林水産関係補正予算の重点事項案を示した。酪農関連では、国産飼料の生産・利用拡大に向けた対策をはじめ、脱脂粉乳の在庫低減策や需要拡大等を支援する方針を盛り込んだ。
冒頭、江藤拓総合農林政策調査会長は生産現場や物流等における生産コスト上昇、食料安全保障確立に向けた対策等の必要性を強調。「何に重点を置くべきか、どこを新しく取り組むべきか、皆様のご意見をいただき、しっかりと予算へ反映したい」と述べた。
重点事項案のうち、食料安全保障の強化に向けた構造転換対策として政府が決定した緊急対応パッケージの粗飼料の生産拡大に関連した「飼料自給率向上緊急対策」を措置。国産飼料の生産・利用拡大に向けて耕畜連携や広域流通体制の構築、増産に必要な施設整備等を支援する。
このほか、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく政策として、「乳用牛長命連産性等向上緊急支援事業」を実施し、配合飼料多給による乳量偏重から長命連産性の高い牛群への転換・推進を支援する。また、畜産クラスター事業による生産基盤の維持・強化、チーズ工房等の生産性向上に必要な施設整備等を支援する「国産チーズの競争力強化」を措置する方針。
「2023年度上期生乳生産、離農等で4.7%減少」――牛乳は最需要期も低迷・農水省牛乳統計
生乳生産量の減少、牛乳消費の低迷が続いている――。農水省が10月27日に公表した牛乳乳製品統計によると、2023年上期(4~9月)の生乳生産量は367万5948㌧で前年同期比4.7%減。22年度上期が0.6%増だった一方、今期はコロナ禍を背景とした需給緩和に対する生産抑制策、例年以上の離農進行、も記録的な猛暑の影響により大きく減少しており、特に都府県は約5%減と生産基盤への影響が懸念される。牛乳の需要も減少傾向で、最需要期の夏場はの記録的な猛暑にもかかわらず、牛乳の値上げ等の影響もあり前期を3%下回った。
上期の生乳生産量を地域別でみると、北海道は210万5062㌧で前期より8万6720㌧、4.0%減。都府県は157万2886㌧で、9万2235㌧、4.8%減。北海道と都府県ともに9月が最も生乳生産量が落ち込んだ。
牛乳は157万1728㌔㍑で3.0%減。このうち業務用は12万9824㌔㍑で9.1%減、学乳は16万2112㌔㍑で0.3%減。業務用は大きく下回っている。
このほか、加工乳・成分調整牛乳は19万1984㌔㍑で0.9%減、乳飲料は56万6095㌔㍑で0.4%減、はっ酵乳は51万917㌔㍑で5.8%減。はっ酵乳は減少傾向で推移する一方、牛乳等におけるこれまでの価格改定の影響もあり、加工乳・成分調整牛乳と乳飲料はほぼ前年同期並みで、牛乳から低価格なこれらへのシフトが懸念される。
「7~9月期、1㌧当たり5250円交付へ」――配合飼料基金制度・ 緊急補てん制度を適用
全日本配合飼料価格畜産安定基金はこのほど、2023年度第2四半期(7~9月)に購入した配合飼料を対象に「㌧当たり5250円」の補てん金交付を決めた。緊急補てん制度(特例)を適用。通常補てん分は3150円で、異常補てん分は2100円を見込んでいる。
当期の基準輸入原料価格は5万8631円で、平均輸入原料価格は5万4546円。基準価格が平均価格を上回るため、従来の補てん金算定の仕組みでは補てんの発動はないが、配合飼料価格が高止まりしても発動しやすくなるよう、第1四半期と同様、今年度より措置された特例を適用して算定する。交付は11月中旬を予定している。
「牧場で輝く家畜の命」連載㉚瀧見明花里さんの写真エッセイ
キナコの第二子、ソラが誕生してから2カ月。「どんな子に育ったかな。お姉ちゃんのダイズに似てシャイな性格かな。それともキナコ譲りで人懐っこいのかな」などと妄想を膨らませながら、牧場へと向かいます。到着後、哺乳担当の方にお出迎えしていただき「ソラは今年生まれた牛の中で1番いい子ですよ」と、最高の褒め言葉をいただきました。その一言に、まるで自分の牛のように嬉しくなる私。
足早に子牛たちのもとへと向かうと、スヤスヤと眠りについているソラの姿がありました。生まれたての頃の面影がありながらも美しく成長を遂げており、他の子牛と比べて白っぽい身体に、フサフサの毛並みが特徴的です。再会に感動する私をよそに、ソラはすっかり私のことを忘れている様子。この日は、牧場にいる殆どの時間を一緒に過ごし、思う存分に戯れました。あっという間に、お別れの時間が訪れ「次来る時まで、覚えていてね」と念を送り、帰路につきました。(全酪新報では毎月1日号に掲載しています)
プロフィール
瀧見明花里(AKAPPLE)
農業に触れるためニュージーランドへ1年3ヶ月渡航。2017年より独立。『「いただきます」を世界共通語へ』をコンセプトに、牛、豚、鶏をはじめとする家畜動物を撮影、発表。家畜の命について考えるきっかけを届けている。
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