全酪新報/2023年11月20日号
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「全酪アカデミー、新規就農第2号が誕生」――福島で継承 髙橋純真・帆乃佳さん、夫婦で力を合わせて
自酪農の担い手確保を後押しし、新規就農者を育成する一般社団法人全酪アカデミー(理事長=北池隆全酪連専務)から2組目の修了生・新規就農者が誕生した。髙橋純真・帆乃佳さん夫妻が福島県塙(はなわ)町の牧場を第三者継承の形で11月1日に経営を開始した。同10日には塙町で福島県酪農協(紺野宏組合長)主催の就農激励会が開かれ、髙橋夫妻は「お世話になった方々へ恩返しの意味でも、夫婦で頑張っていきたい」と抱負を述べた。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は11月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「長命連産推奨へ交付金、交配1回当たり6~9千円」――2023年度補正予算
政府が11月10日に閣議決定した2023年度補正予算では、「乳用牛長命連産性等向上緊急支援事業」に50億円を計上した。持続可能な酪農経営の実現に向けて、長命連産性能力の高い乳用種雄牛の精液、または受精卵等を利用する取り組みに対し、交配1回当たり6千円または9千円の奨励金を交付する。
従来型の配合飼料多給による乳量偏重の乳用牛から、長命連産性に重きを置いた牛群構成への転換を支援するもの。長命連産性能力に対する遺伝評価値等を目安に奨励金単価に差を設定する方針で、1酪農家当たりの上限など含め、細かな要件等は現在調整中。
「指定団体等、自主流通関係者と情報交換」――需給めぐり今後も継続開催へ
農水省牛乳乳製品課が取りまとめた直近の生乳需給動向によると、飲用需要期の23年度第2四半期(7~9月)の生乳生産量は、177万9900㌧で5.3%減。気象統計開始以来最高となった記録的猛暑等が影響し、北海道と都府県ともに大きく下回った。一方、飲用需要は全体としては引き続き低調で、8月の値上げの影響もあり同期の牛乳生産量は2.9%減だった。今後、飲用不需要期を迎えることも踏まえ、引き続き消費拡大や脱脂粉乳の在庫低減対策に業界一体で取り組んでいく必要がある。
仕向け別でみると、牛乳等向けは98万4700㌧で3.5%減と、22年度第3四半期より減少が続いている。乳製品向けは78万3700㌧で7.5%減、このうち脱粉・バター等向けは35万4400㌧で13.5%減、チーズ向けは10万4500㌧で7.6%減、液状乳製品向けは30万9100㌧で0.1%減。
このうち脱粉・バター等向けについては、22年度第1四半期までは新型コロナを背景とする需給緩和から仕向けが増えていたが、対策等の取り組みにより22年度第2四半期以降は減少、今期は特に大きく下回った。
消費面では、飲用牛乳等全体で88万2700㌧で2.8%減。うち牛乳は78万5400㌧で2.9%減、成分調整牛乳は6万3500㌧で5.2%減、はっ酵乳は25万5800㌧で5.4%減といずれも直近では減少が続く。加工乳は3万3800㌧で7.2%増、乳飲料は29万7800㌧で2.1%増だった。
第2四半期の生乳需給について、牛乳乳製品課の中坪康史乳製品調整官は「今年は想定を大幅に超えた猛暑の影響で特に8月の生乳生産量が大きく減少。9月も残暑が厳しく中々乳量が戻らなかった」と説明した。
また、同期の飲用消費について「8月の値上げによる消費低迷も懸念されたが、10%ほどの製品価格上昇に対し、マイナスではあるが大幅な落ち込みは無かった。生産者団体や乳業メーカーなど関係者が精力的に消費拡大等に取り組んだことが功を奏しているのではないか」と述べた一方、中長期的には脱粉需要低迷等により需給緩和は継続していることから「(消費拡大や在庫対策など)継続的な対策を図っていく必要がある」との認識を強調した。
「全酪協会が都内で酪農基本対策委開く」――世界の穀物情勢など研修
全国酪農協会は11月16日、東京・目黒のホテル雅叙園東京で2023年度酪農基本対策委員会を開き、役員や会員団体などオンライン含め約70名が出席した。世界の穀物情勢や食料安全保障の問題、酪農経営におけるコスト構造、収益性向上に必要な自給飼料の重要性や事例等を研修し、知見を深めた。
会合の冒頭、主催者あいさつした砂金甚太郎会長は「国際化対応が迫られる北海道酪農と都府県酪農の底上げと強化、家族型経営と大規模経営のバランスのとれた発展が日本酪農には欠かせない」と強調するとともに、都府県酪農を縮小させない緊急対策の重要性を指摘した。このほか、緩和基調で推移する生乳需給への対応、消費拡大や理解醸成活動の重要性等について触れた上で「12月に予定されている24年度畜産物価格・政策決定において、希望の持てる内容としていただけるよう、日本酪農政治連盟をはじめとした要請活動に全力を尽くしたい」と述べた。
対策委では、㈱資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫氏が「世界の穀物需給と今後の見通し」、九州大学理事・副学長の福田晋氏が「酪農の生産構造と今後の展望」と題して講演した。柴田氏は、政府が見直しを進めている食料・農業・農村基本法について、抜本的な見直しが必要と指摘した上で、生産拡大へまずは厳しい現状に歯止めをかける政策の必要性を強調。福田氏は地域資源活用型酪農の展開や適正規模によるコスト低減など、持続的な酪農経営の実現に必要な課題等を提起した。
ホテル雅叙園東京で開かれた対策委。オンライン参加含め約70名が出席した
「酪青研、五味英介さん(長野)に黒澤賞」――第74回大会を福岡市内で開催
日本酪農青年研究連盟(檜尾康知委員長)は11月15日、福岡県福岡市内で第74回日本酪農研究会を開き、6名の酪農家が経営概況や将来展望等を発表。最優秀賞の黒澤賞には五味英介さん(長野県富士見町)が輝いた。また、豊かな生活を実現した発表事例に贈られる太田賞には、波多江浩一さん(福岡県糸島市)が選ばれた。大会には関係者250名が出席した。
五味さんは牧場の4代目で現在就農16年目。新型コロナ禍や飼料の高騰などの情勢を踏まえ、経営方針の転換を決意し、それまでの高乳量・高乳成分を目指す経営からあらゆる状況に対応可能な牧場を目標に、自給粗飼料生産の拡大等に取り組んでいる。
本紙などの取材に応じた五味さんは、黒澤賞受賞について「非常に身の引き締まる思い。今後は定期的に休みが取れる体制も構築しつつ、自分の子どもや消費者に憧れてもらえる牧場づくりを目指す。酪農業界に対して貢献できるよう頑張りたい」と話した。