全酪新報/2024年3月1日号
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「生乳需給安定へ向け議論継続」――指定団体等生産者団体と自主流通関係者が意見交換

2024-03-01

農水省は2月15日、指定団体等の生産者団体と自主流通関係者を集めた「生乳需給等に係る情報交換会」の第2回目会合をオンラインで開催した。生乳需給をめぐる状況について、需要拡大の必要性や乳製品加工による需給調整など、全国的な課題をあらためて関係者間で認識・共有。全国的な需給安定に向けて今後も議論を継続することで一致した。-詳細は全酪新報にてご覧ください-

お断り=本記事は3月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「農水省、配合飼料価格安定基金見直しへ検討開始」――配合飼料価格安定制度の安定運用目指す

2024-03-01

農水省は2月20日、「配合飼料価格安定制度のあり方に関する検討会」(事務局=畜産局飼料課)の初会合を省内で開いた。会合は非公開。配合飼料価格安定制度が本来の機能を果たしつつ、持続性の高い制度として畜産経営の安定が図られるよう検討を行うもの。初回の会合では検討会の趣旨、同制度の重要性や課題等を構成員間で共有した。次回会合は3月中旬で、生産者団体からヒアリングを行う方針。


検討会は通常補填の3基金団体に加え、飼料供給に係る関係団体など11者で構成(事務局含む)。配合飼料価格安定制度をめぐっては、2021年より価格高騰が急激かつ長期化していることから大きな財政負担が生じており、同制度の持続性に懸念が生じている。


そうした状況を踏まえ検討会では▽21年以降の配合飼料価格の急激な上昇に際して講じた措置の検証▽同制度に関する基金団体及び畜産関係団体からの意見聴取▽より持続可能性の高い制度のあり方に関する検討――の3点を検討事項として議論を進める方針。


今後の議論の方向性について飼料課は「様々な方々のご意見を伺い、同制度の在り方やどうすれば持続可能性を高められるか、まずは関係者で検討を進め、何らかの取りまとめができればと考えている」としている。

「自給粗飼料対策等を重点に、2024年度の運動方針など協議」――日本酪農政治連盟が事務局長会議開く

2024-03-01

酪政連(佐藤哲委員長)は2月21日、東京・永田町で事務局長・事務局担当者会議を開き、3月6日開催予定の通常総会に向けて2024年度の運動方針などを協議し、承認した。


開会挨拶で佐藤委員長は、今年度の活動方針の中で▽牛乳・乳製品の需要拡大▽自給粗飼料対策――等に重点的に取り組んでいく姿勢を強調した。「高校への牛乳類の自動販売機設置に加え、訪日外国人観光客に対するインバウンド対策を一層進めていく。自給粗飼料対策は、輸送コストが一番のネック。地域で作った粗飼料を地域内の酪農家が利用できる体制を構築できれば、コストも大きく低減できる。それぞれの地域の状況に応じた形で要請活動を行っていきたい」と述べた。


会合ではこのほか、農水省牛乳乳製品課の平田裕祐課長補佐(生乳班)が、4月1日からの施行に向けて手続きを進めている改正畜安法の省令改正について紹介。「畜安法の新たな規律強化へ、生乳取引の申し出を断ることができる正当な理由を省令に追加するということで現在進めている。酪農家が翌年度の出荷予定数量に大きな変更がある場合、例えば上半期までに翌年度の生産見込みを申し出ない場合には、翌年度の出荷予定数量が当年度を大きく超えるような受託を拒否できる。言い換えれば、生乳取引変更の申し出期限を設定するよう準備を進めている」と説明した。


また、需給調整をめぐる在り方について平田課長補佐は「現在、系統と系統外事業者で行う需給調整に関する情報交換会を行っている。継続的な開催により、全体の需給調整、それぞれどういったことができるか、議論を積み重ねていきたい」と述べるとともに、「需給調整の在り方は畜産部会でも議論を進めていく。今年は食料・農業・農村基本計画の策定など様々な中期計画を定める年となる。そうした議論も踏まえ、需給調整の在り方について、どういった取り組みができるか。引き続き議論を行っていきたい」との考えを示した。


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参議院議員会館で開かれ約40名が出席した

「3月6日午前・午後9時は『ミルクの日のミルクの時間』」――中央酪農会議が冬場の飲用促進へ制定

2024-03-01

『ミルク』の語呂にちなんだ、3月6日の午前9時と午後9時が「ミルクの日のミルクの時間」として正式に記念日・記念時間に認定された。


中央酪農会議が日本記念日協会に申請したもので、同協会によると記念「時間」での認定は史上初。認定を受けて、中酪の菊池淳志専務は「生乳需給のギャップが生じる冬場に、記念日・記念時間を認定いただいた。初めて制定された記念時間をきっかけに幅広い年齢層の方に牛乳を愛飲いただき、酪農家を支えていければ」と述べた。記念日を契機に今後様々な広報活動を展開する方針。


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記念日登録証を受けとる中酪の菊池専務(右)

「牧場で輝く家畜の命」連載最終回 瀧見明花里さんの写真エッセイ

2024-03-01
牧場で輝く家畜の命最終回 A

村上牧場レプレラ(北海道せたな町)ブラウンスイス

牧場で輝く家畜の命最終回 B

「キナコ」は19年9月生まれ

この日は、私にとって特別。何しろ私自身が第1子を授かり、大きくなるお腹での、最後のキナコとのひと時でした。次はいつ会えるか分からないので、思う存分キナコを撫で回します。日も落ち始め、そろそろ帰る時間。私が手を止めて一歩下がると、キナコはゆっくりと一歩近づき、優しく催促をしてきます。その距離感がグイグイくるわけでもなく、こちらの様子を伺いながら「もう少しダメ?」と甘えているようで、とても愛おしいです。その姿に更に寂しさが増す私。惜しみながらも「またね、元気でね。私も頑張ってくるね」と再会を誓い、別れを告げました。


それから数カ月が経ち、私は無事に元気な女の子を出産することが出来ました。娘はスクスクと成長し、もうすぐ3カ月になります。今回で連載は最終回となりますが、活動は継続していきますので、またどこかで撮影の様子をお届けできたらと思います。約3年間、ご愛読いただき有難うございました!(終わり)


プロフィール


瀧見明花里(AKAPPLE)


農業に触れるためニュージーランドへ1年3ヶ月渡航。2017年より独立。『「いただきます」を世界共通語へ』をコンセプトに、牛、豚、鶏をはじめとする家畜動物を撮影、発表。家畜の命について考えるきっかけを届けている。


※写真の無断使用はご遠慮下さい

https://photographer-akapple29.com/

「後継牛確保へ対策急務、業界の持続発展の為に」――第2回


日本乳業協会 本郷秀毅常務理事

2024-03-01 3月1日号記事6_本郷常務近影

前回の本欄では、2019年度から生乳生産量が増加した一方、新型コロナの感染拡大と増産の時期が重なったことで一転して需給は大幅緩和、関係者の尽力で生乳廃棄には至らなかったものの、脱脂粉乳の過剰在庫の問題へどう対応するかといった緩和時の一連の流れについて紹介した。今号でも引き続き、後継牛減少に至った背景について日本乳業協会の本郷秀毅常務理事に解説いただく。


後継牛減少に至った背景②


「業界が協調して需給へ対応、乳用雌子牛は減少に転じる」


脱粉の急増から過剰在庫処理へ


コロナ禍に伴う想定外の需給環境の急変に対処するため、国は相次いで過剰在庫処理対策を講じることになる。2020年度は国の対策により合計2万4千㌧の脱粉が主に飼料用に転用されるとともに、ホクレンも自主対策を講じ、輸入チーズの置換え等による生乳処理量の拡大に努めた。この結果、脱粉在庫は前年度末に比べ5千㌧の増加にとどめることができた。


脱粉在庫が適正水準を大幅に上回り、過剰在庫処理対策が講じられる事態となっているにもかかわらず、2021年度にはさらに生乳の増産が加速する。具体的にデータで確認すると、2019年度及び2020年度は前年度に比べ約1%の増加であったのに対して、2021年度は約3%もの大幅な増加となった。


コロナ禍という不測の事態への対処とはいえ、脱粉を飼料用に転用するという緊急避難的な対策を継続実施することに財政当局が難色を示す中、国は目先を変えて8千㌧のバター在庫を処理する対策を講じる。このため、ホクレンは自主対策費を大幅に増額して1万4千㌧の脱粉在庫を処理したが、生乳生産が急拡大する中では焼け石に水であった。


こうした過剰在庫処理対策の継続実施にもかかわらず、2021年度末には脱粉の在庫は前年度に比べ約1万7千㌧の増加となり、当時過去最高の9万8千㌧にまで拡大することとなっただけでなく、2022年5月末には10万㌧の大台を突破するまでに至った。


余談ではあるが、巷間「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」において生産目標を780万㌧と設定したことが、生産が急増して需給が大幅に緩和した原因であるかのごとく批判する声がある。しかし、この生産目標を決定したのは2020年3月であり、それから増産に向けた経営判断、すなわち後継牛確保に向けた交配を開始したとすれば、増産に転じるのはその3年後の2023年度以降ということになる。実際に生産が増加したのは2019~2022年度にかけてのことであることから、この指摘は正確ではないことが理解いただけよう。


生産抑制への方針転換業界挙げて在庫処理へ


2021年度における生産拡大の加速化と巣ごもり需要の一巡により、飲用需要や発酵乳需要が減少傾向に転じる中、Jミルクは、2021年の年末年始には生乳生産が需要を大幅に上回り、乳業工場における生乳の処理能力をオーバーして生乳廃棄が発生するという予測を示した。こうした業界内での需給予測が業界外にも染み出し、2021年の年末年始には約5千㌧の生乳が廃棄されるという噂がマスコミなどを通して広まっていった。


こうした中、2021年の年末には、岸田文雄首相が「年末年始に牛乳をいつもより1杯多く飲み、料理に乳製品を活用してほしい」と異例の呼びかけを行う事態にまで至った。岸田首相のほかにも、当時の金子原二郎農林水産大臣が牛乳を飲むパフォーマンスで牛乳飲用の呼びかけを行ったことなどから、生乳需給が大幅に緩和しているという事実が広く国民に共有され、流通業界にも応援の動きが広まっていった。


生乳需給が大幅に緩和して脱粉在庫が日々積み上がる一方、このままでは国による過剰在庫処理対策の継続が期待できなくなるという認識が広まる中、生産者と乳業者が同額を拠出して基金を作り、脱粉の過剰在庫処理を行うという案の検討が進められた。また生産者団体においては、同時並行で生産基盤を棄損させないことを前提とした出荷抑制の検討も進められた。


結果的に、こうした業界の自主的な取り組みを支援するため、国は脱粉の過剰在庫を飼料用に転用する取り組みを支援する予算を措置し、脱粉の過剰在庫は①飼料向け(国の支援あり)②輸入調製品との置き換え③輸出向け――により処理されることとなった。こうした動きは2021年度中に次第に顕在化してきたため、生産調整は近いと判断した生産者が2021年の秋頃から後継牛を確保する動きにブレーキをかけ始めたものと推測される。その結果として、乳用種雌子牛の出生頭数は、翌2022年7月生まれから対前年同月比でマイナスに転じることになったものと考えられる。


要約すると「2019年度からの生乳生産増加とコロナ禍による需要減少」「2020年度からの需給緩和と過剰在庫処理対策の開始」「2021年度における生産拡大加速化と業界を挙げた過剰在庫処理対策・生乳出荷抑制の検討」「後継牛確保のための交配抑制」「2022年度からの乳用種雌子牛出生頭数の減少」といった流れによって後継牛減少へ至ることになる。

連絡先・MAP

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