全酪新報/2024年3月10日号
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「生乳需給安定へ向け議論継続」――指定団体等生産者団体と自主流通関係者が意見交換
日本酪農政治連盟(佐藤哲委員長)は3月6日に自民党本部で中央委員会と通常総会を開き、2023年度の運動報告や収支決算、今年度に引き続き自給飼料増産対策等を重点施策とした2024年度運動方針等を原案通り承認した。任期満了に伴う役員改選では、佐藤委員長が退任し、新委員長に木本栄一副委員長(埼玉)を選任したほか、新副委員長に三宅穣次監事(岡山)が就任した。(右:木本新委員長)
-詳細は全酪新報にてご覧ください-
自民党本部で開かれた中央委員会及び総会
お断り=本記事は3月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「自民党酪政会、酪農繁栄に全力尽くす」――懇親会で森英介会長が酪政連に強調
酪政連は6日の総会終了後、自民党酪政会(森英介会長)との懇親会を開催した。その席上、挨拶した森会長は厳しい酪農の現状を踏まえ「酪農家の皆さんと心を一つにして全力を尽くす。今後も酪農がしっかりと日本に根付き繁栄していくよう皆で一緒に頑張りたい」と強調した。懇親会には酪政連の委員等のほか、代理出席も含め計118名の衆参議員が参加した。(右:森会長)
懇親会の冒頭、酪政連の木本栄一会長はコロナ禍をはじめとした異常事態の中で多くの酪農家が離農していったことを指摘。その上で「(いま酪農家を守るための)仕組みを構築する必要がある一方で、系統外との不公平感の是正にも全力を傾けていきたいが、そのためには政治力や行政による知恵など、皆さんの協力がなければできない。ぜひ力を貸していただきたい」と活動への協力を呼びかけた。
また、酪政会の江藤拓幹事長もあいさつ。「日本から酪農が無くなってしまったら、農地も含め国土を保全できなくなる。北海道のような所は地域が崩壊してしまうし、それは都府県も同じだ。国と地域を守るため、これからも国会議員で団結して支えていきたい」と述べた。
懇親会には森山裕総務会長も出席し、再生産可能な酪農の実現に向け酪政連とともに尽力していく姿勢を示した。このほか伊東良孝酪政会事務局長、衛藤征士郎酪政会顧問、古川康畜産酪農対策委員長をはじめ多くの酪農関係議員が参加した。
酪政連の委員等のほか代理含め計118名の衆参議員が出席した
「全日本配合飼料価格畜産安定基金が政策提案」――配合飼料補てん制度見直しへ
商系の全日本配合飼料価格畜産安定基金は3月6日、配合飼料補てん制度改革に係る政策提案を取りまとめて公表した。同制度をめぐってはこのほど、制度の安定運用に向けた関係者による検討が開始されており、政策提案は今後、商系グループ内における制度議論の材料とするとともに、農水省や関係者への政策提案として活用する。
政策提案では、通常補てんと異常補てんの一本化、生産者に分かりやすい補てんの仕組み、三基金団体の統合の3点を基金制度全般に関わる柱として整理。財源の安定化や業務効率化、負担の公平化に向け、「補てん額の上限・下限の設定」「急激な価格上昇に対応した補てん上限の特例」「分割補てんの導入による柔軟な財源運用」など、取り組み課題を設定しながら今後の展開方向を提案していく方針。
「後継牛確保へ対策急務、業界の持続発展の為に」――第3回
日本乳業協会 本郷秀毅常務理事
前回まで、業界が協調して脱脂粉乳の在庫低減対策等を講じて生乳需給へ対応してきた一方、生産抑制の余波で、将来の生乳生産を担う乳用雌子牛が減少に転じた流れを説明した。本号では、減産基調を背景に乳用雌子牛の出生頭数がどれぐらいの割合で減少しているのか、またそれによる今後の生乳生産への具体的な影響について、日本乳業協会の本郷秀毅常務理事に解説いただく。
生乳生産への影響
「生産は22年8月より減産へ、25年度から乳量減が顕在化」
22年度から2年続いた生産抑制
生乳需給の大幅緩和に加え脱脂粉乳の過剰在庫を抱える中、生産者は生産調整の開始を見越して、2021年の秋頃から後継牛を確保するための交配を抑制することになる。生乳生産の先行指標ともいえる初妊牛価格は2018年頃をピークに低下傾向で推移しており、2021年以降は急速に下げ足を強めつつあったことも影響したと考えられる。酪農家は後継牛の確保を抑制し、黒毛和種の交配や和牛受精卵移植により肉用牛生産を増やして経営の安定を図ろうとしたのであろう。
その結果、2022年7月以降、乳用種雌子牛の出生頭数は拡大基調から対前年同月比でマイナスに反転する。この経営判断(交配)は約9カ月前の2021年10月以降になされたものであり、ちょうど同じ10月、ホクレンは2022年度の生産目標数量を前年度目標対比で、従来の「3%増」から、新規就農者等向けの1%枠込みで「1%増」に抑制することに決定したことも影響したものと思われる。
2021年末には需要の減少と生産過剰により約5千㌧の生乳廃棄が発生するとの情報が拡散される中で、年末年始等の需給緩和期を乗り切るため、中央酪農会議やJミルク等による生産抑制のための支援措置が講じられることとなった。こうして本格的な生産抑制開始待ったなしの機運が醸成され、後継牛確保のための交配が大幅に減少したものと考えられる。
2022年9月以降、乳用種雌子牛の出生頭数は対前年同月比で約10%もの大幅な減少が継続しているが、これは生乳廃棄が懸念された前年12月以降に交配されたものであり、酪農をめぐる情勢変化と符合する。
生乳生産量の推移と今後の見通し
2021年度の生乳生産が約3%の大幅な増加となったことはすでに触れた。しかしながら、生乳需給の大幅な緩和に加えて歴史的高水準の脱粉過剰在庫を抱える中、全国ベースでは2022年8月以降、主産地の北海道でも9月以降、生乳生産はついにマイナスに転じることとなった。
ホクレンは同年10月、こうした実勢を後追いするように、2022年度の生産目標数量を「5万㌧」引き下げ、それまでの増産抑制という曖昧な表現から明示的に生産抑制に方針を転換する。さらに翌11月には、2023年度の目標数量を前年度生産目標数量対比で「2.2%減」にするということを決定した。こうして、生産者団体は2007年度以来15年ぶりに減産型の計画的生産に2年連続で取り組むこととなった。
牛乳乳製品統計により全国ベースのデータを確認すると、2021年度の生乳生産量は対前年度比2.9%増の765万㌧で、生産抑制に転じた翌2022年度は同1.5%減の753万㌧。Jミルクが本年1月26日に公表した予測によれば、2023年度は同2.9%減の731万㌧となっており、2年連続での減産となる。
さて、ここからが本番である。乳用種雌子牛の出生頭数は2022年7月以降に減少に転じ、9月以降は10%前後の減少が継続している。2023年度(4~11月の累計)に限ってみても10%前後の減少となっている。これらの子牛は、2年後の2024年の夏頃から成牛となって生乳生産を開始するものと見込まれる。乳牛が平均3産(≒年)で更新されるとすると、2024年度の後半に更新される乳牛頭数は1/6程度(6/36月)に限られ、しかも年度後半にしかその影響は現れない。また、1頭当たり乳量が向上することから、2024年度の生乳生産量はほぼ2023年度並みになると予測されている。
したがって、乳用雌子牛の出生頭数の減少が生乳生産量の減少となって顕在化し始めるのは、2025年度に入ってからになると推測される。ただし、乳牛の更新は一気に行われるわけではなく、毎月の更新が累積されて年間の生乳生産量に反映されるため、仮に2025年度に更新される乳牛頭数が毎月約10%減であったとしても、その影響は10%減の1/6程度(10%×1/3産×1/2年)になるものと推測される。
なお、2023年9月以降の出生頭数の減少は、前年同月以降の約10%の減少を分母としたものであるので、仮に2年連続で10%減が続けば、2021年度比では約20%もの減少になる。今後の行く末がどうなるかは神のみぞ知るところであるが、2023年9月の出生頭数はまさにそのような結果(2021年比約20%減)となった。
しかしながら、10月及び11月は対前年比では6%減なので、2021年比では約15%減とやや減速。12月はほぼ前年並み(2021年比約10%減)となったものの、2024年1月には再び減少率が拡大して2022年比で約15%減となっており、引き続き振幅を繰り返す可能性がある。