全酪新報/2024年2月1日号
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「2024年度乳製品の国家貿易、需給次第でバターに振替え」――カレントアクセスの枠内で実施
農水省は1月26日、乳製品の国家貿易による2024年度の輸入枠数量を検証した。今年度と同様、需給が緩和基調にあることから、WTOで輸入機会の提供を約束しているカレントアクセス(CA、生乳換算13万7千㌧)の枠内に留める。品目別では脱脂粉乳やホエイ、バターオイルは今年度当初と同量を設定した一方、バターは需給動向に応じて8千㌧~約1万㌧と幅を持って運用する。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は2月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「食料・農業・農村政策審議会畜産部会、酪農の現状や課題を議論」――適正な価格形成等めぐり意見
農水省は1月29日、省内で食料・農業・農村政策審議会畜産部会(部会長=小針美和㈱農林中金総合研究所主任研究員)を開催した。困窮する生産現場の現状等を踏まえ、今般の畜産・酪農政策の現状と課題について意見を交わした。生産者委員からは適正な価格形成をめぐる議論について、困窮する農家の現状だけでなく消費者の所得水準などの経済的側面も鑑みて検討を行うべきとの意見が上がったほか、乳業者委員からは不測の事態を前提とした畜産・酪農政策の確立などを求める声が上がった。
畜産局の渡邉洋一局長は会議の開会にあたり「生産者の経営安定には、需要に応じた生産、あるいは国産飼料基盤に立脚した生産が必要不可欠で、これらを推し進めていくための具体的な方策について、畜産部会の場で意見交換を行いたい。委員の皆様から様々な意見をお伺いし、国としての考え方もお伝えしながら、今後の畜産・酪農政策の在り方について方向付けをしていければ」と述べた。
また、次回以降の畜産部会における生産者等へのヒアリングの候補者選定の方向性を提示。自給飼料基盤の確保や耕畜連携の取り組みを行う生産者、コントラクター等の関係者、ICT機器を導入した先進的な経営など特徴的な経営を行っている生産者から話を伺う。また、指定団体や乳業メーカーの役職員、小売業者などもヒアリングの対象者として想定している。
ヒアリングの候補者は小針部会長と事務局が選定する。畜産部会では今後、おおむね1カ月に一回のペースで生産者等からヒアリングを実施していく。
省内で開かれた畜産部会。ウェブも併用した
「被災酪農家へ支援対策、乳房炎予防管理の取り組みとして搾乳牛1頭辺り1300円以上交付」――石川県能登半島地震
農水省は1月25日、能登半島を中心に発生した地震被害を踏まえ、被災した農林漁業者への支援対策を取りまとめた。酪農関連では長期の停電による乳房炎の予防管理の取組として搾乳牛1頭当たり1300円以上を交付する。そのほか、牛舎等の簡易修理などのメニューを通じ、総合的に地域の営農再開・継続を後押しする。
乳房炎の予防管理の取組については、震災により生乳出荷が2日以上できなかった経営体が対象。停電や断水の長期化により出荷再開までの日数など各農家で被害状況も異なることを踏まえ、柔軟に対応していく方針。
乳房炎対策として、このほか治療や予防用資材、搾乳機器の点検にかかる費用等について2分の1以内を補助する。
また、停電時の電力確保に要した発電機や断水時の水確保に要した揚水ポンプの借り上げ等(2分の1以内)、被災し死亡・廃用したことによる乳用牛の導入(2分の1以内、妊娠牛1頭当たり27万5千円上限)、家畜の避難・預託(2分の1以内)なども支援する。
さらに酪農ヘルパーの利用にも助成する。被害が甚大だった石川県の場合、1回の利用当たり約4千円を補助する。このほか、牛舎や付帯施設、機械の簡単な修理や簡易牛舎の整備、土砂・がれきなどの撤去等(2分の1以内)も支援する。
30日の定例会見の中で坂本哲志農相は「被災自治体と連携し、被害状況の速やかな全容把握に努めていく。今回取りまとめたパッケージで対応できないことがあれば、追加措置についても検討していきたい」との考えを示した。
「酪農・畜産農家を支援、災害義援金受付中」――石川県畜産協会が口座開設
元日に発生した能登半島地震により甚大な被害を受けた石川県内の酪農・畜産農家を支援するため、石川県畜産協会は現在、県域の畜産生産者団体と連携して畜種ごとに災害義援金を募っている。義援金は全額、被災した生産者の復興のための資金として贈呈される。
酪農への義援金受付口座は次の通り
金融機関名=石川県信用農業協同組合連合会本所
口座番号=「普通預金0035667」。
口座名義=石川県酪農業協同組合災害義援金(酪農)(イシカワケンラクノウギョウキョウドウクミアイサイガイギエンキン(ラクノウ))。
「全国酪農青年女性会議、大阪で酪農に対する理解醸成活動」――牛乳・乳製品の消費拡大など応援呼びかけ
全国酪農青年女性会議(中村俊介委員長)は1月21日、大阪・難波のショッピングモールで酪農理解醸成活動を実施した。全国各地域から集まった酪農家が、牛乳・乳製品の消費拡大と酪農に対する理解や応援を呼びかけた。酪青女委員に加え、全酪連やJミルク、中央酪農会議の職員などの酪農乳業関係者も協力。約40名が活動に参加した。
会場では恒例の模擬搾乳体験をはじめ、実際の飼料の展示やグッズ配布、酪農に関わるクイズなどの取り組みを展開。通行人との対話も交えながら、酪農に対する理解、牛乳消費への協力を呼びかけた。なお、酪青女の理解醸成活動については東京など例年首都圏で実施しているが、大阪市内では初めての取り組みとなる。
イベントの開始にあたり、中村委員長は「昨年は全国会議、そして各地域会議において活動してきたが、未だ厳しい酪農情勢が続いている。本日、大阪でも牛乳の素晴らしさや酪農の重要性を消費者に伝え、この先の酪農の未来につなげたい。皆さん頑張りましょう」と意気込みを語った。
大阪の「なんばCITY ガレリアコート」で実施された酪農理解醸成活動。約40名が参加・協力した
「農林記者会が創立75周年」――給食テーマに記念講演会
本紙など農林・食品関係の専門紙誌で構成する農林記者会は1月19日、創立75周年記念講演会を東京・赤坂で開催した。京都大学人文科学研究所准教授の藤原辰史氏が「給食から考える食と農の自治」と題して講演。学校給食の歴史を振り返るとともに、栄養面やコミュニケーションなど子どもの成長期において給食が果たしている役割の重要性を改めて確認した。講演会後には懇親会も開催され、酪農乳業関係者や農業ジャーナリスト、記者会会員等が交流を深めた。
講演で藤原氏は学校給食の歴史を説明。日本の給食は1889年に山形県鶴岡市で始まったことや、歴史を辿る上で重要な視点として▽子ども達の飢餓と貧困を救う方策▽災害時の復興対策▽戦後期においてはGHQが提案して行われた給食を通じた治安維持と栄養充足――の3点を挙げ、学校給食が推進されてきた経緯などを説明した。
その中で、戦後の学校給食においては、脱脂粉乳が子ども達の栄養失調を防ぐことに大きく貢献したことを紹介。その点について、講演会に参加した関係者とともに当時提供された脱粉への思いを馳せる一幕もあり、参加者からは「粉っぽかったが、当時食べていたもの自体がそれほど良いものではなかったので美味しく感じた」という声もあった。
また、給食が子どもの命を守るということだけでなく、子ども同士や子どもと教師(大人)とのコミュニケーションを図る場として機能していたと指摘。このほか、給食が子どもの成長に加えて、地域産業の活性化にもつながり、人と人を繋げる大きな役割を果たしていることを紹介した。
農林記者会=1948(昭和23)年9月1日に設立。畜産・酪農を含む農林業や食品産業など、農政分野で取材活動を行う専門紙誌や業界紙等で構成する会で、農水省内にある。現在は22者が加盟。
「牧場で輝く家畜の命」連載㉝瀧見明花里さんの写真エッセイ
寒さが厳しい日の早朝、私は牛たちのもとを訪れました。静けさが漂う中、足音だけが「ズボッ、ズボッ」と鳴り響きます。長靴を埋めながら辿り着いた先には、まだ牛たちが静かに眠っていました。その背中には、真っ白な雪が降り積もり、まるで粉砂糖を被ったガトーショコラのようです。「おはよう!」私の姿を見て様子を伺いにくる子もいれば「まだ眠たい」と耳だけで挨拶をする子もいます。
この日は、朝から夕暮れまで安定しないお天気が続きました。少し雪風が強くなった頃、林の中に身をひそめて身を守る姿がある一方で、1頭の牛さんが吹き曝しの道を通って水飲み場へと向かっていきました。そんな勇者を写真に収めるべく、帰り道で待ち伏せ。行きは応援してくれた風も、帰りは敵へと転身し、激しい雪風に顔を背けながら帰ってくる牛さんの姿に「水飲むタイミングを間違えたモゥ」と聞こえてきそうな一コマでした。春まで、もう少しの辛抱だよ!(全酪新報では毎月1日号に掲載しています)
プロフィール
瀧見明花里(AKAPPLE)
農業に触れるためニュージーランドへ1年3ヶ月渡航。2017年より独立。『「いただきます」を世界共通語へ』をコンセプトに、牛、豚、鶏をはじめとする家畜動物を撮影、発表。家畜の命について考えるきっかけを届けている。
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