全酪新報/2024年2月10日号
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「2024年度の生乳生産量0.3%増加を予測」Jミルク――牛乳消費は1.1%減と依然低調、継続的な需要拡大が必要
Jミルクが1月26日に公表した2024年度需給見通しによると、全国の生乳生産量は、今年度比0.3%増の733万㌧を予測した。来年度の北海道の生産目標数量が抑制から増産へと転換されることから、全体では3年ぶりの増加を見込んでいる。一方、消費面では、牛乳生産量は1.1%減と依然低調と予測。脱脂粉乳在庫は対策を講じなければ8万㌧台の見込みで、需給動向次第で在庫は変動する可能性があるため、引き続き需要拡大に向けた取り組みが求められる。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は2月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「離農拡大等で乳用雌牛減少」Jミルク内橋政敏専務――後継牛確保が中長期課題
当面の課題への対応方針について、Jミルクの内橋政敏専務は「資材価格高騰など、生産者にとって厳しい環境が続き離農が拡大したことに加え、業界協調で生産抑制を図ってきた中で乳用雌牛が減少するという状況が続いた。その意味では、今後、中長期的に後継牛を確保する取り組みについてしっかり対応していかなければならない」と強調した。また、今年見直し予定の酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(酪肉近)に関しては「2~3年後、さらにその先に向け、しっかり業界として計画的な生産体制の構築へ議論を深めていく必要がある」との考えを示した。1月26日の需給見通し公表とともに行った記者説明会の中で述べた。
一方、内橋専務は、生乳需給はこれまでひっ迫と緩和を繰り返し、特に近年は脱脂粉乳在庫の急増に対する対応など、需給調整をめぐる課題が表面化してきたことに言及。その上で「やはり新たな仕組みとしてセーフティーネット的なものの構築が求められる。自然災害や季節的な需要期・不需要期への対応などもある。まだイメージとして固まったものはないが、議論を詰めていきたい」と述べた。
「2024年度末時点の乳用雌牛頭数、主力の2~4歳は1万2千頭減予測」――2歳未満の頭数不足傾向も懸念
Jミルクが1月26日に公表した月齢別乳用雌牛頭数に関する見通しによると、生乳生産の主力となる全国の2~4歳の雌牛頭数は、2024年度末時点で今年度比1万2千頭減の58万3千頭と予測した。さらに、将来の生乳生産基盤を担う全国の2歳未満の雌牛頭数は、2万1千頭減の45万5千頭と見込んでおり、将来的な生産基盤の弱体化が懸念される。同日発表した24年度の需給見通しと合わせて示した。
24年度末時点における2~4歳の雌牛頭数を地域別にみると、北海道は5千頭減の34万頭で、11月頃までは23年度を上回るが、12月以降は下回ると予測。一方、都府県は9千頭減の24万1千頭で、23年度を下回って推移する見込み。
将来の後継牛となる2歳未満の頭数については、23年度より大きく下回る見通しで、このうち北海道は34万1千頭(1万1千頭減)、都府県は11万4千頭(1万頭減)とどちらも下回って推移するとみられる。なお、5歳以上の頭数は全国で25万2千頭(5千頭減)、北海道13万5千頭(2千頭減)、都府県11万6千頭(4千頭減)との見通し。
他方で、乳用雌牛出生頭数の23年4~11月までの実績を見ると、全国で10.2%減、うち北海道は8.2%減、都府県は16%減。和牛ET等の受精率が高くなったことから、乳用雌牛の出生頭数は前年よりも大きく落ち込んでおり、特に都府県は離農の影響もあり前年を大きく下回った。
「バター安定供給へ情報交換、国内の生乳生産基盤維持が重要」――乳製品需給等情報交換会議
農水省と農畜産業振興機構は1月26日、関係者による乳製品需給等情報交換会議を開催した。生産者団体及び乳業団体からは、十分な量の国産バターを供給するためには国内の生乳生産基盤の維持とともに、生産者が安心して生産に取り組める環境が重要との意見をはじめ、2024年度の乳製品国家貿易における輸入枠数量は、カレントアクセス(生乳換算13万7000㌧)の範囲内に留めた上でバターに寄せた運用を求める意見が挙がった。会合は非公開で、牛乳乳製品課の須永新平課長が同日に開いた記者会見で会議の内容を報告した。関係者の発言は次の通り。
卸売業者、製菓・製パン事業者等
業務用バターの供給体制については、現時点では大幅な供給制限は発生していない。家庭用バターの供給も問題なく、年度内の欠品の可能性はほぼないと思われる。お菓子需要とともに乳製品需要の増加も見込まれるため十分な量の安定供給をお願いする。
消費者団体
酪農経営が厳しい状況におかれていることに憂慮する一方、消費者の節約志向や買い控えによる牛乳・乳製品の需要低迷は仕方ないと考えている。多くの消費者に牛乳・乳製品の良さをアピールする機会が増えることを期待する。
「牛乳の値上げ期待も、消費者離れと生産現場への影響を懸念」――第3回価格形成協議会が議事要旨公表
農水省はこのほど、昨年末に開催した第3回適正な価格形成に関する協議会(12月27日、一部既報)の議事要旨を公表した。酪農乳業側からは牛乳の適正価格の形成を期待する一方、値上げによる消費者離れと生産現場への影響に対する懸念や政策的な支援の必要性などを訴える声が上がった。他方で、小売・流通側からは、酪農が危機的状況にあるということが伝わってこないという指摘もあった。構成員が発言した内容の一部を紹介する。
この日の会合では、飲用牛乳と豆腐・納豆のワーキンググループで上がった意見等を踏まえ、今後の議論の方向性を整理。公的統計以外のデータを活用した指標作成や、個別企業の情報の公表が困難とされるコストデータは団体での取りまとめを行うなどの案を提示した。
農水省からの説明や提案を受けて中央酪農会議の隈部洋副会長は、生産現場で急速に廃業が進んでいることから、情勢に応じた価格形成に期待感を示した一方、需要への影響について言及。「飲用牛乳の価格が高くなると、消費者が代替品や輸入品に移ってしまう恐れもあり、そうなるとせっかく値上げしても牛乳を生産できない状況になることは生産者も分かっている」と述べ、理解醸成活動の重要性を改めて強調するとともに、政策支援の必要性も訴えた。
酪農乳業側からはこのほか、「生産コストの上昇を価格転嫁することで、消費が減少するという懸念の声があることは承知しているが、生産者として見ると目先の消費が減るというレベルではなく、営農が継続できるかどうかという危機的状況に立ち至っていると認識している」(JA全中・馬場利彦専務)、「各段階で赤字、または利益が取れない状況の中で再生産可能なコストを反映した価格で販売した場合、消費者の負担が大幅に上昇しかねない」(日本乳業協会・沼田一政専務)等の意見があった。
一方、小売・流通側からは「牛乳や豆腐・納豆がどれだけ危機的な状況にあるのか、消費者に伝わらない限り理解は得られないと思う」(日本チェーンストア協会・牧野剛専務)といった指摘があったほか、消費者側からは、消費者の経済状況等にも配慮した多様な価格形成を求める声も上がった。
「飼料増産など推進へ要請、高校生への消費喚起も」――酪政連・佐藤委員長が要請活動に向け抱負
令和6年度の活動方針として、日本酪農政治連盟の佐藤哲委員長は今年度に引き続き地域に酪農家が存続するとともに、それぞれの地域に即した支援の実現へ要請を行っていく方針を強調した。具体的には、自給飼料の増産・利用拡大、高校生をはじめとした消費喚起運動の推進などに必要な支援策を求めていく。本紙など酪農専門紙が2月7日、東京・代々木の酪農会館内で抱負等を聞いた。
佐藤委員長はこれまでの要請活動を振り返り、予備費による飼料関連対策、チーズの競争力強化対策等の継続、脱脂粉乳在庫の削減対策など、厳しい経営環境下にある酪農家への支援として多くの施策が措置されてきたことを説明。「関係者の尽力により乳価が値上げされたことや、国が施策を措置したことを受けて地方行政も酪農の支援に動いてくれたことも大きかった」と話した。
今年の酪政連活動では、2023年度に引き続き有害鳥獣対策や後継者確保対策などを要請していくことに加え、主に自給飼料の増産・利用拡大と高校生を対象とした消費喚起運動を重点に取り組む。このうち自給飼料の利用拡大について佐藤委員長は、広域流通よりも、まずは地域で、投資や作付面積等も可能な範囲で取り組みを進める必要があると指摘。「酪農家や畑作農家が、耕作放棄地でデントコーンや牧草を作り活用するといった体制の整備が重要だ」との考えを示した。
また、飼料では特に子実コーン生産が農地活用につながり、堆肥の循環にもつながる点、養鶏農家へ販売することで換金作物としても活用できる等多くのメリットが得られると強調した。
高校生を中心とした消費拡大運動については「高校に牛乳・乳製品の自動販売機を置いて、全国で300万人以上いる高校生へ消費喚起を図っていきたい」と抱負を述べた。