全酪新報/2020年1月20日号

「過度な北海道依存にリスク、都府県とのバランスが重要」―― 酪農基本対策委で北大・清水池講師が講演(上)

2020-01-20

北海道大学大学院の清水池義治講師はこのほど、全国酪農協会が開いた酪農基本対策委員会で「北海道と都府県の均衡ある発展を目指して」と題して講演。都府県と北海道、家族経営と企業的経営の2つのバランスが重要であると強調し、過度な依存にはリスクがあると指摘した。今号では、都府県酪農の意義に関する内容を紹介する。清水池講師は「道外移出への依存には災害へのリスクがあり、それは現実のものになっている」などと述べたほか、消費地に近い都府県酪農には、理解醸成に寄与するといった大きな意味があり、そのためにも生産基盤強化の取り組みが必要であるとした。

言うまでもなく、日本酪農は危機的な状況にある。需要は堅調な一方、大型の経済連携協定が相次ぎ、改正畜安法による乳価低下への懸念、担い手不足、戸数減少といった要因で生乳生産量が減少。生産基盤の強化が喫緊の課題になっている。


都府県の生乳生産量は1990年代半ばをピークに減少傾向にあるが、北海道は2000年代半ば以降横ばい。2010年には北海道が都府県を上回り、それ以降は格差が拡大している。都府県の生乳不足を補うため北海道からの移出量は、過去5年間で北海道での産地パック牛乳を含めて10万㌧以上拡大。ホクレンの生乳取扱量に占める割合は、15.6%から18.9%まで上昇している。


北海道への過度な依存には、まず災害のリスクがある。一昨年は北海道地震、昨年はスーパー台風や低気圧といった悪天候によるフェリーの欠航が相次ぎ、供給途絶のリスクはすでに現実のものとなっている。また、北海道においても巨大地震・津波や火山噴火の可能性がないとは言えない。


もう一つ、物流面で今の移出量が維持できるか。現在は生乳と産地パック牛乳合わせて概ね年間70万㌧が移出されているが、今後はさらに拡大する可能性がある。


約20年後の2038年度の生乳需給を①都府県は減少傾向が継続②北海道は最近の増加率平均である毎年度2.3万㌧程度増加する③人口は1割ほど減少する④現在の傾向で1人当たり消費量は増加する――という大雑把な条件で独自に推計した。その結果、都府県の生乳生産量は現在の329万㌧から32%減の223万㌧まで減り、北海道は393万㌧から7.6%増の423万㌧まで拡大する。


道外移出量は現在の倍必要


一方、飲用向け需要は400万㌧から3.2%減の387万㌧となるが、人口減少率に比べはるかに小さい。よって、都府県の飲用向け生乳がさらに足りなくなり、現在の2倍である140万㌧の移出が必要になる。


しかし、物流の現場はすでに労働力不足が深刻な状況。将来的には輸送機器の自動運転化やAIの導入で労働力を補う仕組みができるだろうが、単純に考えても「ほくれん丸」4隻に相当する追加輸送力も必要になり、港湾施設の増強も求められる。よって、現在の2倍の生乳を送り続けられるかどうかは疑問だ。


さらに、乳製品需給の問題もある。道内の飲用比率が高まると乳製品向け生乳がさらに減少し、乳製品工場の稼働率が極端に上下動する。その結果、道内で乳製品を生産できないと判断する乳業メーカーが出てきてもおかしくない。国産乳製品の需要があるにもかかわらず、生産できなくなるという需要者への責任問題もある。


地域的分業体制が合理的


それらのことを考えると、北海道は乳製品向け、都府県は飲用向けの生乳を供給するという、地域的な分業体制は合理的であることを確認する必要がある。都府県は人口の9割以上を占め、消費地にも近いため、新鮮な牛乳を提供することができ、消費者の理解醸成にも寄与する。よって、消費地に近い都府県に酪農が存在する意味は非常に大きく、そのためにも都府県酪農がしっかりと生乳を安定供給できる枠組みを作る必要がある。


北海道のプール乳価は?


北海道酪農にとって飲用向けである移出量が増えるとプール乳価が上昇するという話もある。しかし、冷静に考えて1㌔当たり20円の移出コストを差し引くと、北海道のプール乳価よりも低い。よって、飲用向けを増やしても必ずしもプール乳価は上がらないし、移出量が増えることで今のコスト水準が保てるか。仮にコストが上昇するならば、移出するメリットがあるのかということ。


さらには、改正畜安法の施行により生乳流通が自由化される中で、農協がタッチできない生乳流通が増加すると、需給安定に懸念がある。つまり、北海道からの移出に依存することにはリスクがあることを自覚する必要がある(次号に続く)。

お断り=本記事は1月20日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「交雑牛枝肉相場は堅調」――スモール・肥育素牛、今年も高値推移か

2020-01-20

昨年は大型台風や豪雨などの天候不順、消費税増税による節約志向の高まりで、牛肉消費は例年になく盛り上がりに欠けた。枝肉相場は、和牛が軟調に推移する一方、乳用種由来の枝肉(交雑種=F1去勢・雌牛、乳用種去勢牛)はおおむね堅調だった。肥育素畜(スモール、肥育素牛)価格は、枝肉相場とほぼ連動して高値圏で推移した。


東京食肉市場における交雑種の枝肉卸売価格(消費税込、以下同じ)は一昨年から堅調で、去勢牛、雌牛のB3、B2等級は昨年9月までそれぞれ前年同月を上回って推移した。


1~12月(12月は速報値、以下同じ)の去勢牛の平均枝肉単価はB3が前年比7.3%(112円)高の1648円、B2は11.3%(154円)高の1524円となった。高値が続いた和牛から交雑種に需要が一段とシフトした。交雑種の全国の出荷頭数が減少したことや、肉質が向上していることも、引き合いが強い要因となっている。


全国の出荷頭数が年々減少している乳用種去勢牛のB2価格は、前半は前年並みの1千円台、後半は前年を下回って推移したものの、900円台を維持した。和牛の指標となるA4は4月以降、去勢牛、雌牛ともに前年割れとなり、最需要期である11~12月も低調だった。


肥育素畜価格は、慢性的な出回り頭数の不足により、高値圏で推移。1~12月のスモール価格は、全国主要市場平均で交雑種(雄雌含む)が前年比8.3%(2万1千円)高の28万円、乳用種雄は12.0%(1万6千円)安の12万円となった。


肥育素牛価格は、全国主要市場平均で交雑種去勢牛が7.4%(3万4千円)高の49万3千円、乳用種去勢牛は5.6%(1万4千円)安の23万2千円。両品種のスモール、肥育素牛の価格は、それぞれ枝肉相場とほぼ連動した。


大型の貿易協定の相次ぐ発効で、今年の牛肉需給及び素畜動向は不透明感が強まっている。一昨年末にTPP11、昨年2月に日EU・EPAが発効。昨年の牛肉輸入量は、前半は増加傾向だったが、後半は減少傾向となった。豪州産牛肉の価格が中国の買い付けにより、上昇したことが主な要因。中国ではASF(アフリカ豚コレラ)の発生が拡大し、豚肉のみならず牛肉の輸入量が増加している。


今月1日には日米貿易協定が発効。3協定による輸入牛肉の関税率などは、4月からそれぞれ次年度の水準となる。豪州産は中国の動向で左右されるが、米国産の関税引き下げによる輸入量の増加は避けられない。


今年の出荷頭数は、家畜改良センターの個体識別登録データから、昨年に続き、交雑種と乳用種は前年に比べ減少、和牛は増加が予測される。


需要面では、東京五輪・パラリンピックが開催され、消費の高まりが期待できる。インバウンド(訪日客)需要も見込める。一方、消費者の低価格志向がより強まっている。牛肉の嗜好が、従前の脂肪交雑(サシ)志向から赤身肉志向に変化がみられるなど、多様化している。


また、温暖化により、季節を問わず、焼き肉やステーキ用の動きが良い傾向もみられる。


このようなことから、需要にマッチした交雑種の枝肉相場は、引き続き堅調を保つか。ただ、既に高値となっており、さらなる上伸は考えにくい。もちあいの展開が予想される。乳用種去勢牛は値ごろな国産牛肉として、底堅い需要が見込める。


酪農家での性選別精液の活用や和牛受精卵移植などで、乳用種雄及び交雑種の出生頭数の減少が見込まれる。スモール、肥育素牛の価格は、頭数不足も相まって、今年も高値圏で推移するものとみられる。

「自然災害見舞金を予算化」中酪・20年度事業――Webで新規就農相談窓口も

2020-01-20

中央酪農会議は19年12月19日、都内で開いた理事会で2020年度事業計画の方針を承認。多発する自然災害への対応として、被災した酪農家への見舞金として年間3千万円を予算化する。また、指定団体機能の強化対策として、3月までに取りまとめるクーラーステーションのHACCP制度化を支援するための手引書の普及啓発に努めるほか、新たな事業として新規就農の相談窓口としてのプラットフォームをWEB上で作成する。


自然災害対応については、激甚災害に指定された場合が対象。原則として被害額の20%を見舞金として該当する指定団体に贈る。財源は酪農理解醸成事業として年度当初に3千万円を計上。被害総額が予算総額を超える場合は、被害額の15%・1500万円を上限とする。


なお、見舞金での対応が困難な被害が発生した場合には、業界内外に支援金を募ることを含めて理事会で協議する。


20年度事業については、酪農家が「誇り」「やりがい」「夢」を持てる産業を確立していけるよう①指定団体の組織機能強化・生乳流通対策②生乳需給安定化・生産基盤強化対策③酪農理解醸成活動――の3事業を重点事業とする。


具体的な事業計画は3月に開催する理事会で正式に決定する。

「農水省がYouTuberに」――1月より農林水産業の魅力発信

2020-01-20 農林水産省公式YouTuber

農水省は1月7日より、公式YouTube「BUZZ MAFF」の配信を開始した。本省と農政局の職員で構成する14チームが農林水産物の良さや農山漁村の魅力を国内外へ伝えている。


江藤拓農相は同日の定例会見で「ネットという媒体を通じて日本全国、世界に発信することで若者の農林水産業、農林水産省に対するイメージを変えるきっかけになるのではないか」と期待を示した。


1月15日現在、都内のアンテナショップで購入した食材を使い、公園でできるゆるい大人のピクニックを紹介する「大人のピクニック」や、さつまいもに心を奪われた個性的なゲストを迎えて秘められたポテンシャルや魅力を発信する「さつまいも大好きチャンネル」など7つのコンテンツをラインナップしている。

酪農会館建設の経過
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