全酪新報/2023年12月10日号
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「2024年度畜産物価格、補給金単価等、関連対策決定へ」――生産現場の実情反映求める
2024年度畜産物価格及び関連対策の決定に向け、自民党は12月1日より議論を開始した。6日に自由討議を行い、7日に農林幹部へ一任した。一連の会合で、困窮する生産現場が経営意欲を持てるよう実情を反映した適正な補給金単価等の設定および対策を求める声が相次いだ中、7日の会合で党畜産・酪農対策委員会の古川康委員長は「これまでいただいた意見を胸に刻み、何とか良い方向に向かえるようしっかりと対応していきたい」と意気込みを示した。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
12月1日に自民党本部で開かれた会合で要請する酪政連の佐藤委員長
お断り=本記事は12月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
第62回農林水産祭、有田牧場(熊本)に天皇杯授与」――耕畜連携に成果
農水省と日本農林漁業振興会は11月23日、東京・代々木の明治神宮会館で2023年度(第62回)農林水産祭式典を開催した。畜産部門における天皇杯として㈱有田牧場(熊本県錦町)が表彰された。代表取締役の有田耕一さんは「家族や従業員、そして地域をはじめとした関係者の皆様のおかげ。今回の受賞を機に、食育の観点や持続可能な農業・畜産を行っていくためにも、地域での理解醸成活動に取り組んでいきたい」と喜びを語った。妻の文さんも「多くの方々に支えられての受賞。これまで主人とみんなで一生懸命頑張ってきたことが報われ、とても嬉しい」と笑顔を見せた。
有田牧場は町内に3牧場を有する酪農を基礎とした肉用牛繁殖・肥育一貫の乳肉複合経営。所有地等に加え、地域との耕畜連携により高い飼料自給率を実現しており、作付延べ面積は約400㌶、耕種農家からイネWCSや稲わらを調達するなど、飼料基盤に基づく強靭な経営を確立している。このほか、子牛用授乳マシンの活用等により省力化と損耗防止等を図っている。
式典では岸田文雄首相からの祝辞も読み上げられた。祝意を表した上で岸田首相は「受賞者の皆様は自身の経営や地域の課題を真正面からとらえ、国産飼料等地域資源を活用した経営の強靭化やスマート技術の活用による生産性向上などに積極果敢に取り組まれた。それは経営・地域発展にとどまらず、広く我が国農林水産業・農山漁村の着実な発展につながるものと言える。皆様の取り組みをモデルとして新たに挑戦する方々が後に続き、挑戦していく気風が次世代へと引き継がれることを期待する」とメッセージを贈った。
「2023年の酪農業界を振り返る㊤(1~6月)」
世界的な穀物需要の高まり、長期化する各種コストの上昇や円安の影響により酪農家は依然として厳しい状況にある。23年においても、国による飼料高騰対策等の継続・拡充、生産者をはじめ関係団体や乳業者による消費拡大の取り組みや理解醸成運動、畜産・酪農における生産コストの適切な反映を目指した議論の開始、飲用向け・はっ酵乳向け乳価の㌔当たり10円値上げ等が講じられてきた。一方、長引くコロナ禍の影響や牛乳消費の低迷、例年以上に進行している離農の問題など課題は山積している。
長引くコスト上昇の影響消費低迷など課題は山積、飲用向け等10円値上げ、配合飼料高騰に緊急対策
1月
14日 全酪連が消費拡大に向け、東京・代々木の酪農会館で4回目となる「らくのうマルシェ」を開催。
17日 自民党総合農林政策調査会や農林部会等は合同会議を開き、配合飼料高騰の影響を踏まえて配合飼料価格高騰緊急特別対策の継続を党として決めた。
27日 農水省は乳製品国家貿易の23年度における輸入方針を決定。枠数量はカレントアクセスの範囲内で、バター輸入量を22年度当初より400㌧拡大の8千㌧に設定した。
2月
3日 農水省が農林水産物・食品の22年輸出実績を公表。10年連続で過去最高額を更新したほか、牛乳・乳製品も粉ミルクやアイスの好調により輸出額3割増となった。
10日 関東生乳販連は生乳受託販売委員会を開き、飲用向けとはっ酵乳向けの両用途において、6月からの㌔15円値上げを目指して交渉開始。
21日 関東生乳販連と東北生乳販連は、共同出資により生乳検査体制を集約し、生乳検査センターを設立した。指定団体間としては全国で初めて。
28日 中酪が1月時点の指定団体別出荷農家戸数を公表。近年の1.5倍以上にまで減少幅が拡大するなど酪農家の離農が進行している実態が明らかとなった。
3月
8日 酪政連は中央委員会を開き、23年度の運動方針を承認。生産現場への支援に向け、各地域の実情に合わせた要請運動を展開していくことを確認した。
15日 Jミルクは脱脂粉乳の過剰在庫削減対策の実施期間(23年9月まで)を6カ月間延長し、24年3月末までとすると発表した。引き続き飼料転用等を進め、関係者一体で需給ギャップ改善を図る。
28日 政府は畜産・酪農支援に向けた緊急対策を閣議決定。1~3月の配合飼料価格に対し、予備費から㌧当たり8500円の補てん金交付を決めたほか、補てんが発動しやすくなるよう基金制度に特例も新設した。
30日 関東生乳販連は飲用向けとはっ酵乳向け乳価について、8月1日分より適用する方針で、㌔当たり10円値上げで大手乳業3社と合意したと発表した。
適正価格議論始まる、基本法見直しへ方向性整理
4月
12日 生活クラブ連合会はコスト高騰等により困窮する酪農家への支援として、組合員から緊急的に寄付金を募る取り組みを展開。その贈呈式を都内で開き、5348万1千円を酪農関係3団体へ贈呈した。
20日 ホクレンは23年度期中での乳価交渉の結果、飲用等3用途で8月1日取引分より㌔当たり10円値上げで大手・中堅乳業者15社と合意したと発表した。
28日 畜産・酪農の適正な価格形成に向けた環境整備推進会議が初会合。飼料コスト高騰等で困窮している生産現場を踏まえ、生産コストを適切に取引価格へ反映できる環境整備に向け議論を進める。
5月
10日 韓国で19年1月以来4年ぶりに口蹄疫が発生。これを受け、農水省は国内の関係者に対して防疫対策の遵守徹底を求めた。
26日 畜産・酪農の適正な価格形成に向けた環境整備推進会議の第2回会合が開かれ、飼料価格の変動など生産コストを乳価へ反映させる仕組み作りを議論。
29日 食料・農業・農村基本法の見直しへ主要施策の方向性等を整理した中間とりまとめを策定。農相へ手渡した。
6月
7日 自民党酪政会が総会を開き、酪政連から飼料の広域流通支援や消費拡大の推進等の要望を聴取。議員からも離農防止に向けた対応の必要性を指摘する声など、酪農存続に向け多岐にわたる意見が上がった。
22日 全国酪農協会が東京・元赤坂の明治記念館で創立75周年記念式典を開催。これまでの歩みを振り返るとともに、日本酪農の持続的な発展に向けた取り組みを関係者一同で誓った。
農水省で開かれた畜産・酪農の適正な価格形成に向けた環境整備推進会議の初会合