全酪新報/2020年5月10日号

「生乳生産量4年ぶり増産」2019年度牛乳統計――都府県は依然減少続く

2020-05-10

農水省が4月24日に公表した牛乳乳製品統計によると、2019年度の全国の生乳生産量は、736万2371㌧で前年度比1.1%増となり4年ぶりに増産に転じた。都府県は依然減少が続いたが、北海道が過去最高の生産量となった。一方、牛乳消費量は前年度並みの315万8800㌔㍑。なお3月は新型コロナウイルス対策のための外出自粛や一斉休校が影響し、業務用需要や学校給食用牛乳の消費が大幅に低下。牛乳全体で3.9%低下した。

2019年度の全国の生乳生産量は736万2371㌧と1.1%の増加。北海道の増産が都府県をカバーし、前年度よりも生産量は増加した。月別にみると、7月にほぼ1年ぶり(2018年8月以来)に前年度を上回った。8月に暑熱の影響で減少したが、9月以降は7カ月連続で前年同月を上回って推移した。


地域別に見ると、北海道の生産量は409万1890㌧、3.1%増と大きく増加し、全ての月で前年を上回った。9月は18年に発生した胆振東部地震の反動から大幅に増加。以降の月でも、2月を除き毎月3%程度伸長している。


一方、生産基盤強化が喫緊の課題となっている都府県は1.3%減少し327万481㌧と依然減少が続いた。


地域別では、唯一中国が29万8559㌧と3.0%上回ったものの、それ以外の地域は下回った。県単位では、中国地方の鳥取・島根・岡山の3県のほか、青森県や熊本県など複数の県で前年度を上回った。


一方、牛乳消費量は315万8800㌔㍑で、前年度比0.1%増とほぼ前年並み。冷夏・多雨だった7月と、今般の新型コロナウイルス対策のための一斉休校により学乳の需要が落ち込んだ3月を除き、年度を通じて堅調に推移した。牛乳消費量のうち、それぞれ1割程度を占める業務用は31万7554㌔㍑(2.3%減)、学校給食用は32万9345㌔㍑(7.5%減)と減少した。特に、新型コロナ対策としての一斉休校の影響や、外出自粛のムードが高まった3月の消費動向を見ると、牛乳消費量は24万1918㌔㍑で前年同月比を3.9%下回った。このうち、業務用は2万3345㌔㍑(10.7%減)と1割程度の減少。学乳は2926㌔㍑、86.8%減と大幅に低下した。


このほか年度を通じた消費量のうち、加工乳・成分調整牛乳は40万9193㌔㍑(0.8%減)と9年連続の減少。一方、18年度まで5年連続減少していた乳飲料が113万9666㌔㍑(1.7%増)と6年ぶりに前年度を上回った。


さらに近年消費が停滞しているはっ酵乳は103万3169㌔㍑(2.8%減)と3年連続の減少。しかし、新型コロナの拡大以降、感染防止に備えた健康機能への注目からか、2~3月はそれぞれ8万4931㌔㍑(3.6%増)、9万3587㌔㍑(3.9%増)と前年度より上昇している。

お断り=本記事は5月10日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。

「農水省、需給調整へ乳業者支援」――乳製品製造保管に協力金交付

2020-05-10

農水省は5月1日、配乳調整に協力する乳業者への支援策として「生乳需給調整緊急支援事業」(予算額18億5400万円)を措置した。新型コロナ感染症に伴い需給が緩和している窮状に対し、長期保存可能なバター等乳製品を製造する際の協力金、保管経費の補助を行い、処理不可能な生乳の発生防止を図る。


同事業は、①配乳調整協力支援対策②チーズ等保管流通対策――の2つが柱。うち①は、加工原料乳を1日当たり2㌧以上受け入れる乳業者及び当該乳業者にチーズ等を製造委託する乳業者が対象で、期間内(4月7日から緊急事態宣言終了日もしくは6月15日のいずれか早い日)に、長期保存可能なハード系チーズ、バター、全粉乳の製造により指定団体の行う配乳調整に協力することで協力金を交付する。


協力金は加工原料乳数量(れん乳類除く)の前年増加分に生乳1㌔当たり50円以内で補助。なお、コロナ禍により業務用需要が減少する中で影響の大きい生クリーム等に関しては、凍結処理などで生産を維持しているメーカーを支援すべく同数量に含めた。


また②では、①で製造した乳製品の保管に掛かる経費を保管数量1㌔当たりに対し、ハード系チーズ・バター1カ月当たり3円以内、全粉乳同2円以内で補助する。実施主体はJA全農、ホクレンなど。

「酪農乳業5団体が牛乳等提供に国の支援要請」――子ども食堂や医療関係者向け

2020-05-10

酪政連など酪農・乳業5団体は5月7日、自民党農林部会ほか主要国会議員に対し、子ども食堂や医療関係者に牛乳等を提供する取り組みに支援を求める要請を行った。


新型コロナ感染症の拡大で子ども食堂等から、給食の中止で摂取できなくなった牛乳の提供を求める声が出ていることや、不眠不休で働いている医療関係者等への牛乳を提供する取り組みに支援を求めた。


要請は酪政連・佐藤哲委員長、中央酪農会議・中家徹会長、日本乳業協会・西尾啓治会長、全国乳業協同組合連合会・長谷川敏会長、全国農協乳業協会・大久保克美会長代行の連名で書面により行われた。

「脱脂粉乳16.3%増、バター26.9%と在庫は大幅増加」――2019年度乳製品需給

2020-05-10

4月24日発表の農水省牛乳乳製品統計によると、2019年度の乳製品生産量は脱脂粉乳13万497㌧で前年度比8.7%増、バターは6万5495㌧9.5%増といずれも大幅増加となった。この結果年度末在庫は脱粉7万6270㌧(うち国産7万4383㌧)で16.3%増。バターは2万8750㌧(同2万4755㌧)で26.9%増となり、いずれも大幅に増加した。

「4月の需給は混乱なし」Jミルク――引き続き注視・対応が不可欠

2020-05-10

Jミルクは5月1日、直近の牛乳類の販売動向を発信した。それによると、新型コロナウイルスの感染拡大をふまえて4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大して以降、業務用需要の減退等により需給の混乱が懸念されているが、関係者の努力や牛乳類の堅調により4月においては大きな混乱は生じていない。


一方、5月後半より生産量の増加が見込まれることから、Jミルクは「処理が不可能な生乳が発生しないように、業界で一致協力した需給調整ならびに消費拡大に対する強力な取り組みを継続してゆくことが重要」としている。


直近(4月20日週)の牛乳類の販売状況は、家庭内需要増や消費拡大の取組を背景に、牛乳類トータルで前年同期比23.4%増と堅調に推移。ヨーグルト類も引き続き前年を上回っている。

「新型コロナ、緊急事態宣言延長」――5月14日メドに再検討

2020-05-10

政府は5月4日、新型コロナ感染症の拡大阻止へ4月7日に発出した緊急事態宣言を、現状をふまえて5月31日まで延長すると発表。全都道府県対象で現在の枠組みに変更はなく、5月14日を目途に改めて宣言を解除可能か否か判断するとしている。一方、酪農では今後ピークを迎える生乳生産による需給への影響も懸念されており、江藤拓農相は8日の定例会見で「工場の処理能力を過ぎれば最終的には生乳廃棄。それでも追いつかなければ頭数自体を減らさなければならない」と危機感を示した上で、引き続きの牛乳・乳製品の消費を呼びかけた。

「改良が乳量増加に大きく貢献」――家畜改良センター、入江理事長インタビュー

2020-05-10

全酪新報と酪農経済通信社は3月、独立行政法人家畜改良センター(福島県西白河郡西郷村)の入江正和理事長の共同インタビューを実施した。その中で入江理事長は「平成の30年間で1頭当たり乳量が2千㌔以上伸びたのは、遺伝的な改良の成果が大きい」と強調。今後の展望については、このほど策定された新たな家畜改良増殖目標の達成に向け、ゲノミック評価など新たな技術を活用しつつ、関係機関と協力・連帯し改良を推進していく考えを示した。


――家畜改良センターはどのような業務を行っているのか?


優良な家畜や家禽の増殖、牛の個体識別業務の運用、畜産現場で実践できる技術開発を通じ、日本の畜産の発展と畜産物を通じた国民の豊かな食生活の実現に貢献することを目的としている。センターは、1872年(明治5年)創設の開拓使所管牧場にはじまり、全国に設置された軍馬育成のための種馬所を前身としている。その後、1946年に農林省種畜牧場として名称を統一した。


1990年には、効率的な家畜の改良増殖等を推進するための組織として、農林水産省家畜改良センターを設立。旧福島種畜牧場を本所とし、相互に独立していた各種畜牧場をセンターの内部組織として位置付けて体制を強化した。そして、2006年に独立行政法人に移行し、現在に至っている。


センターは福島県を本所として、北海道から九州まで11カ所の牧場・支場がある。家畜伝染性疾病のリスクがあるため、畜種ごとに役割を分担。職員数は約750名で、様々な業務を担当している。乳用牛については、新冠、十勝、岩手の3カ所で飼養されている。本所は、各場所の家畜改良業務の推進・調整、遺伝的能力評価や牛の個体識別業務など中枢的な役割を担っている。


乳用牛の遺伝的能力評価については、泌乳形質、体型形質などの実測値と血縁情報を用いて、種雄牛と雌牛の遺伝的能力評価値を算出し、公表している。


また、近年は、遺伝子情報を組み合わせたゲノミック評価も取り入れており、遺伝率が低い繁殖形質などの評価値の信頼度も向上している。


そのほか、肉用牛及び豚の改良、消費者ニーズや我が国の気候風土に対応した肉用鶏・採卵鶏の開発・普及、飼料作物種苗の検定・供給のほか、畜産現場で活用できる情報や実践的な技術の開発を行っており、産業界、学界からも高い評価を得ている。



――個体識別業務の現状は?


牛トレーサビリティ法は、国内でBSEが発生したことを受けて03年に施行された。それにより、国内全ての牛に耳標を装着し、個体情報や異動履歴を一元的に管理する仕組みが構築された。そのうち、センターは牛個体識別台帳の情報管理を担うことになった。牛の出生や転出、と畜などの異動履歴等を蓄積した個体識別情報は、各種統計、食肉の産地表示、補助事業の申請、経営における個体管理、輸出する際の国産牛肉の証明など様々な形で活用されている。


牛の個体識別情報はインターネットで公表しており、04年4月から昨年11月末までの累計検索頭数は約5億2千万頭。04年当初は年間1500万頭に満たなかったが、11年度まで徐々に増加傾向、それ以降は横這いで推移していたが、18年度は3982万頭、平日1日当たり13万9千頭と過去最高を記録した。


――乳牛改良の成果は何か?


乳牛1頭当たりの乳量は、平成元年の1989年度に6380㌔だったものが、2018年度には8630㌔と平成の30年間で2千㌔増加している。その成果は酪農家の日々の飼養管理もさることながら、乳用牛の遺伝的能力の向上が大きく寄与している。


センターは、泌乳形質や体型形質に加え、生涯生産性の向上に寄与する泌乳持続性や受胎率などの繁殖形質についても遺伝的能力評価も公表している。近年は、遺伝子情報を組み合わせたゲノミック評価も取り入れ評価値の信頼度の向上に取り組んでおり、遺伝率が低い繁殖形質などの改良に貢献している。また、ゲノミック評価では、後代検定前の若雄牛や未経産牛であっても一定程度の信頼度の遺伝的能力評価値が得られることから、遺伝子情報が得られた個体の評価は毎月実施し、所有者に情報提供を行っている。毎月実施することにより、種雄牛の世代間隔の短縮が可能となるなど、改良速度の向上に貢献している。


このほど策定された新たな家畜改良増殖目標の実現に向け、酪農家の皆さんと現場の技術者の評価や理解を得られるよう、関係団体と連携して引きる続き改良に取り組んでいく。


18年10月からは、全国版畜産クラウドの運用が開始され、個体識別情報も活用されている。また、収集した個体識別のためのデータは、ホームページで検索可能な形で公表、けい養牛管理や母牛の分娩履歴の一覧、確定申告資料や公的な証拠書類等、酪農家の方々の要望にあわせ、様々な形で提供している。なお、今般の増頭奨励金の交付申請においても、個体識別情報の活用により、手続きを簡素にすることが検討されていると承知している。今後とも個体識別データを飼養管理等の色々な場面で幅広く活用いただきたい。


プロフィール=1978年京都大学農学部卒業後、京都大学大学院入学、79年大阪府立農林技術センター入所、04年宮崎大学農学部教授、14年近畿大学生物理工学部教授、17年より現職。

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