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全酪新報/2024年10月1日号
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「乳製品の国家貿易輸入枠、生乳換算18.7万㌧据え置き」――6月判断の拡大分維持
農水省は9月27日、乳製品の国家貿易による今年度の輸入枠数量を検証した。現時点でバター最需要期の12月までの供給に過不足は生じないとの見通しから、カレントアクセス分(生乳換算13万7千㌧)にバター枠4千㌧を追加して生乳換算18万7千㌧の枠数量を設定した6月末の検証・判断を据え置くと発表した。品目別の内訳もそのまま変更はない。-詳細は全酪新報にてご覧ください-
お断り=本記事は10月1日号をベースにしておりますが、日々情勢が急変しており、本ホームページでは、通常の態勢を変えて本紙記事にその後の情報も加えた形で状況を掲載するなど、一部記事の重複などが生じることもあります。ご了承ください。
「全酪連、10~12月期の牛用配合飼料1㌧当たり4200円引き下げ」――原料価格下落や為替等で
全酪連はこのほど、24年10~12月期の牛用配合飼料価格を前期(7~9月)から、「1㌧当たり4200円値下げ」、哺育飼料価格も「1㌧当たり1万7千円値下げ」すると発表した。前期は為替相場等の影響で配合飼料、哺育飼料ともに値上げだったが、今期は下落している原料価格や円高の進行等が影響し、一転して値下げとなった。
米国農務省が6月28日に発表した需給見通しによると、米国産とうもろこしの作付面積見通しが事前予想を上回ったことや、産地で生育に適した天候となったことなどから価格が下落。6月上旬には450㌣/㌴前後だったが、現在は410㌣/㌴前後で推移している。今後は新穀の豊作が期待されるものの、南米産地において乾燥による作付けの遅延が懸念されており、相場は底堅く推移すると見込まれる。
また、大豆粕は米国産地で生育に適した気候となったことなどから330㌦/㌧まで下落。その後、米国産地での乾燥懸念などから上昇し、現在は350㌦/㌧台。海上運賃は6月60㌦/㌧前後で推移していたが、8月には航海日数の長い南米産穀物の輸送需要が減少し、船腹需要が緩和したことなどから下落、現在は50㌦/㌧台前半となっている。
配合飼料価格をめぐっては、9月20日にJA全農が全畜種総平均で1㌧当たり約4850円値下げ、ホクレンは約4900円値下げを決定した。
「石川・能登で豪雨被害、2戸の酪農家で生乳廃棄発生」――現在は出荷再開
石川県酪農協によると、9月21~22日の石川・能登半島における豪雨により、珠洲市の一部酪農家で停電や断水が発生。2戸の酪農家で生乳を廃棄せざるを得ない状況となった。
このうち山頂付近の酪農家では県道から牧場までの道が通行出来ずに一時孤立状態となったが、復旧作業により23日から通行可能となった。
発電機により23日から2戸とも搾乳が再開できたものの、乳質基準が満たないため26日までは出荷できない状況が続いたが、27日夕と28日夕にそれぞれ出荷を再開することができた。
一方、断水解消の目途は立っておらず時間を要する見込み。24日以降は珠洲市と北陸酪連が給水支援を実施中。
崩れた私道(石川県酪提供)
牧場内。土砂崩れで倒れた電柱(石川県酪提供)
「北海道酪農、都府県酪農、均衡ある発展に向けて」――第1回
北海道大学大学院・農学研究院
食料農業市場学研究室准教授 清水池義治
~北海道酪農は需要を充足できるか~
「令和の酪農危機」の中で、日本酪農は大きな岐路に立っている。次世代に日本酪農を継承するためには、いま抜本的な改革が求められている。
しばしば北海道は「酪農王国」とも形容される。「競争力」のある大規模経営の存在と北海道の牛乳・乳製品に対する消費者の高い評価もあり、数多くの困難に直面する中でも北海道酪農は相対的に「順風満帆」に見える。たとえ都府県酪農が衰退していっても、北海道酪農だけで日本国内の需要をカバーできるので心配ないといった声も聞こえてくる。だが、本当にそうだろうか。
本連載では、①国内需要の充足②大規模経営の脆弱性③物流危機の観点から、北海道酪農と都府県酪農の均衡ある発展が必要であることを検討し、そのために求められる酪農政策の姿とそれを実現する方策を述べていく。
増産の実現性、物流問題…、需要充足は都府県も不可欠
第1の問題は、北海道酪農の有する牛乳・乳製品供給力、すなわち北海道酪農は日本の牛乳・乳製品需要をどのくらい充足できるかである。
生乳生産量の全国合計は、1990年代中葉に860万㌧のピークに達した後、減少に転じ、2010年代後半には730万㌧まで減少した。その結果、バター不足が生じ、社会問題となった。だが、2020年度以降は明瞭な生乳生産量の増加が見られる。生産量増加の理由は、酪農家の懸命な経営努力と、それを後押しする畜産クラスター事業など政府の増産対策である。
一般的な印象と異なり、北海道の生産量が都府県を上回ったのは2010年度であり、近年のことである。北海道と都府県の生産動向は対照的で、この30年間で北海道は120万㌧増加したのに対し、都府県は180万㌧減少となった。都府県酪農の縮小が止まらないことから、北海道酪農だけで国内需要の充足が可能かという論点が出てくる。
日本の牛乳・乳製品需要は生乳換算で、およそ1200万㌧。1990年代からほぼ横ばいである(農林水産省「食料需給表」)。このうち、国産でなければ供給困難と思われる牛乳等用途(約400万㌧)と、生クリーム等用途(約130万㌧)が合計530万㌧ほどある。一方、北海道の生乳生産量は現在400万㌧程度なので、北海道酪農だけで最低限の需要を充足するのは難しい。なお、牛乳等用途は牛乳・成分調整牛乳・加工乳・乳飲料・発酵乳、生クリーム等用途はクリーム・脱脂濃縮乳・濃縮乳を指す。
具体的に試算した結果が、表1である。牛乳等および生クリーム等向け生乳のみを国内供給し、脱脂粉乳・バター、チーズは全量輸入とする極端な想定である。需要量・供給量は、コロナ禍直前の2019年の数値をベースとした。
まず、北海道の生乳を生クリーム等に仕向け、その残量を牛乳等に仕向ける。北海道の生乳のみでは牛乳等向け需要を充足できないので、都府県で必要な生乳供給量を求めた。そのうえで、最も需給が逼迫する9月の必要生乳供給量をベースに、2019年の生乳生産量の月別変動から9月以外の各月の生乳生産量を試算した。9月以外の月では、牛乳等向け需要量を月別生産量が超過するため、余剰乳が発生する。
試算結果によると、北海道が供給可能なのは国内需要の76%で、全需要充足のためには都府県で最低155万㌧の生乳生産量(現状の47%水準)が必要である。ただし、需給の季節変動によって年間33万㌧の余剰乳が発生することから、貯蔵可能な脱脂粉乳・バターの国内製造が維持される必要がある。
北海道があと120万㌧増産できれば(あるいは需要が120万㌧減少すれば)、数字上は都府県酪農が「不要」となる。だが、直近で120万㌧を増産するのに30年を要していることから、近い将来に実現可能とは思えない。また、北海道から都府県へ移出する生乳、ないし牛乳は現状の4倍弱に増えるが、後に述べる物流問題を踏まえると現実的ではない。加えて、牛乳・乳製品の自給率は現状の6割強から4割まで低下する。
以上から、北海道酪農だけでの需要充足は困難であるとともに望ましくなく、都府県酪農の存続が必要である。