乳滴/2021年11月20日号
「令和の酪農危機」

“令和の酪農危機”が一段と深刻さを増しつつある。長期化する新型コロナウイルスによる影響で、生乳需給が悪化。酪農経営には生産コスト上昇が襲う、かつてない複合的な危機である。
生産現場では、輸入飼料、燃油、肥料の急激な上昇に四苦八苦。個体販売や素牛、初生牛等の副産物収入の低下が加わり酪農経営は、経営継続の危機を迎えている。
心配なのは、需給問題(乳製品の在庫対策)と表裏一体となっている酪農経営が、自助努力だけでは対応しきれない状況にあることで、このままでは転業・中止に追い込まれる経営も出てくる。
配合飼料価格は20年第3四半期(10~12月)から急騰。現時点では急騰前と比較して1㌧当たり、1万4千円弱、約2割もの急激な値上がりだ。配合飼料価格安定制度による補てんがあるが、生産者の積立金も加味すると値上がり分6割程度をカバーする水準だ。直面している財源問題や制度の仕組み上、原料価格が高止まりした場合の補てん金の減額、発動されないケースも生じる。輸入粗飼料も高騰。乳価に占める飼料費の割合(乳飼比)が6割以上という経営状態になってきている。
需給問題とともに、この自助努力で限界がある酪農経営対策にも焦点をあてるべきである。